Vol.73-74
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前列左より、河原彬伸弁護士(71期)、天野真佑子弁護士(63期)、山口智之弁護士(62期)、中川博貴弁護士(70期)

前列左より、河原彬伸弁護士(71期)、天野真佑子弁護士(63期)、山口智之弁護士(62期)、中川博貴弁護士(70期)

STYLE OF WORK

#139

湖都経営法律事務所

事業承継・事業再生分野を強みとして滋賀県の経済と地域活性化に貢献する

リーガルサポートで滋賀を元気に!

琵琶湖の西岸に面し、比良山系を望む、滋賀県大津市のJR堅田駅徒歩数分の場所に本拠を構える湖都経営法律事務所。大津出身の山口智之弁護士が「リーガルサービスをベースに、地元発展に貢献したい」という思いを抱き、2015年に設立した。顧客は大津市内および近接する高島市・守山市・近江八幡市と、滋賀県内の個人顧客・法人顧客が大半を占める。山口弁護士に、事務所で取り扱う案件などについてうかがった。

「一般民事・家事事件、刑事事件、および企業法務など、“守備範囲”は幅広いですね。国選や裁判員裁判の弁護も相当数行ってきました。事務所名に“経営”と冠しているとおり、法人、経営者顧客の拡大、特に事業承継・事業再生により一層注力していこうと考えています」

滋賀県は過去に、経営者の高齢化・後継者不在などの要因から廃業率が全国トップとなった苦い経験がある(現在は対策を講じ最下位を脱している)。事業承継支援、廃業率抑制は、県を挙げての重点課題だ。山口弁護士は「滋賀県の中小企業を元気にして、地域経済に貢献したい」と考え、中小企業診断士の資格も取得。法律面はもちろん、経営面からも専門的なサービスを提供する。

「滋賀県事業引き継ぎ支援センターや、滋賀県中小企業再生支援協議会との連携を強めるほか、経営革新等支援機関の認定も受けています。また、仲間の税理士、中小企業診断士とともに、滋賀県初となるМ&A仲介企業も立ち上げていて、そこを窓口とした相談案件も増えてきました」

顧客規模は、おおむね従業員数10名前後の中小企業だという。

「そうした企業の経営者にとっては、経営全体を見てくれる税理士や中小企業診断士が相談しやすいようです。事業承継・再生については民法・税法・会社法など様々な法律が絡むものの、具体的に『このように進めなさい』という方法を定めた法律はありませんから、弁護士の立場でもまずは“経営のアドバイス”“経営者の悩み相談”からとなります。様々な角度から経営者にリーチできるよう手を伸ばし、間口を広げておくことで、より多くの滋賀県下の経営者の役に立てればと思っています」

事業承継では先の仲介企業を通じ、株式集約化によるМ&Aなどを行っている。

「ある老舗企業の事業承継では、スクイーズアウトの方法やМ&Aの契約書作成など、様々なことを学びながら、クロージングまで持っていきました。従業員を解雇することなく完遂できたことが、うれしかったですね。そのようにデューデリジェンスからМ&Aまでこなせる〝県内の法律事務所〟というのも私たちの強みです」

また同事務所では、金融庁が策定した「経営者保証に関するガイドライン」の活用を積極的に経営者に促している。

「実際、滋賀県ではこのガイドラインの存在を知らない経営者がまだ多くいらっしゃいます。一昔前までは、中小企業が銀行などの金融機関から融資を受ける際には、経営者個人がその債務の連帯保証人となることを求められるのが当然のことでした。当然ながら、経営者が個人保証をすることは、個人にとって大きな負担でありリスクです。しかし、事業不振は、必ずしも経営者自身に原因があるとはいえないケースも珍しくありません。ガイドラインをうまく活用することで、例えば経営者保証のある債務を一部圧縮・免除してもらう、債務整理の際に一定期間の生計費に相当する額を手元に残すなど、再チャレンジの可能性が出てくるケースもあるでしょう。我々は、情報を提供しながら経営者が破産することなく、次の一歩を踏み出せるようなサポートをしていきたい。そう考えています」

山口弁護士は修習後すぐに法テラスに勤務し、多くの少年事件や刑事事件に取り組んだ。その後に勤務した滋賀県内の法律事務所では個人の債務整理、交通事故案件などに多数関与。事業承継・破産は企業案件ではあるが、当然、経営者や従業員の人生にかかわる問題だ。「企業を助けることは、雇用を守り、そこで働く人を助けること。一人ひとりの問題を法的見地からサポートすることで、滋賀県全体を元気にしたい」と願う山口弁護士の思いは一貫している。

