弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

兵庫県弁護士会

兵庫県弁護士会 会長 春名 一典氏

地域と業務分野の偏在解消に力を注ぎ会員の量と質の確保をめざす

5つの国からなる合衆国「兵庫県」会員の7割が神戸本部に集中

日本海と瀬戸内海に挟まれた風光明媚(めいび)な兵庫県。近畿地方最大の面積を持ち、人口は約560万人。会員の約7割が神戸本部という兵庫県弁護士会が目下取り組んでいるのは地域と業務分野の偏在対策だ。詳しいお話を春名会長に伺った。 兵庫県は旧国区分では摂津、播磨、但馬、丹波、淡路の5つの国に分かれており、合衆国と言われるように当時の名残が今でも色濃く残っています。摂津は神戸と阪神、播磨は姫路など県南西地域、但馬は県北部、丹波は県中部、そして淡路島と、それぞれに人口、産業、歴史がかなり異なっているため、会として事業を立ち上げるときには5つの地域があるということを念頭に置いて人の配置などを考えなければならない。これは兵庫県ならではの特色でしょう。 会員弁護士は589名。人口に占める割合は約9500人に1名の計算になりますが、神戸、阪神、姫路に集中しており、中部、北部、淡路島は非常に少ないのが現状。なかには人口3万人を超えていながら弁護士が一人もいない地域が9市3町もあります。日本海と瀬戸内海に挟まれた兵庫県は県土が広く、南北の移動は大変です。たとえば神戸から北部の浜坂まではJR特急で約4時間もかかる。市民の司法アクセスの向上には、瀬戸内海側以外のエリアでの会員確保は避けては通れない課題です。過疎地域対策としては、総合法律センターの相談所やひまわり基金公設事務所を設置してきましたが、現状まだまだ足りていません。特に豊岡、浜坂、朝来、柏原など県北部・中部エリアが手薄。その対策を検討している最中です。

全国の弁護士会で初の試みとなる「犯罪被害者・加害者対話センター」

特徴的な取り組みとしては、昨年「犯罪被害者・加害者対話センター」を設置し、「謝罪文銀行」をスタートさせました。これは全国の弁護士会で初となる試みです。加害者は、被害者に謝罪の気持ちを伝えたくて謝罪文を書いても、「そんなもの見たくもない」と封も開けないで送り返される。そういった場合に弁護士会が謝罪文を預かり、被害者が受け取りを希望するときにお渡しするのが、謝罪文銀行です。現在預かっている謝罪文は10通。センターの運営には特別な研修を受けた14名の弁護士があたっています。 もう一つは1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに発足した「災害復興支援活動」です。全国的に大きな災害が起きたときは会員を現地の弁護士会に派遣して、相談体制に関するアドバイスや対応マニュアルなどの資料を届ける活動を行っています。新潟県中越沖地震では5名の弁護士を派遣しました。大震災で学んだノウハウを全国に広げていこうというのが当会の思い。日弁連の災害復興支援についても兵庫県が一番リードしていると自負しています。

プロダクトアウトの発想で弁護士の存在を積極的にアピール

ここ数年の新規登録弁護士は年間30~40名、大阪や東京からの登録換えも含めると年間で50名ほど増えています。今後をみても少なくとも年間30名は増えていくでしょう。法曹人口問題では「需要がないから、弁護士はこれ以上増やせない」などと言われますが、そんなことはないというのが私の持論。『マーケットイン』の発想が根づいていたビジネスの世界では、最近『プロダクトアウト』の考え方が復権し始めました。これは弁護士の世界でも同じです。「相談件数も裁判所の事件数も減ってきているじゃないか、だから弁護士を増やしても無理なんだ」という のはマーケットインの発想です。そうではなく、プロダクトアウトの発想で「我々はこんなサービスも提供できますよ。神戸まで行かなくても地元のここにいますよ」とアピールすればもっと需要が出てくるはずです。 兵庫県には上場企業が約200社あります。本社機能を神戸から大阪、大阪から東京へという流れはあるものの、アンケートを実施したら「企業内弁護士を採用したい、検討している」という企業が5,6社ありました。日弁連とみずほ総研の調査によると、県内中小企業の51%は弁護士を利用した経験がなく、相談しなかった理由のうち「相談しにくい。連絡がとりにくい。つてがない」が63%を占めていました。こうした中小企業は税理士、社労士などに相談しているわけですから、裏を返せば事業再生や事業承継の問題など弁護士の潜在的な需要はまだまだあるということ。いかに我々が県民にとって身近な存在になっていないかがよく分かると思います。 こうした状況をふまえ、現在力を注いでいるのが「地域的偏在と業務分野的偏在の解消」です。地域的な偏在では、裁判所から少し離れた場所で開業している会員に集まってもらい、開業地を考える座談会を司法修習生を交えて開催しました。業務分野的な偏在については、企業内弁護士がまだ3名と少ないため、その実態とニーズを会員につかんでもらうよう企業内弁護士との懇談会を行いました。今後の具体策としては、遺言相続センターと中小企業支援センターの立ち上げを計画中です。地元の商工団体からは「中小企業支援センターを早く作ってほしい」とい う要望を数多くいただいており、その期待に応えるべく目下奮闘中です。 会員数が増えていくにつれ、今後ますます弁護士は多様化すると思いますが、企業内弁護士であろうと過疎地の弁護士であろうと公益的な活動が共通のアイデンティティーになるよう、弁護士会の仕事を皆で分担していくことが必要だと感じています。それが結果、弁護士の質の確保につながる。量と質はクルマの両輪。どちらも欠かせない非常に大切な要素です。 最後に兵庫県で働く魅力を一つ。大都市でもなくそれほど過疎地でもない、開業するには適切な規模だと思います。東京、大阪で渉外事件や大企業の企業法務に携わるのもいいですが、自然豊かな地方で生活し、働く人たちの息づかいを感じながら仕事をするのも大きな意義、魅力があります。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 〒650-0016 兵庫県神戸市中央区橘通1-4-3
  • http://www.hyogoben.or.jp/
  • ●会員数 589 名(2009 年8 月28 日現在)
  • 神戸本部 415名 姫路支部 69名
  • 尼崎支部 61名 伊丹支部 22名
  • 明石支部 15名 豊岡支部 7名
  • ※会員構成は51 期以降が244 名(全体の約41%)、
  • 41期以降では328 名(約56%)となっている