スペシャルレポート:2012年7月号 Vol.28

スペシャルレポート

アトーニーズマガジン スペシャルレポート

さまざまな業種・業界の企業法務部員・弁護士が集う団体や協会などをご紹介。定例会や研修会などを通じて、ネットワークや情報交換の場を提供する組織を取材しました。

日本組織内弁護士協会

日本組織内弁護士協会 理事長 室伏康志

組織内弁護士500人強が参加!新時代の弁護士のワークスタイルをさらに発展させる志を有した協会

会員数の急増で強い発言力を確保。より組織的・戦略的な運営へとシフト

一般企業や行政組織などで働く組織内弁護士を正会員、その経験者を準会員とし、組織内弁護士についての調査研究や情報共有、普及促進のための諸活動を行う日本組織内弁護士協会(JILA)。第1回目の新司法試験が行われた2007年以降から弁護士人口が急拡大するとともに組織内弁護士も急増し、08年に100名程度だったJILAの会員数も12年5月現在、500人強と一気に増加している。そんな一大組織に育ったJILAの活動内容や組織内弁護士の役割と意義などについて、理事長の室伏康志氏(37期)にお話をうかがった。
「JILAは、2001年に『インハウスローヤーズネットワーク』として設立されました。当時、日本の組織内弁護士は外資系の大企業や金融機関にごく少数がいるだけで、弁護士界においては非常に特殊な領域と見られていたのです。そんな頃に日本放送協会の組織内弁護士となった梅田康宏さん(53期)が、同期の組織内弁護士3人で集まり、勉強会を始めたのがそのスタートです」
その後、規模を拡大させながら、勉強会をセミナーに発展させ、企業に対して組織内弁護士の重要性および職域の拡大を認識してもらう啓蒙活動にも力を入れるようになった。
毎月開催される定例会「インハウスローヤーセミナー」には、テーマにより変動するが、多い時で100人ほど、平均すると30~40人が参加する。セミナー終了後には懇親会が行われ、業界をまたいだ組織内弁護士たちが自由に交流、情報交換できる機会も用意されている。
室伏氏が三代目の理事長に就任したのは、12年4月。氏は就任後すぐに、それまでなかった綱領を定めるとともに、委員会を整備するなど、組織の強化に着手した。
「500人を超える一大組織となって、法曹界に一定の存在感や発言力を持つようになりました。その自覚を会員全員に持ってもらうため、また、組織内弁護士の職域を今以上に拡大していくため、より組織的、戦略的に運営していく必要性を感じていたのです」
そして今、組織内弁護士の意義や、理論上・実務上の諸問題を研究し、組織内弁護士の発展のための提言を行う「政策委員会」、定例会、セミナーなどの企画運営を行う「研修委員会」、マスコミへの情報発信などを担う「広報委員会」の3つが設けられ、委員となった各会員がそれぞれの目的に沿った活動を開始している。

今後も確実に、組織内弁護士が活躍できる場所は増えていく

組織内弁護士が普及するとどんなメリットがあるのか。室伏氏は次のように言う。
「組織内弁護士の積極的な関与により、コーポレートガバナンスが整備されることで、端的にはすべてのステークホルダーがその企業の評価を高め、企業価値の向上をもたらします。また、信頼性の担保により、成長する企業が増えることで、日本経済全体に発展をもたらし、ひいては国民全体に恩恵が及ぶことになるでしょう」
昨今、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの未整備から不祥事を起こす日本企業が多発し、海外の投資家の日本企業を見る目が厳しくなった。組織内弁護士が力を発揮できる仕事は格段に増えている。しかし、経営サイドに直言できる管理職クラスの組織内弁護士がまだ少ないのも事実だ。
「その意味においても、日本にもアメリカ同様ジェネラル・カウンセルを導入すべきだと考えています。ジェネラル・カウンセルとは、社長に直言できるナンバーツー的存在の組織内弁護士。その下に法務部を置いて運営させることで、はじめて全社内的なリーガルマネジメントが可能になると思っています。私はクレディ・スイスの東京でジェネラル・カウンセルを務めており、その効用を実感しています。企業へのジェネラル・カウンセルの導入・促進のアプローチも、今後のJILAの検討課題の一つです」
では、企業内弁護士にはどのようなやりがいがあり、ロー・ファームに所属する弁護士とどんな違いがあるのだろうか。
「組織内弁護士は、所属する組織の業務と非常に近いところで、当該業務プロセスの最初から最後まで一貫して深くかかわることができます。社外の弁護士が、ある程度交通整理された状態で一部分を任されるのと大きな違いがありますね」
ロー・ファームの弁護士は、顧問であるないにかかわらず、顧客から依頼を受けて初めて仕事がスタートする。しかし、組織内弁護士は、そうはいかない。
「社内のどこかに問題が潜んでいないか能動的にウォッチする必要がありますし、自らプロジェクトに参加してリーガル面からビジネスをリードする役割も期待されます。そうした面で、高いコミュニケーション力や自社ビジネスへの深い興味関心が求められると思います」
室伏氏は、個人事業主として働く多くのロー・ファームの弁護士と比べ、一般事業会社で働く組織内弁護士は、おしなべて就労環境が整っていると言う。
「社内の制度がしっかりしていて同僚のサポートがある職場も多いので、性別を問わず、子育てや介護などへの対応を含めワークライフバランスを図ることを大切に思う人たちにとっては、とても向いている職場だといえるでしょう。ちなみに、上場企業が一人ずつ組織内弁護士を導入するだけで、約3500人の弁護士が必要になります。まずはそれくらいの普及を目指したい。そのために、経団連などにも働きかけていきたいと考えています。一人でも多くの優秀な弁護士が、この働き方に挑戦してくれることを期待しています」と室伏氏は結んだ。

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