法務最前線:2016年7月号 Vol.52

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

新時代のWork Front

法務最前線

株式会社IDCフロンティア コーポレート管理本部

守りと攻めを同時に行う

同社は、ヤフー株式会社のグループ企業で、大規模データセンターの運用、ネットワークセキュリティや運用監視を含むデータセンターソリューション、クラウドコンピューティング、ストレージサービスなどを提供する。その法務業務は、契約実務、コンプライアンス対応、知的財産、債権回収業務、紛争対応、商業登記、労働法実務など。総務部長も兼務する木内宏幸氏が、法務担当として八面六臂の働きをしている。これまで木内氏一人で担当してきた法務だが、市場変化などの影響を受け、増員を計画している。その背景について、木内氏に聞いた。

「近年、当社はデータセンターだけでなく、クラウドコンピューティング事業に注力しています。クラウドは、仮想化の技術を用いて進めていく事業です。そのため、海外の大手IT企業や、ソフトベンダーとの契約が増えてきました。また、産学協同で行う技術開発に取り組むなど、単純なライセンス契約もあれば、まったく新しいカタチの業務提携を結ばねばならないケースもあります。当然、一つひとつの契約において、お客さまも当社も満足がいくような契約書作成の工夫が必要で、それらを一緒にやっていただける人材の確保が急務になっているということなのです」

クラウドの急速な普及により、不正利用やサイバー攻撃などから同社の顧客を守るための法的対応も増えてきたそうだ。法務を管轄するコーポレート管理本部・本部長の土屋麻美取締役も、「これからの法務にかける期待は、とても大きい」と言う。

「常に日進月歩のIT技術と対峙していますから、サービスが立ち上がる前にリスクを法務で見つけ、解消することが大事です。それが、お客さまへの最大の貢献となります。そして我々は、お客さまのパートナーとなって共に成長していくことを目標としていますので、契約書一つにしても、お客さまのために何ができるかという視点で進めていきたい。いわば〝守りの立場〞と、〝攻めの立場〞を同時に求めているわけですが、そこに当社の法務の難しさとやりがいがあると思います」

クリエイティブな法務活動にまい進!

木内氏の仕事ぶりを見てきた土屋氏は、「木内は新しいことに挑戦することが大好きで、知識欲や好奇心が旺盛。普段は静かなのに、法律に関する議論になると一気にヒートアップして、左/7名が所属する総務部の部長を兼務する、木内宏幸氏。右/コーポレート管理本部・本部長の土屋麻美氏。今年4月、同社初の女性取締役に就任したばかり周囲がついていけないほどです」と笑う。

「法務の仕事は誰にも負けたくないと思っているので、そのための情報収集は欠かさないし、何しろ一人なので効率的に業務を行おうと思うと、情報をたくさんためておいて、すぐに引き出せる状態にしておかないといけません。業法分野、会社法、労働法など改正が多い分野は常に目を光らせています」と、木内氏。これから共に働く人は、木内氏から、大いにワクワクする知的な刺激を受けるに違いない。では、そんな木内氏にとって仕事そのものの魅力とは何か。

「当社がサービスを開発する中で、海外ベンダーとの連携が必ず出てきます。その際、どんなアライアンス形態が最適かを考え、適切な契約形態となる法的構成を試行錯誤し、当社が押さえたいポイント、確保したい利益などを契約書のかたちに落とし込む。そのうえで、互いに発展し合える契約条件になるよう探り合って締結する。それができたと思えた時は最高です。リスク回避のための予防法務も大事ですが、ビッグデータやIoTなどに注目し、そうした分野で新たなビジネスモデルを法的見地から提案し、戦略的な法務活動に取り組めること、これも当社ならではの醍醐味です」

経営サイドとも、営業や技術本部との距離も近く、様々なポジションのメンバーから頼られる日々だ。技術的なやりとりを実地で学び、法的知識を書籍などから学び、創造と工夫に満ちた法務業務にまい進できる時間を楽しむ木内氏は、この楽しさを新たな仲間と一緒に分かち合いたいと言う。同社は、今年10月に東京ガーデンテラス紀尾井町に移転する。新しい職場環境で、新しい法務プロフェッショナルとの出会いを、木内氏は待っている。

■企業概要

  • 代表者:代表取締役社長 石田 誠司
  • 株主資本:72億500万円
  • 株主:ヤフー株式会社100%
  • 所在地:〒160-0004 東京都新宿区四谷4-29

  • ■プロフィール

  • 木内宏幸(きうち・ひろゆき)
  • 株式会社IDCフロンティア
  • コーポレート管理本部
  • 総務部 部長/法務担当
  • 早稲田大学卒業後、情報セキュリティ事業、衛星放送事業を行う企業で企業法務を経験した後、2001年にソフトバンクの通信事業会社に転職し、現在に至るまで一貫して企業法務に従事。その間、仕事と学業の二足のわらじで中央大学法学部通信教育課程を修了。08年、IDCフロンティアの前身となるソフトバンクIDC法務部へ転籍し、13年にIDCフロンティア総務部部長に就任。