弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

仙台弁護士会

仙台弁護士会 会長 荒 中氏

刑事事件の神髄は人権擁護にあり。司法改革にあたり、再認識すべき

戦後史に残る最大級の冤罪事件を振り返る

東北弁護士会連合会が擁する約600人の弁護士の半数近くが所属する仙台弁護士会。東北6県を代表しての取り組みだけでなく、日弁連でも特に人権に関する発言力で存在感を発揮している。その仙台弁護士会の会長を務める荒中氏に、理念や今後の活動指針についてうかがった。
どこの弁護士会も同様かと思いますが、本年度は、被疑者国選弁護制度の対象拡大と裁判員裁判制度への対応に力を注いでいきます。
前者においては、対象となる犯罪が拡大され事件数が約10倍になると見込まれ、宮城県内では年間1200件ほどの事案に対応することになります。当会には約300人の弁護士が所属していますが、そのうち200人程度で対応できるよう準備していきたいと思っています。
後者は、年間60件ほどが発生すると予測しています。量だけではなく、被告人の無罪を争うに足る経験や資質を有するベテランの弁護士をどれだけ用意できるかが問われます。これら2つが、執行部の当面の最大の課題となるでしょう。
その取り組みとして、当会としてはまず、この4月に「松川事件」を担当した弁護士を招き、市民や若手弁護士に向けての座談会を開催しました。今年度中には「松山事件」も取り上げる予定です。皆さんはご存じと思いますが、両事件はいずれも当会所属の弁護士がかかわって無罪を勝ち取ることができた、戦後史に残る最大級の冤罪事件です。
この座談会を企画した意図は、悲願であった被疑者国選弁護制度の本格的実施と裁判員裁判制度の開始に先立ち、刑事事件の神髄は人権擁護にあることを再認識する機会を持つべき、との考えにあります。
裁判員裁判制度の導入に先立ちいささか懸念していることは、一般の裁判員にわかりやすく事実をアピールするため、パワーポイントなどを駆使してプレゼンテーションを行わなければならないといった技術論が先行し過ぎているのではないかということ。もちろん、真実に近づくためにも裁判をわかりやすく行うことは大切です。しかし、模擬裁判を繰り返してみて思うのは、大切なのは技術論ではなく、「誤判」による人権侵害を防がなければならないという刑事弁護の原点。民事裁判においては司法書士や土地家屋調査士など、異業種との共同作業が進んでいますが、刑事裁判においては我々弁護士しか被疑者や被告人を弁護できないという自覚が肝心なのです。
先述のとおり、昔から当会の弁護士は最大の人権侵害である誤判と闘ってきた伝統があります。今こそ、この刑事裁判の神髄とは何かを若い世代に引き継いでいくことが、きわめて重要であると考えています。
また、裁判員裁判制度に関しては、この2月に開かれた当会の総会においても、新潟や栃木同様、反対決議案が出され、多数の会員が賛同しました。議論の末否決されましたが、執行部も反対意見は十分傾聴に値すると思っています。その反対意見とは、主に「裁判官だけの裁判との選択制を認めないのは憲法違反ではないか」「量刑にまで裁判員という市民を巻き込むのは不適切ではないか」「経験と情報量の相違により、評議が適切に行われないのではないか」といったこと。制度の導入に当たっては、3年後に見直しを行うという付帯条項があるので、問題点として指摘されていることについては批判的なまなざしを注ぎ続け、検証する必要があると思っています。

東北エリアの弁護士人口の過疎偏在解消を

さて、東北地方の弁護士会が抱える大きな課題の一つに、過疎偏在の問題があります。弁護士人口が増えても、東北地方に赴任しようという人は少ないのが実情。特に支部管内で活動する弁護士は不十分です。
そこで、東北弁連では、独自に2000万円を拠出して基金を作りましたが、この基金による支援を受けて仙台市内に「やまびこ基金法律事務所」が開設され、支部管内で独立開業する若い弁護士の養成が始まりました。現在、1名の弁護士を採用し、ベテランの所長のもとでOJTを行っており、今年度中に手薄の支部で独立することになっています。また、今年度中にさらに3名の採用を予定し、うまく回転させることで東北エリアの過疎偏在を解消していきたいと考えています。
なお、「やまびこ基金法律事務所」開設に当たっては、新人だけでなく、当会を含む全国の若手に対しても応募を呼びかけたところ、志ある人が応募してくれ、定員を埋めることができました。公益的な活動をしたいという若手の存在に勇気づけられる思いがしています。
その一方で、仙台本庁には毎年二十数名の新人が赴任しています。現在まで、ほぼ全員が事務所に入って先輩の指導を受けることができていますが、弁護士人口の増加に伴い、受け入れ態勢が飽和状態になる恐れがあります。量も大事ですが質も重要。そこで、東北弁連では、7月の定期大会で法曹人口増員の閣議決定を見直す決議案をまとめる予定です。一定の増加そのものには反対ではありませんが、ここでいったん立ち止まり、法曹に対する需要や法曹の質の確保などについて検証する機会を持つべきではないかと提言するつもりです。
最後に、若手の弁護士やこれから弁護士を目指す人にひと言。ぜひ、自分があこがれを持てる理想の法曹を見つけて手本にしてください。そして、特定の分野だけに携わろうとするのではなく、さほど多くの報酬が得られなくとも、民事扶助や刑事弁護、消費者被害といったさまざまな分野にも首を突っ込んでほしい。そうして幅の広さを身につけてから専門分野を絞ったほうが、より対応力が向上し、多くの仕事が獲得できると思います。赴任地も、地方の支部は総合力が身につきやすいというメリットもある。広い視野を持って進んでいってください。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 仙台市青葉区一番町2-9-18
  • http://www.senben.org/
  • ● 相談センター
  • 登米法律相談センター:登米市登米町寺池桜小路89
  • 県南法律相談センター:柴田郡大河原町字町91
  • 古川法律相談センター:大崎市古川駅南3-15
  • 三陸海岸法律相談センター:気仙沼市古町3-2-37
  • 石巻法律相談センター:石巻市穀町12-18 駅前ビル4階
  • ● 会員数
  • 弁護士285人 法人会員6法人(2008年5月31日現在)