法務最前線:2016年5月号 Vol.51

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

新時代のWork Front

法務最前線

株式会社ユーザベース 法務(バックオフィスチーム)

組織の成長を見据え 予防法務を強化

企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA(スピーダ)」と、経済情報に特化したソーシャル経済ニュース「NewsPicks(ニューズピックス)」を開発・運営するユーザベース。設立時より「世界一の経済メディアをつくる」ことをビジョンとし、「SPEEDA」をアジア市場最大級の企業・業界情報プラットフォームに押し上げた。今年1月には、上海、香港、シンガポールに続き、スリランカにも拠点を開設。それら海外拠点を含め、全社の法務を統括するのが、リスクマネジメント担当ディレクター・松井しのぶ氏と、リーガルマネージャー・毛利敦子氏の精鋭2名。毛利氏に、業務の特徴について尋ねた。「業務委託先やデータ提供サプライヤーとの契約書のレビュー(英文契約書は約3割)、利用規約の検討などが恒常的に動いています。主に松井の担当ですが、海外子会社の労働契約内容の整備や現地の弁護士など専門家と協働することも多々です。また〝情報を扱うビジネス〞を行っているので、リスクマネジメントの観点からも情報管理を重視。システムや社内インフラなど全社的なセキュリティ体制強化のため編成された〝情報戦略チーム〞に法務も参加しています」バックオフィス全体のマネジメントも担当する松井氏が、現在の法務の主な役割を説明する。「契約・取引法務および情報管理などに加え、力を入れている施策の一つがコンプライアンス体制の充実と、それを守る企業風土の形成。一昨年より内部監査(一部会計監査を含む業務監査)も行い、今年度は海外拠点を含むグループ全社を14チームに分け、より一層のコンプライアンス体制の構築とモニタリングを進めています。当社は近年成長著しく、事業領域が拡大し、社員数も増加の一途。戦略法務も当然重要ですが、予防法務的取り組みが喫緊の課題となっています。そうした状況下、専任は毛利一人なので、活躍を期待される場面が多いのです」

企業文化は 「自由主義で行こう」

働き方・働く環境において、自身の仕事への責任を果たすなかで、〝自由〞なスタイルを大切にしている同社。コアタイムを設けないフレックスタイム制で、在宅勤務も選択できる。実際、法務を含むバックオフィスの〝ワーキングマザー率〞は高い。「10〜16時まで会社で仕事をし、17時に子供たちを保育園に迎えに行き、食事をさせて寝かしつけ、21時から契約書のレビューなど一人でできる仕事を再開――そんな時間の使い方をしています。法務のミッションは〝ビジネススピードを加速させるための法的アドバイスを迅速に行う〞こと。そのための情報は自分でどんどん取りに行き、能動的に各人・各部署に働きかけなければ、業務が成り立ちません。ですから私の場合は、ほぼ決まった時間に出社し、社内にいる時は誰かとミーティングをするなど、対面でのコミュニケーションを密にしています」と、毛利氏。そうした仲間との日々のやりとりのなかから研修やセミナーのテーマを見つけ、社内のリーガルマインドを高める様々な施策をかたちにする。そのように働き方が自由である分、伴う責任は大きいと松井氏は言う。「短期・中期・長期と3つのスパンで上司と相談しながら目標設定を行い、短期(1年)でいえば四半期に一度、達成度合いを評価し、上司と見直しを図ります。自由ではありますが、プロセスではなく成果が問われますから、捉え方によっては厳しい環境といえますね」 毛利氏はやりがいをこう語る。「自分発信で、やってみようと思ったことを仲間と力を合わせて実現できることが喜びです。ビジネスの最前線で、法的アドバイスを通じ、ビジネスを動かす一員となる実感が得られることも、やりがい。自由でチャレンジングな仕事を求める人には最良の場だと思います」

■企業概要

  • 設立:2008年4月1日
  • 代表者:代表取締役共同経営者 梅田優祐
  • 代表取締役共同経営者 新野良介
  • 資本金・準備金:10億4957万円
  • 所在地:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-14
  • 恵比寿ファーストスクエア10階

  • ■プロフィール

  • 松井しのぶ(まつい・しのぶ)
  • 株式会社ユーザベース
  • 公認会計士/リスクマネジメント担当ディレクター
  • 上智大学を卒業した年に公認会計士の資格を取得。太田昭和監査法人(現:新日本有限責任監査法人)で2年勤務した後、国際税務業務に従事することを希望し、税理士法人プライスウォーターハウスクーパースに転職(8年在籍)。夫の転勤に伴いトルコで4年半過ごし、帰国した2014年2月に監査役としてユーザベースに入社。2015年8月より、現職。

  • 毛利敦子(もうり・あつこ)
  • 株式会社ユーザベース
  • バックオフィスチーム/リーガルマネージャー
  • 高校卒業後、ミズーリ州立大学でマーケティングを専攻。卒業後、ロサンゼルスの、日本の旅行代理店に勤務。帰国後、国内の営業本部を経て、トイザらスのマーケティング職として転職。資格取得を希望し、学習院の法科大学院に進学。法務研究科課過程修了後にNTTドコモの法務部で働き、4年勤務した後、2014年12月ユーザベースに転職。現在に至る。