法務最前線:2017年7月号 Vol.58

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

新時代のWork Front

法務最前線

日清食品ホールディングス株式会社 法務部

一人ひとりがCLOの意識で!

日清食品ホールディングスは、グループ全社の経営戦略策定・推進、経営の監査・管理を行う持株会社だ。法務部・法務グループの役割などについて、チーフ・リーガル・オフィサー(CLO)の本間正浩氏にうかがった。「法務グループでは、部署ごとに担当を分担する『クライアントマネージャー制』を採用しています。各マネージャーに国内事業会社、海外事業エリア、およびバックオフィスを担当として割り当て、各自が自身の責任のもとに切り回しています」

例えば、課長の金子悦司郎氏は明星食品と北米地域と人事、副参事の芝田朋子氏は、日清食品・菓子事業とアジア地域と広報・宣伝が主な担当範囲となる。「CLOと同じ意識で動いてもらっている」と、本間氏は言う。「そのため、メンバーはキャリア層が多いのが特徴となっています。弁護士資格者であれば50〜60期の10年目以上。弁護士資格を持つ者以外も、法務経験の長いベテランが揃っています」

理由は、2013年頃から同社が取り組む、〝グローバル〞をキーワードとした多様な戦略の推進にある。
「グローバル戦略の一環で、R&Dや食品安全など12の〝プラットフォーム〞を置くホールディングスには、海外を含めた〝プロフィットセンター〞たる事業会社のサポートに徹するという使命があります。従来の受け身の法務から脱却し、リスクを解決するソリューションを提案し、さらには〝排除しても残る最終リスク〞を、会社として取れるか、取るべきではないかなど、一歩踏み込んだ提案ができる法務であることが求められています。これは、自分の判断に自信が持てる人材でなければ務まりません。法律相談や契約書レビューは〝きっかけ〞にすぎず、現場に出向いて事業会社が抱える課題を見つけ出し、ソリューションを提供することが使命であるため、高い水準の法的素養が問われるわけです。ゆえに、少数精鋭、プロフェッショナルで固めるというポリシーで体制を構築しています」

プロだからこそ 仕事は自由に

さて、インハウスローヤーの利点の一つは、ワークライフバランスの実現を会社が後押ししてくれることだろう。実際、本間氏の〝旗振り効果〞もあり、法務部の有給休暇消化率は高い。子育て中の芝田氏は言う。「私は昨年から施行された在宅勤務制度を活用し、育児と仕事の両立を図っています。担当業務に裁量があるということは〝無限責任〞であり、また〝課題は見つけた人がやる〞というカルチャーなので、私は仕事を自らつくってしまうほうですが(笑)。任せてもらえる環境であること、法務の枠にはまらない仕事ができること、そして自分のやり方次第で仕事の進め方をコントロールできるという点が、やりがいになっています」

金子氏も自身のやりがいについて次のように話してくれた。「自らの発言や関与が、会社の方針や利益、あるいは損失に直結する――つまり〝代理人〞ではなく当事者として働けるということが、まず一つ。また、自分一人で完結する仕事はなく、財務や経営戦略、マーケティングや生産・技術のエキスパートと専門知識をぶつけ合い、互いの意見を述べながら課題を解決し、ビジネスを創造していける点がインハウスならではのやりがいではないかと思います」

自由に仕事をクリエイトできるのはプロ集団であればこそ。しかし、全員が基本を忘れないようにと、本間氏が明文化したのが「法務部の十誡」だ。「リスクの管理とオポチュニティの活用という〝結果を出す〞こと」「検討に必要な事実を積極的に収集せよ」「解決(ソリューション)を示せ」など、明快な指針が並ぶ。これが法務部員の仕事の根底にある心得になっている。「当社の社員は皆、法務部から言われたことをまっすぐ受け止める。我々が間違った判断をして『ダメ』というと、事業が止まりかねない。それだけ法務部のメンバーの言葉や行動、判断は重いということを、常日頃から意識してほしいと考え、共有しています」と本間氏。指針からぶれず、自信を持って意見を発信し、行動できる人材。そうした真のプロを求めている。

■企業概要

  • 設立:1948年9月4日
  • 資本金:251億2200万円
  • 代表取締役社長・CEO:安藤宏基
  • 連結従業員数:1万1710名
  • 所在地:東京本社 〒160-8524 東京都新宿区新宿6-28-1
  • TEL:03-3205-5111(代表)
  • URL:http://nissin.com/

  • ■プロフィール

  • 本間正浩(ほんま・まさひろ)
  • 日清食品ホールディングス株式会社 執行役員・CLO
  • 弁護士(41期)
  • 中央大学法学部卒業。1989年、弁護士登録後、企業法務系の事務所に10年間勤務。99年、GEエジソン生命保険の執行役員、ゼネラル・カウンセルとなる。その後、デル、新生銀行などの法務責任者を経て、2013年より現職。

  • 金子悦司郎(かねこ・えつじろう)
  • 日清食品ホールディングス株式会社 法務部課長
  • 弁護士(51期)
  • 1999年、弁護士登録後、国内および豪州の法律事務所において、主にキャピタルマーケッツ、企業再生、知的財産および労働案件を手がけた。2014年、日清食品ホールディングスに入社。16年より現職。

  • 芝田朋子(しばた・ともこ)
  • 日清食品ホールディングス株式会社 法務部副参事
  • 弁護士(60期)
  • 一橋大学法学部卒業。2007年、弁護士登録後、企業法務系の法律事務所にて、一般企業法務、各種訴訟事件などを手がけた。国内大手証券会社法務部門への出向、育休を経て、16年、日清食品ホールディングスに入社。