法務最前線:2016年7月号 Vol.52

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

新時代のWork Front

法務最前線

東日本旅客鉄道株式会社 法務部

チーム一体となって早期対応・改善を

日本の交通網を支え、豊かな生活の創造を目指す東日本旅客鉄道。法務部長・塚田雄司氏に、まず本社法務部のチーム構成について聞いた。

「本社法務部は①企画・法規グループ、②訴訟・賠償グループ、③知財・国際法務グループに分かれています。①は主に法務部門組織目標の企画・遂行、法務部門体制の構築、各種法律相談と危機管理案件を担当。②は本社・支社で発生する訴訟案件対応、鉄道事業に関する法律相談、鉄道事業を主として支社で生じた法的案件のサポートを行います。また、新たな事業領域への進出をサポートするため2013年に新設した③は、知財戦略にかかわる取り組みやグローバル展開において、法的側面からの支援を行っています」

その歴史は国鉄時代にさかのぼる。事故・賠償問題などの対応が基盤になっていたことから、訴訟・賠償というグループが置かれているのは同社ならでは。また本社のほか12の支社にも法務担当を配置。事業特性上、BtoC対応が多いため、各支社に法務担当者を置き、可能な限り早期かつ細やかな対処ができるような体制を整えている。塚田氏は言う。

「早期対応は体制だけで叶うものではなく、社員一人ひとりのマインドがあってこそ。事故などのトラブルに長年対処してきた企業ですから、隠すほど事態が悪化することを皆が知っている。ゆえに情報共有は素早く、そして常に問題点をオープンにして最適な方法を選択しようという心構えがあります。これは役員も同様。特に法務部は経営と近いところにあって、指示がすぐ飛んでくる。コンプライアンス対応はもとより、例えば新規事業などに関する会議の際には法務部メンバーが同席、法的見地から助言・サポートを経営側に行うこともあります。意見は必ず聞いてもらえますし、風通しのよい風土なのです」

様々な部署とのチームで業務推進

本社法務部所属の多くのメンバーが、法務以外の職にも任じてきた。法務部課長・小長谷真理氏も、駅で助役を務め、人事にも携わった経験を持つ。

「本社、支社、グループ会社間でジョブローテーションが行われます。会社から見れば組織活性化の一環ですが、多岐にわたる当社の事業を知り、そこで人とつながりを得ることは、その後の仕事の糧となります」

法務部内でいえば3グループのメンバーが入り交じって取り組む案件も多いという。

「他の主管部門とチームを組むこともよくあります。当社法務部では特定の法分野で専門性を究めるより、広く興味関心を持ち、チームワークとマネジメント力を発揮して仕事を進められる人が向いているかもしれません」と語る小長谷氏。

塚田氏に今後の展望を聞いた。「経験者採用をはじめ、法務部門への異動希望者を募る社内公募制異動も活用し、法務部門の体制強化を図っています。特に人材育成、コンプライアンスなどに関する啓発活動、社内外との連携強化など、グループ会社経営に資する支援が本社法務に一層求められていることから、法務・コンプライアンス部門のニーズが高いグループ会社への、法務人材の異動も推進していきます。教育はOJTが基本ですが、社内の様々な部署・社員を対象とした、法分野に関する研修を多数開催しており、勉強できる機会が非常に多い会社です。現在、海外のロースクールへ社費留学しているメンバーもいますし、個々人のスキルアップのサポートはこれからも柔軟かつ積極的に検討していきます。当社事業に興味を持ち、チームで仕事を進めることにやりがいを感じていただける方と、共に働きたいと考えます」

■企業概要

  • 設立:1987年4月1日
  • 資本金:2000億円
  • 社員数:5万8550名(2015年4月1日現在)
  • 所在地:〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-2-2

  • ■プロフィール

  • 塚田雄司(つかだ・ゆうじ)
  • 東日本旅客鉄道株式会社
  • 法務部 法務部長
  • 1980年、日本国有鉄道入社。87年、東日本旅客鉄道株式会社入社(総務部法務課配属)。96年、事業創造本部(生活サービス事業)における法務担当部署の立ち上げも行う。2013年、本社法務部法務部長に就任。入社以来、一貫して法務畑を歩む。

  • 小長谷真理(こながや・まり)
  • 東日本旅客鉄道株式会社
  • 弁護士/法務部 課長
  • 訴訟・賠償グループリーダー
  • 慶應義塾大学法学部卒業後、東日本旅客鉄道入社。10年間勤務した後、弁護士資格取得のため退職。資格取得後、法律事務所に入所。その後、2011年に同社法務部にインハウスロイヤーとして再入社。法務部課長として課員をまとめる。