弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

釧路弁護士会

釧路弁護士会 会長 永井哲男氏

貧困やクレサラ問題に注力し、全員参加の結束を自慢とする弁護士会

委員会活動をはじめとして会の交流は全員参加がモットー

北海道の道東地区は、世界自然遺産の知床と阿寒、釧路湿原の三国立公園を擁している。大地からはジャガイモ・トウモロコシなどが収穫され、オホーツク海や北洋からはサンマ・サケ・スケトウダラ・カニが水揚げされる。自然に恵まれた広大なこの地が、釧路弁護士会の活動の場。総面積3万3000平方キロメートル以上、九州とほぼ同じ大きさにあたる広大なエリアを58人の弁護士がカバーしていることになる。もちろん弁護士一人あたりの活動面積は全国1位。その釧路弁護士会の活動内容と特徴を永井哲男会長に取材した。 釧路弁護士会は釧路本庁、帯広・北見・網走・根室の4支部で構成されています。各地区の人員バランスでは、釧路・帯広・北見が充実した3極構造と言っていいでしょう。本庁と各支部の距離はかなり遠いのですが、伝統的に結束の強い会で、委員会や各種活動などの参加率がきわめて高いことが特徴です。たとえば北海道の四弁護士会(札幌・旭川・函館・釧路)が持ち回りで行っている弁連大会では、自管区での開催に限らず遠方の開催でも、当会から70%を超える弁護士が出席。ほかの会より常に出席率が高く、一つの自慢になっています。また北海道の四弁護士会は、野球大会「道弁連杯」を開催していますが、この大会では当会が連覇中。強さはもちろんチームワークの良さが評判で、「全員参加・全員野球の釧路弁護士会」と呼ばれています。 そんな弁護士会では近年、若手会員が急増しました。この2年で60期・61期の9人が入会し、20代・30代が会員の半数を占めるようになっています。会員増の理由には、司法修習の受け入れを始めたことで釧路に定着する人が増えたこと、会として熱心に勤務先を仲介したことなどがあげられますが、「すずらん基金」の支援も大きいと感じています。「すずらん基金」は北海道四弁護士会が取り組む過疎解消策です。毎年2名ないしは3名の弁護士を札幌の法律事務所で研修させ、1年の研修後、道内各地のひまわり公設に派遣する制度。予算捻出(ねんしゅつ)は道内の弁護士全員が協力し、一人あたり月二千円を出資。それが基金の原資になっています。この制度で釧路に来た弁護士の定着率も実に高くなっているのです。ちなみに管内には根室・網走・北見3カ所のひまわり公設事務所があります。法テラスは弁護士2名が本庁に常駐し、市民の相談に対応しています。

全国で初めて「貧困問題」を取り上げた弁護士会

当会は「貧困問題」に熱心に取り組んでいることで、よく知られています。2006年の第49回人権擁護大会・シンポジウム(日弁連主催)で初めて「生活保護と貧困問題」を取り上げたことが、2年後の富山大会「非正規労働の改善」、今年度「子どもの貧困」というテーマに発展していきました。釧路での第49回大会が日弁連全体で「貧困」に取り組む端緒となっているのです。その取り組みは、もちろん現在でも会内部に脈脈と受け継がれており、委員会活動も精力的に行われています。そのほかの委員会活動では、クレサラ・多重債務の活動も熱心です。この分野で全国的に有名な弁護士がけん引する形で、会全体が活発な活動を行っています。そのため弁護士が扱う案件として最も多いのもクレサラ・多重債務です。また北海道の高い離婚率を受けて、民事では離婚調停など家裁事案が多いことも、釧路の特徴だと思います。もちろん刑事事件も相当数を扱っていますが、裁判員裁判が4件と少なく、検察庁が驚いているほど。大企業や決裁権を持つ機関が少ないので、企業法務は多くありません。 また、当会管内は、弁護士への信頼がとても厚い地域でもあります。 例えば、事件の当事者でさえ、相手方代理人という立場より、弁護士であることを重視し、その弁護士が履行を約束したからとして、履行前に財産保全の仮処分を解いてしまう例もあるほど、絶大な信頼があります。 単に、自分の依頼者の利益になれば良いというだけの事件処理は限界があるように思います。 かような市民の信頼に応えるために、弁護士はしっかりした自覚を持ち、どんな事件処理をするか、周囲は注目していることを意識して対処しなければならないと思います。 日常の弁護士活動は自動車が中心です。釧路から帯広までの道のり120キロは鉄道で2時間弱かかり、釧路・北見間140キロはバス路線だと3時間かかるので、渋滞のない自動車移動がはるかに早くなっています。意外に思うかもしれませんが、東京へのアクセスはとても便利です。釧路・帯広・女満別・中標津の4空港からの直行便があり、管内どこからでも東京に出やすくなっています。

1日がかりの少年面接などに、対応可能な体制の整備を推進

私は日弁連「小規模弁護士会協議会」の議長として、同じような条件にある会の代表と話し合って、常日ごろから小規模弁護士会のあり方を考えています。そんななかでも「広大な活動領域」を持つ当会の特殊性は際立っていて、ほかの会にはない課題を強く意識するのです。たとえば「少年への対応」などがそうです。管内に少年鑑別所は1施設。少年との面接は1日仕事で、当然ながら弁護士の負担はほかの会より大きくなります。しかし付添人・観護措置の全件実施は当会の念願であり、それに向けて当番活動の見直しと充実を図る必要があります。裁判員裁判をはじめとする「あらゆる裁判を各支部で実施してほしい」という住民の希望を受け、実施に向けた活動と支部の充実も進めなくてはなりません。現在は、その具体的なアクションとして帯広支部の会館建設を検討中です。さらに今年度から導入された道弁連の高齢者・障害者ホットラインに対応する体制をつくることも課題。やるべきことは多数ありますが、これらの課題を「全員野球の結束力」で解決していきたいと考えています。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 〒085-0824 北海道釧路市柏木町4-3
  • http://www.946jp.com/ben54/
  • ●会員数:58名 (2010年9月現在)
  • 釧路本庁………23名
  • 帯広支部………21名
  • 北見支部………10名
  • 網走支部………2名
  • 根室支部………2名