スペシャルレポート:2014年11月号 Vol.42

スペシャルレポート

アトーニーズマガジン スペシャルレポート

さまざまな業種・業界の企業法務部員・弁護士が集う団体や協会などをご紹介。定例会や研修会などを通じて、ネットワークや情報交換の場を提供する組織を取材しました。

東京PL弁護団

東京PL弁護団
ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所 中村雅人(弁護士)

欠陥製品による消費者被害事件の解決と撲滅を目指す弁護団

欠陥製品による事故・事件を専門に扱う東京PL弁護団。弁護士になって40年間、PL事件を軸として活動してきた同弁護団代表の中村雅人弁護士に、結成に至った経緯、活動状況、若手弁護士へのメッセージなどを語っていただいた。

企業の責任を追及し、被害者の救済に尽力

――まずは現在の活動を。 欠陥製品事故によって生命・健康・財産を奪われた方々を救済するため、そして、より安全な社会を実現するため、欠陥製品事故の原因を究明し、企業に向けて事故が起きない安全な製品製造の改善を促す活動に取り組んでいます。当弁護団の特徴は技術の専門家と強い連携を取っていること。製品の欠陥を証明するためには、当該製品に関する専門知識が必要ですから。そのため定期的に弁護団会議を開催し、技術士や電気管理士などを招いて、所属弁護士にレクチャーしてもらっています。 ――なぜPL事件を専門に手がけるように? きっかけは1975年、私が弁護士になって初めてかかわった、薬害事件「スモン訴訟」です。整腸剤キノホルムを服用した大勢の人が異常知覚による歩行障害や内臓障害、視力障害など重篤な症状を発症した薬害事件で、全国各地で裁判が起こり、私も東京の弁護団の一人として参加しました。弁護士になりたての私に、ある先輩弁護士が「PL事件の多くは被害に始まり、被害に終わる」と語ってくれたことを今も鮮明に覚えています。 私はとにかく被害者に会いに行き、苦しみの実情や治療経過を徹底的に聞いて回りました。被害者の苦しみは想像を絶するもので、社会からも家族からも疎外され、中には家庭崩壊に至ったケースも。そもそも本事件の被害者の方々は、薬を自ら選んだのではなく、病院の医師に処方されて服用したわけです。私の母親と同年代の方も多く、とても他人事とは思えませんでした。こんな悲劇が世の中にあっては絶対にいけない、理不尽な仕打ちに苦しんでいる人たちを救いたい――そう強く思ったことがPL事件に興味を持ったきっかけであり、私の弁護士活動の軸となりました。 その後、日本の経済成長に合わせるように国内企業が関与するPL事件が増え、弱い立場の消費者が泣き寝入りをせざるを得ないケースも増加。その状況をなんとかして変えねばと、91 年、有志で欠陥製品事故事件の実践部隊である東京PL弁護団を結成したという流れです。 現在、東京PL弁護団の所属弁護士は21名で、常時十数件の事件を担当しており、1事件につき2、3名の弁護士がチームを組んで臨んでいます。結成から23年間で、当弁護団が担当した主な事件は、百数十件に上ります。その具体的な事件取り扱いの経験が、製造物責任法の制定、消費者庁・消費者委員会の創設、消費者のための事故調査機関の設置など、我が国のPL事故被害の救済をめぐる法制度、消費者行政の進展に寄与してきたと自負しています。

訴訟を起こすことに意義がある

――これまで担当した中で印象的な事件は? エレベーター事故、リコール未回収製品による事故などたくさんありますが、社会的に大きな関心を集めた「パロマ湯沸器死亡事故」でしょうか。 パロマ製のガス湯沸器の欠陥により、20年間で、一酸化炭素中毒事故が28件も発生(死亡21人・重軽症19人)。近々の事故は2005年に起こっています。東京港区の家庭で1人が死亡、1人が重症を負った事故で、刑事と民事の両方で争い、どちらとも勝訴しています。 刑事事件になったことで、被告人の供述調書や事故現場の写真、製品の調査結果などたくさんの証拠が揃いました。我々は、犯罪被害者参加制度によりパロマの業務上過失致死罪刑事事件の証拠書類を閲覧・コピーすることができ、裁判を有利に進められたわけです。 実はPL事件は、勝訴に至らないケースも多々あります。しかし、裁判を続けるなか、被告の企業が製品を安全な仕様に改良したり、事故が報道されることによって製品の売り上げが急落して製造中止になることもあります。ですから、勝ち負けだけではなく、PL訴訟を起こすこと、そのものに社会的意義があるのです。 ひとつ間違えば消費者の命を脅かすリスクを持って世に送り出される製造物は今後もなくならないでしょう。人命をないがしろにして儲けを追求する企業は到底許せません。企業はより安全に配慮して製品をつくる、製品に欠陥が見つかればすぐ改良する、被害を受けた消費者には十分な補償をする。これらのことをしっかり遵守してもらいたい。そのために、現状の日本の法制度ではまだまだ不十分なので、法制度の改革にも意見を表明していきたい。しかし今も、PL事故の被害者はたくさんいます。今後も一つひとつの事件に注力し、彼らを救済する努力を積み重ねていきます。 ――若手弁護士に対するメッセージをお願いします。 人と企業が存在する社会が続く限り、PL事件は絶対になくならないばかりか、増加するのは確実です。従ってPL問題に精通する弁護士が活躍できる場が増えることが予測されますが、専門的な知識やノウハウ、スキルが必要なため、まだまだその数は不足している状況です。 今後も東京PL弁護団の活動を通じて、PL事件に力を発揮してくれる弁護士をたくさん養成していきたい。特に若手弁護士の方々には、ぜひともこの分野に興味を持ってほしいと思っています。

■プロフィール

  • 東京PL弁護団
  • 代表者/中村雅人
  • 事務局/東京都港区虎ノ門1-4-5 文芸ビル8階ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所内
  • http://pl-lawyers.com/index.html