弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

福井弁護士会

福井弁護士会 会長 黛 千恵子氏

市民の声を受けて相談会を実施し、法教育に独自の取り組みを行う弁護士会

弁護士間のつながりが強く、独立開業もしやすい風土

繊維をはじめ機械・眼鏡など特色ある地場産業が発達していることで知られる福井県は、農林業・水産業なども盛んで、就労機会に恵まれた一面がある。共働き率・女性の就業率ともに全国1位(※1)と「世帯で収入を得る」風土があるなか、法サービスにも地域色を反映した特徴があるという。全国唯一の女性会長、黛千恵子弁護士に詳しいお話を伺った。 当会には現在74名の会員が在籍しています。小規模な弁護士会ですが、近年は会員数が増えていて、ここ5年で倍増の勢いです。背景に都市部での就職難があることは否めませんが、昔から「福井の長男は都会に出ても戻ってくる」といわれている土地柄。当会にも修習を終えて帰ってきた出身者が多数おり、それを受けて会員の平均年齢も47歳(※2)と若くなっています。 福井県における弁護士活動の特徴として、勤務弁護士を経験しないで独立開業する「即独」が多いことが指摘できますが、これには地元の弁護士同士のつながりが強いことが影響しています。先輩弁護士が若手の指導を買って出て、案件の紹介も惜しまないので、安心して開業できるようです。こんな弁護士間の協力関係を、あるベテラン弁護士は「福井総合法律事務所」と例えるほど。しかし会員増で、ベテラン・中堅と若手の交流が図りにくくなっているとの指摘もあるため、遅ればせながら本年度、研修委員会を設置。委員会活動を通じて会員の世代を超えた親交を深め、同時に勉強会で若手のスキル向上をサポートしています。委員会活動には小規模弁護士会としては突出した法教育関係の活動もあり、2007年に始まった日弁連主催の「高校生模擬裁判選手権」に賛同し、翌年から弁護士会が県予選大会を開催。これは全国でも福井弁護士会だけが行っている司法をまきこんだ取り組みで、裁判官・検察官も審査員です。また04年から弁護士会と教育委員会の主催で、小・中学生を対象とした「ジュニア・ロースクール福井」も実施。裁判所見学や模擬裁判などの体験学習によって、法的価値観や思考方法を意識させる場を設けました。一方で民事暴力に注力していることも当会の特徴の一つで、日弁連の民事介入暴力対策委員会の委員長を輩出したこともあり、警察・暴追センターと連携しながら精力的な活動を展開しています。

多重債務に悩む市民の声を受け、特化した無料相談会を実施

直近の大きな動きとして09年10月から開始した多重債務の無料相談会があります。多重債務に特化したのは該当案件が多いことはもちろんですが、同時に弁護士の対応に問題があると思われる事例も増えてきたからです。ポスティングやTVCMなどで知った都会の法律事務所に依頼し、過払い金だけを事件にされて「後は法テラスで相談してください」と、突き放されるたぐいの問題事例が複数発生しているとの情報が寄せられたため、地元弁護士会として看過できないと考えました。毎週水・木・土の3回、相談会を実施。福井新聞に弁護士の顔写真入りの広告を打った効果もあって毎回予約がいっぱいです。そのほかの各種相談も本庁、丹南、嶺南の法律相談センターで行っており、高齢者総合相談・子育て相談・女性総合相談など家庭内の問題が多く寄せられています。また、各地域の社会福祉協議会と契約して、県内各地で定期的に無料の法律相談を実施しています。 福井県内で弁護士が扱う案件には一部、原子力発電所関連など特殊な事案もありますが、大半は一般民事事件であり、県内企業は中小が中心のため企業法務も多くはありません。そういう福井における活動も、やはり地域における偏在化は課題。弁護士は本庁のある福井市に集中しており、越前市の武生支部に2名、敦賀市の敦賀支部に6名在籍していますが、簡易裁判所がある大野市は弁護士不在です。近年、弁護士が急増している敦賀支部においても、小浜市はひまわり公設事務所への派遣1名と、地域内にバラツキがあります。これらの偏在化をどう解消して、市民のニーズに応えていくか議論が必要だと考えています。

福井の県民性は勤勉・まじめ。弁護士は仕事がしやすい

県内で中心となる公共交通機関はJR北陸本線で、関西・名古屋いずれの方面に向かう場合も敦賀が起点です。敦賀から先の若狭湾沿岸部にある美浜、高浜、小浜、若狭など嶺南地域は交通が不便で、必然的に活動は自動車中心。地域的にみると越前地域とも呼ばれる嶺北と関西文化圏に属する嶺南では料理の味付けや方言も異なり、県民性にも違いがみられます。全体として穏やかな気質の方が多く、法律相談に来ても訴訟にしないケースが多々見られます。また、当会の弁護士を見てもそうですが、勤勉・まじめな県民性といえると思います。元来そういう資質を持つ出身者が多いことに加えて、先輩弁護士からしっかり教育され、小さな弁護士会で「仕事ぶりが良くわかる」ことが各自の自覚を促すのだと思いますが、書類作成一つ見ても実にしっかりしています。法テラスに契約している弁護士が多いこともそんな気質の表れではないでしょうか。74名の会員の契約状況を見ると、被告人国選62名・被疑者国選59名・国選付添人52名・民事扶助63名となっており、これは誇れる数字ととらえています。私見ではありますが「弁護士が尊敬されている」福井県は仕事がしやすく、特に女性弁護士には多くの活躍の場があります。現在7名の女性弁護士が活躍していますが、大家族のなかで問題に直面している女性、子どもや高齢家族を抱えながら働く女性の悩みはまだまだ多く、気持ちを理解しやすい女性弁護士のニーズは高いと言えます。当会としては、会員が増えている現状や修習期間の短縮を踏まえ、登録換えや福井県に戻ってくる若い弁護士をさらに支援する必要を感じており、小さな弁護士会ならではのつながりや長所を強化していきたいと考えています。 ※1 福井県ホームページ掲載データより ※2 平均年齢47歳は全国で一番若い弁護士会となっている/新規登録会員の状況は、2004年以降53名と急増

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 〒910-0004 福井市宝永4-3-1 三井生命ビル7階
  • http://www.fukuben.or.jp/
  • ●会員数:74名(2010年1月8日現在)
  • 福井本庁………66名
  • 武生支部………2名
  • 敦賀支部………6名