Vol.13
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PIONEERS

急成長するグローバルIT企業と共に、自らの成長を図る企業内弁護士。法務業務の特徴は、国を超えた連携

宮崎 裕子

デル株式会社
法務本部 ディレクター リーガル・カウンセル
弁護士(日本/アメリカ・ニューヨーク州)

#15

新時代のWork Front 開拓者たち

アメリカで萌芽(ほうが)したインハウスロイヤーへの志

1984年、米テキサス州で設立され、PC販売をはじめとしたダイレクトモデル※1を軸に急成長するデル株式会社。その日本法人で法務チームを率いる、宮崎裕子氏の仕事ぶりを取材した。

「インハウスロイヤーを志したのは、シアトルの法律事務所時代に米国に進出する日本企業をサポートしたことがきっかけになっています。そこでは事業を軌道に乗せるため、法務面で必要なアクションをリストアップし、プライオリティに従ったスケジュールのもと各分野の専門弁護士に仕事を振りました。ゼロからのスタートに主体的に関与する充実感があり、同時に弁護士を使ってビジネスを進めていく役割がおもしろいと思いました。それまでで、外部の弁護士として、おおよその範囲を経験したので、次のステップとしてインハウスを志向。デルを選んだ理由は、10年の企業法務経験が生かせること、そして、企業カルチャーが自分にマッチしていたことです。面接で幹部から『会社の成長と共にあなたも成長していける』と言われたことも決め手の一つでした」

デルの法務業務には、どんな特徴があるのだろうか。

「デルは社内体制を国単位ではなく、ワールドワイドでLarge Enterprise(従業員500人以上の大規模企業向け)、Small Medium Business(従業員500人以下の企業向け)、Public(公共機関向け)、Consumer(個人向け)の四つのセグメントに分けています。私たち日本法人の法務は、アジア・パシフィック・ジャパンリーガル(デルではAPJと称す)の一員として、この四つのセグメントの日本地域とそのサポートをする部署を担当。業務を行う上で日本法人という枠にとらわれず、グローバルのレベルで連携をしていることが一つの特徴といえるかもしれません。たとえばマレーシアのサービスを専門とする弁護士と、法的リスクを勘案しながら約款の準備を行い、サービスが顧客の情報を扱う場合は、プライバシー担当のシドニーにいる同僚と議論します。仕事をすすめる上では、マイケル・デル※2が『顧客の問題のごく一部に対応するだけでは不十分で全体像を見極めなければならない』と語るように、法務も顧客(ビジネス側)の個別の問題に対応するのではなく、背後にある組織全体の問題・リスクに目を向けています。また、デルのビジネスモデルと同様、常に最適・最善のリーガルサービスを最短で提供するため、絶えず業務改善を図っています。外部法律事務所とデルヘルプというネットワークを構築したことがその一例。質問メールに7・8名の弁護士が得意分野で対応し、速やかに回答が返ってくるシステムができました。行政庁への照会、詳細な法令や判例の調査が必要な場面などで活用しています」

インハウスの魅力の一つは、ナビゲーターとしての役割

氏はインハウスロイヤーのやりがいを、どこに感じているのだろうか。

「企業における法務業務は、いわば、経営陣が運転する車に同乗するようなもの。会社という車にルール違反を起こさせないため、最悪のケースではブレーキを踏ませなければなりませんが、急ブレーキを踏むと競合会社に追い抜かれ、同乗メンバーがけがをします。日ごろから法務がルールを把握し、運転手にリアルタイムで理解させておくことが重要です。そのためにOne on Oneミーティングと呼ぶ各セグメントトップとの個別ミーティングや、スタッフ会議で車がどこに向かうかビジネスの状況を把握し、初期の段階から方向性を示します。デルには社員のチャレンジを奨励する環境があり、その環境が成長の礎です。社員を委縮(いしゅく)させることなくリスクの大小を正確に説明して、賢明なチャレンジを後押しすることが役割だとも意識しています。このように法的アドバイスにとどまらず、トップからメンバーまでに影響力を持ち、組織を動かせる点にやりがいを感じます」

法務チームが目指す、これからの方向性について伺った。

「さらなる効率化の必要性を感じると同時に、インバウンドで問題に対処するだけでなく『社員のリーガルマインドを育て自ら問題解決・リスクヘッジを図る組織』をつくることが法務本来のミッションと思うので、そのための施策を進めています。一例は過去事案を資料にまとめナレッジの蓄積をすること。これにより各担当レベルで解決できることが増えました。広告も以前は法務の承認がないと出せない少し硬直的なフローでしたが、イントラ整備とトレーニングの結果、広告部門でまず判断できるようになっています。各部門にオーナーシップを持たせ、アウトソーシングできることは積極的に外に出して、法務は業務プロセスの見直しやハイリスク分野への取り組みなど一歩進んだ業務に注力したいと考えています」

宮崎氏自身の5年・10年後の展望はいかがだろうか。

「面接で言われた『会社と共に成長できる』ことを日々実感しています。法律事務所では大勢の前で話す機会はありませんでしたが、デルに入り100人の営業社員を前に朝礼で話すことにも慣れました。5年後、10年後も会社が成長を続けて、自分にも成長の機会がある限り、デルと共にステップアップしたいと思っています。一方で、常に時代の先を読んで、どこにいても活躍できるリーガルを目指します」

※1/PC などの製品を消費者に直販するスタイルと同時に、顧客志向を理念とするデルのビジネスモデルを指す
※2/マイケル・デル 1984 年、米国テキサス州に後のデル・コンピュータ・コーポレーションを設立した創業者