法務最前線:2015年5月号 Vol.45

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

新時代のWork Front

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松竹株式会社 法務室

作品は、一人が〝一気通貫〞で担当

今年、創業120周年を迎えた同社は、邦画やアニメ映画の製作・配給、洋画の買付・配給などを行う「映像」、歌舞伎、一般演劇の企画、製作、興行などの「演劇」、それに「不動産・その他事業」を事業の3本柱としている。 各部署がそれぞれ契約書の作成などを行っていた同社に、独立した法務担当部門が置かれたのは、2005年のこと。07年に、山内貴美子氏が別のエンターテインメント企業から転職し、法務室室長に就いた当時は、まだ現在のような体制の確立に向けた過渡期だった。「契約書の作成や商標に関する業務は、法務室が一手に引き受ける、という法務としての輪郭づくりからスタートしました」と山内氏は振り返る。「契約書づくりを引き受けるようになって以降、徐々に各部門から入る情報量が増え、契約書以外の相談案件も多く寄せられるようになりました。現在では、法的な問題があれば、すぐに我々のところに話が来ますよ」 法務室は、山内氏を含め5人の体制で、そのうち司法書士資格保持者が一人。このメンバーで、年間700件ほどの契約書作成依頼に応じている。「映像も、演劇についても、基本的に一つの作品を、一人の室員が〝一気通貫〞で担当する」のが、同社のやり方だという。「映画であれば、共同製作契約、制作委託契約から、監督や脚本家、出演者などとの個別の契約書作成はもちろん、例えば道路の使用許可をどうするか、といった制作に付随するあらゆる法的な課題に対応するのです」 そうした手法を取る理由を「大手企業の法務などでは、契約書を担当する人は、ずっとそればかり、ということがありますよね。そういうスタイルだと、その道のプロにはなれるかもしれませんが、〝つぶし〞が効かない。私は、メンバーに、広く活躍できる法務人材として成長してもらいたいのです」と山内氏は説明する。

「ビジネスを知る」が、何より大事

エンターテインメント界に確固たる地位を築く同社だが、「仕事を進めるうえで、業界ならではの〝お作法〞のようなもの」もあるそうだ。「監督や出演者によっては、法的に正しいか否かとは別に、その都度意向をうかがったり、といった個別の対応が必要になることがあります。契約書には書かれない、独特の慣習もある。法務としてもそこをしっかり理解しながら、現場に対するように心がけています」 エンターテインメント企業の法務として最も神経を使うことの一つが、著作権など知的財産権の扱いだ。「侵害行為の結果、作品が差し止めになったりしたら、目も当てられません。現場は、どうしても〝イケイケ、ゴーゴー〞になりがちなので(笑)、法務としては常に原則論に立ち返って、対応するようにしています」 全社的な問題意識の高揚に向けて、定期的に法務発のニュースなどをメール配信するほか、年に2回、室員が講師を務める社内セミナーを開催している。 講師をすることは、その人の成長にもつながる。「メンバーには、『ぜひこの人に相談したい』と頼られる存在になってほしい」と山内氏は話す。「そのためには、法務の専門家である前に、現場を知るビジネスパーソンでなくてはいけない。契約書を読みながらビジネスを想像できるからこそ、『これが足りない』という的確なアドバイスも可能になるのです」 同時に、「室員全員に〝知的ミーハー〞になれ」とハッパをかけているそうだ。「法律に凝り固まった頭でっかちではなく、何事にも興味を持って、視野を広げてもらいたいのです。それは、必ず仕事に生きてくるはず」「扱う案件が、確実に増えている」こともあり、一緒に働ける仲間を増やしていきたい思いもあるそうだ。「『ゼネラルに担当するので、いろんな体験ができる』『かかわった作品が劇場公開されるなどして、多くの人に見てもらえることに、やりがいを感じる』というのが、メンバーの〝職場評〞です。頭が柔軟で前向きな、できれば即戦力となる方に興味を持ってもらいたいですね」

■企業概要

  • 松竹株式会社
  • 創業 1895年
  • 代表者 代表取締役社長 迫本淳一
  • 資本金 330億1865万6642円
  • (2014年2月28日現在)
  • 従業員数 525名(2014年2月28日現在)
  • 本社所在地 東京都中央区
  • 築地4-1-1 東劇ビル
  • ■プロフィール
  • 山内 貴美子(やまうち・きみこ)
  • 松竹株式会社
  • 総務部 法務室長
  • Profile
  • 1984年 株式会社服部セイコー
  • (現セイコーウオッチ
  • 株式会社)入社
  • 1993年 コナミ株式会社入社
  • 2003年 フィールズ株式会社
  • 入社
  • 2007年 松竹株式会社入社
  • 総務部法務室長就任