湖都経営法律事務所
新型コロナウィルス飛沫感染防止で、面談室にアクリルパーティションを設置。相談者・依頼者が安心して来訪できるようにとの配慮

〝個〟と〝自由〟を尊重する風土

事務所の全体方針は、“事業承継・再生への注力/企業案件への注力”だ。しかし基本的に、各弁護士が自由に、自身の興味ある分野に打ち込んでいる。

中川博貴弁護士は、主に刑事事件を担当し、大津地方裁判所における福井原発訴訟(滋賀)弁護団の活動や、滋賀弁護士会の人権グループ(人権委員会、外国人の人権委員会)・法教育・公害対策環境委員会などのプロボノ活動にも時間を費やす。

「私がこの事務所で一番、好き勝手させていただいているかもしれません(笑)。事務所の方向性とは異なるものの、プロボノ活動などを通じて他県の弁護士とつながる機会もたくさんあるので、山口弁護士からは、『頑張って!』と言っていただいています。そうした活動によって積み重ねた知見を、何らかのかたちで事務所に還元したいと考えます」

19年に入所した河原彬伸弁護士は、司法試験合格後、修習を遅らせ、東京で数社の企業法務部に勤務した(登録は71期・68期相当)。結婚を機に地元に戻り、同事務所に入所してからは、商工会議所などに出向き営業活動を行っている。

「私は企業内で契約、国際取引、М&A、IPO準備、英文契約書作成など幅広い業務に取り組んできました。その点では当事務所の目指す方向性に貢献できると思っています。私も大津市出身なので、やはり個人事業主、中小・ベンチャー企業の支援に軸足を置きながら、一般民事・刑事事件なども経験し、滋賀県に貢献できる弁護士になっていきたいですね」

また、法テラスで山口弁護士と同僚だった天野真佑子弁護士は、子育てなどの都合でフルタイム勤務が難しい事情があり、それを知った山口弁護士が同事務所に勧誘した。現在、事業承継・再生の一助にと、知的財産権管理技能士の資格取得を目指し、仕事の合間に勉強時間を確保しているという。

3名の弁護士が感じているのは、「協働する案件はもちろんあるが、これほど自由な働き方を許容し、個人の興味を尊重してくれる環境はない」ということ。山口弁護士は、「仕事を自ら獲得するのが弁護士の基本なのだから、自由にやりましょう! ただし、裁判員裁判や大がかりな労働事件、マンパワーが必要なデューデリジェンスなどの際はぜひ協力してくださいね』という気持ち」と、笑う。

湖都経営法律事務所
事務スタッフを合わせて6名のアットホームな事務所。執務スペースは“お互いの顔が見える”開放的な空間となっている

共存共栄がキーワード

河原弁護士は「都市部に比べ、滋賀県は“需要と供給(リーガルサポート)”の、供給のほうがまだ足りていない」と見ている。また、中川弁護士も次のように語る。

「経営者はまず税理士や中小企業診断士に相談をするが、そこに弁護士が関与することで、気づけなかった課題を掘り起こすことができるでしょうし、より的確な解決策を提案できる可能性も格段に高まるはず。もちろんそれなりの労力が必要ですが、十分なニーズはあると踏んでいます。実際、経営者と話していると、『堅田にそんな法律事務所があるんですね』と言われることがよくあります。企業法務ができる法律事務所が“ここにある”というPRを、もっとしていかなければなりませんね」

最後に、山口弁護士に今後の事務所の展望についてうかがった。

「普通に営業活動を行い、裁判所の案件を担当していれば、“飯は食える”と思います。でもそれだけでは、つまらない。『この事務所に頼めば必ず付加価値が得られる』という特色を持つべく挑戦していくことにこそ、弁護士としても事務所経営者としても、面白みがあると思うのです。ですから、私は事業承継・再生という分野に注力していきたい。理想は、滋賀県にある多くの法律事務所が、それぞれに特色・強みを持って、お互いの得意を生かして共存共栄していけるような環境を醸成していくこと。そうすれば、滋賀県全体のリーガルサービスが底上げされ、弁護士がより市民の身近な存在となり、地域活性化につながっていくのではないでしょうか」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

Editor's Focus!

山口弁護士の父は、大津市で従業員数名の測量・地質調査会社を営んでいた。今は山口弁護士の弟が後を継ぐ。「父が経営に苦心する様子を見ていたせいか、『中小企業経営者の役に立ちたい』という思いが自然と育まれたのだと思います」(山口弁護士)

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