弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

群馬弁護士会

群馬弁護士会 会長 鈴木 克昌氏

模擬裁判で市民の評議に確かな手応え。裁判員制度へ大きな期待

最重要テーマは、裁判員裁判と被疑者国選弁護の拡大への対応

日本列島のほぼ中央に位置する群馬県は人口約201万人。会員弁護士は186人で人口約1万750人に対し1名の割合だ。都市構造は分散型だが、本庁への業務の集約化が進んでいる点と立地的な簡便さから、県中央部の前橋地区と隣接する高崎地区在住の弁護士がほとんどを占める。そんな群馬弁護士会の現状と今年度の活動方針を鈴木会長に伺った。 群馬弁護士会は三つの地区に分かれていて、前橋地区本庁管轄に94名、高崎地区に69名、東毛地区に 23名の会員弁護士が在籍しています。弁護士数に偏りがあるのは、歴史的に前橋、高崎が政治、行政の中心で、弁護士も集中していたから。前橋市は 県の中央にあり、高速道路が整備されてきたため、市民にとってもアクセスはよくなってきています。また、市町村が窓口の無料法律相談を実施しているため、ちょっとした法律相談はカバーが可能。実際、過疎の地域でもたくさんの相談があります。ただし、県の東部に位置する東毛地区はこれまでも被告人国選弁護事件が年に30〜40件あり、非常に業務がハード。地元会員だけでは5月21日から始まる裁判員制度と被疑者国選弁護の拡大に向けた対応が困難なため、前橋・高崎地区の会員が応援に行く体制を整えています。 今年度の取り組みにおいては、三つの大きなポイントがあります。最も重要なのは、裁判員制度と被疑者国選弁護の拡大への対応です。弁護士の確保をどうするのか、弁護士会で議論を重ねた結果、基本的に被疑者国選弁護を引き受けていいという弁護士には、すべて裁判員裁判にも対応していただくよう弁護士会として決め、その名簿を作成しました。現在143名が登録しています。この背景には、被疑者国選弁護人が選任される段階では、事件が裁判員裁判になるか必ずしも明確ではない、という現実的な意味合いがあります。 例えば、銃刀法違反は裁判員裁判 の対象ではないので、その事件は受けるけれど殺人が追加で来た場合はやりません、というのでは困りますし、逆に、殺人未遂で勾留されている事件について捜査段階で懸命に弁護して傷害事件に落ちたとする。そうなると、裁判員裁判の対象から外れます。つまり、逮捕勾留された段階では、裁判員裁判の対象になる罪名がついている事件は、実際の裁判員裁判になる事件よりずっと多いはず。裁判員裁判をやってもいいという弁護士だけで受けたのでは、とても回しきれないというのが、現実の状況としてあるわけです。ですから、「裁判員裁判であるかそうでないかを区別せずにやってください」ということを会員に議論してもらい、このような結果となりました。ただし、裁判員裁判は従来の弁護とは多分に異なりますので、裁判員裁判に対応できるノウハウや知識をもった弁護士の名簿も別途作成。これは143名のうち、47名となっています。そこから複数選任を行い、いざ裁判員 裁判になった場合はサポート名簿から選ばれた弁護士が補助として入り、複数で臨む態勢としました。その関連で、裁判所には「裁判員裁判対象 事件は認めている事件も必ず複数にしてほしい。否認事件については3名で対応させてほしい」ということを申し入れています。

証拠に基づいた厳格な判断を市民に強く訴えかけたい

また、裁判員裁判には一般市民に向けた啓蒙PRという大事な要素もあります。裁判所や検察庁でもさまざまな広報が行われていますが、それだけでは不十分。弁護士会としては、「刑事裁判の原則」を市民の方に深く理解してほしい。特にアピールしたいのは、証拠に基づいた厳格な判断。無罪の推定、つまりは「疑わしきは被告人の利益に」ということ。それを一番に訴えかけていきたいと考えています。そのために、秋ごろに前橋地区で一度、大きな集会を開催したいと計画しています。 裁判員裁判はこれまで模擬裁判を7回実施してきましたが、裁判員になってくださった方たちの評議を聞いていると、かなりご自分の考えに従って判断されています。裁判官が誘導しても簡単にのらない。「本当はどうだったんだろう」と一生懸命、真実探求に努力してくれる。そうした姿を目の当たりにして、「いい裁判になるのでは」と大きな手応えを感じています。時間が十分に確保されないのではないか、取り調べ段階の録画録音が全面的に実行されるかなど、裁判員裁判にはさまざまな問題点が指摘されています。そうした指摘はその通りですが、だからやらないという議論にはならないはず。弁護人が頑張ればわかってもらえるという強い思いを抱いています。 二つめは、急激な経済状況の悪化の中、国民生活を守るための権利救済です。派遣打ち切り、多重債務、経営破たんなど、社会の中で起こっている問題をくみ上げ、困っている人たちの声を集約し、弁護士会として積極的な対応を図っていきます。その一つの手段として、3月初旬に派遣切り・雇い止めホットライン(無料相談) を設置しました。このほかにも、無料電話ガイダンスを昨年10月から実施。平日午後1時から午後4時までの受け付けで、相談は一人10分間。弁護士1名体制で100名で回しています。宣伝をしていないにもかかわらず、1日に20本は電話がかかってくる状態で、利用者からはとても好評です。今後は、この無料電話ガイダンスの拡大と、高齢者の権利救済や障害者の問題など、個々の具体的な問題への取り組みが課題です。 最後にあげるのが、法曹人口の拡大に伴う法曹の養成・就職問題への対応です。群馬弁護士会としては、司法試験の合格者をこれ以上増やさない、その後は単年度の合格者を1500名程度におさえるという決議を昨年12月26日に出しました。

自治体や県内企業との顧問契約など法曹ニーズを積極的に開拓

地方会にとっては共通だと思いますが、会員数はここ5年で増えてきました。今年は18名の新会員を迎えています。10年前までは年に1・2名の登録でしたので、ベテランと若手が多い一方、それをつなぐ核となる中堅の人材が少ない、ひょうたん型のような構成になっています。ですから、期でいえば50期以降の若手に頑張ってほしい。いろいろな場に出て意見を出し、弁護士会の中心的存在として活躍してほしいと願っています。また、今後は地域の中で起こっている問題をきちんと解決していく人材育成も必要です。そのためにも、各自治体が顧問弁護士の契約 を行い、日ごろから弁護士のアドバイスを受けるような体制づくりが必要ですし、県内企業にも積極的に弁護士を活用してもらいたい。その実現に向け、弁護士会としても法曹ニーズの開拓を進めたいと思います。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 群馬県前橋市大手町3-6-6
  • http://www.gunben.or.jp/
  • ●会員数
  • 186名(2009年1月1日現在)
  • 前橋地区本庁管轄(前橋市・沼田市・伊勢崎市)…94名
  • 高崎地区(高崎市・藤岡市)…69名
  • 東毛地区(桐生市・太田市・館林市)…23名
  • 7月から始まる裁判員裁判は前橋本庁でのみ行われる予定。