弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

山梨県弁護士会

山梨県弁護士会 会長 信田恵三氏

委員会活動などで培われた結束力をもって、市民に開かれた司法を目指す弁護士会

委員会活動はベテラン弁護士の仕事ぶりを学ぶ格好の機会

水晶をはじめとした宝石やワインの産地として知られる山梨県。富士山、八ヶ岳、南アルプス、秩父山塊に囲まれた自然環境を巧みに生かして果樹生産も盛んに行われている。変化に富んだ自然や、東京圏に近い立地のなかで特徴ある産業が育つ同県では、リーガルサービスにも地域性が反映されているという。信田恵三会長に詳しいお話を伺った。 当会は会員数87名と関東ブロックにある13の弁護士会のなかで最小規模の弁護士会ですが、近年、若手や女性会員が増えて活気にあふれています。2004年に7名の入会者を迎えてから会員数増大はより顕著になり、ここ10年でみると42名増という勢い。現在は40代までの会員がほぼ半数を占めており、女性会員も7名在籍しています。そんな当会の最大の特徴といえば、委員会活動を精力的に行っていることでしょう。そして、それら委員会活動や昼食会などの交流を通じて、弁護士同士の結束が強いことも自慢できる特徴だととらえています。 委員会には「人権擁護委員会」「民事介入暴力の被害者を救済するための委員会」「消費者問題対策のための委員会」をはじめ常置のものが九つあり、そのほかに特別委員会やプロジェクトチームが36置かれて、会の総数は45にのぼっています。会員は一人平均八つの委員会に所属して熱心に活動していますが、新規登録の弁護士は必ず人権擁護・消費者問題・刑事弁護の委員会に配属。これは若手のスキルアップを考慮した取り決めで、ベテラン弁護士の仕事ぶりを見て事件処理のノウハウを実践で学ぶことを意図しています。 精力的に行われている各種委員会活動のなかでも、本年度は特に「高齢者・障害者を支援するための委員会」に注力しており、行政の福祉関連部署と連携してケースワーカーの指導を伴う勉強会を開くなど、さまざまな取り組みを行っています。このように私たち弁護士会だけでは根本的な解決ができない問題については、他機関とも積極的に協力して地域社会への貢献に努めており、民暴対策での県警との連携、児童虐待問題における児童相談所との連携なども緊密に行っています。

月1回の「全員昼食会」は、情報共有と交流の場になっている

常議員会は原則毎月第1週の土曜に開かれていますが、翌週の月曜に行われる「全員昼食会」も当会の大切な会合です。「全員昼食会」では常議員会審議の報告や、日弁連理事会の報告、活動状況等を会員に周知して各種情報共有を行っていますが、毎回50名前後の会員が参加。情報共有と同時に若手・ベテランが交流する場としても有効に機能しています。参加率の高さは会の結束を表していますが、さらに例を挙げれば昨年の関東10県会(東京3弁護士会を除く関東ブロックの弁護士会)の夏期研修でも、団結力が存分に発揮されました。山梨県が幹事役を務めると決まってからは、1年半以上をかけて周到に準備。弁護士倫理というテーマに基づいたガイドブックの執筆担当、編集制作担当、進行運営など班ごとに役割を分担し、ほぼ全員が何らかの役に就きました。長期にわたる活動を会員が熱心に遂行。他県の弁護士会からも高く評価される研修会を実施することができたのです。 このように会の結束が強いこと、交流が盛んであることは日常の弁護士活動にも生かされており、弁護士同士の人となりを理解していることで、例えば和解や話し合いの際に依頼人の権利や主張を忌憚(きたん)なく話せるという効果につながっています。

法教育に熱心に取り組み35の学校で出前授業を実施

法教育に熱心に取り組んでいることも当会の特徴です。2001年から県下の小・中・高の学校に弁護士を派遣して、出前授業をスタート。授業は法的思考を意識づけることを目的としていますが、一方的な説明に終始することなく、児童・学生・生徒が主体的に考える参加型の内容にしており、グループディスカッションや模擬裁判なども盛り込んで実施しています。スタート当初の参加は10校前後でしたが、好評のうちに毎年、希望する学校が増え続け、本年度は35の学校から要請を受けるまでに拡大。また毎年夏には子どもロースクールも開催しており、そのほか山梨学院大学に設置された法科大学院にも会を挙げて協力しています。法科大学院には実務家教員の派遣として専任1名・客員1名を送り出し、非常勤教員としても9名が名を連ねています。

会員が増えても団結力を保ち、市民に開かれた司法を目指す

そんな山梨県で弁護士が扱う案件のほとんどは民事です。中小企業からの相談、個人民事、家事などを含めた民事事件が9割を超えており、刑事事件は1割弱にとどまっています。弁護士の活動は自動車移動が中心ですが、本庁のある甲府からは県内全域に1時間程度で移動可能。都留支部が所管する東部富士五湖地域は郡内とも呼ばれるかなり広いエリアですが、文化圏として東京・八王子に近く、地理的には静岡県とも隣接しているため、東京や静岡の弁護士事務所の活動領域にもなっています。そのため本県の弁護士の大半が本庁管内に居て、都留に2名という分布状況に偏りが見られても、実際には法サービスが行き届かない過疎地域はないととらえています。 「市民が利用しやすい司法」「市民に開かれた司法」を標ぼうしている当会では、市民のニーズに応えるために甲府の弁護士会館で月曜日から金曜日まで毎日、東部富士五湖地域では毎週水曜日に法律相談を行っており、ここで高齢者・障害者支援問題や子どもの権利の問題、クレ・サラ問題、交通事故相談など幅広い案件に対応しています。また裁判員裁判の施行を受け、2年後に行われる制度見直しも見据えながら、より良い裁判のための意見交換会も行っており、今後も市民のための司法の在り方を考えていくつもりです。会としては富士吉田方面の法サービス拡大などが検討事項になりますが、当会の最大の長所である団結力を生かしながら、「市民に開かれた法サービス」を実践して、一層の地域貢献を果たしていきたいと考えています。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 〒400-0032 山梨県甲府市中央1-8-7
  • http://www.yama-ben.jp/
  • ●会員数:87名(2010年5月末現在)
  • 甲府本庁………85名
  • 都留支部………2名