Vol.59
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PIONEERS

社会的インパクトがあり、市場の拡大が期待できる〝リーガルテック分野〞で、弁護士が起業するということ

南谷 泰史

株式会社日本リーガルネットワーク
代表取締役CEO/弁護士

#31

The One Revolution 新・開拓者たち~ある弁護士の挑戦~

日本では、〝法律とIT〞を掛け合わせたリーガルテックを事業として扱う企業はまだそう多くない。近年、国内でもサービスが拡大しているフィンテックを生んだ米国では、リーガルテック企業・サービスの市場規模も先んじて拡大中だ。その米国の状況になぞらえれば国内でも期待が高まる市場だが、法律プロフェッションを必要とする点が参入障壁となる。ではいっそ弁護士が、リーガルテックで起業するならどうか。その可能性に挑むのが、南谷泰史弁護士だ。法律事務所運営との〝二刀流〞で、日本リーガルネットワークを立ち上げた南谷弁護士の、起業への思いを聞いた。

社会の不公正の解消を実現できる分野

私がリーガルテックの分野で起業したいと考えたのは、法律事務所を退所して戦略系コンサルティング企業で働いていた頃です。複数の新規事業プロジェクトやインターネット系サービスのプロジェクトに関与するうち、弁護士というバックグラウンドを生かしてできる事業で起業してみたい、と。司法修習同期で弁護士の早野述久に声をかけ、サービス内容の構想が固まった段階で、日本リーガルネットワークを設立しました。その後、ソフトウェアエンジニアの飯田智久が参画しました。

私たちが主力サービスとしているのは、GPS(全地球測位システム)などを活用したスマートフォンアプリ「残業証拠レコーダー」(残レコ)です。「残レコ」は、未払い残業代の証拠確保のためのアプリで、ユーザーの位置情報を自動で記録し、改ざんできない形でサーバーに保管して、示談交渉や訴訟の際に証拠として使うことを想定しています。過労死の原因となるばかりでなく、様々な社会課題にかかわるサービス残業問題を解決するための一つの手段にしたいと考え開発しました。

日本ではまだ参入する企業は多くありませんが、社会の基盤となる法律問題の解決に変革をもたらし、社会に大きなインパクトを与え、〝社会の不公正の解消〞というアプローチの難しい課題に挑戦できる。それがリーガルテックの存在意義だと思います。

社会課題の構造的な解決が起業の動機

弁護士という職業を選んだことや起業の動機は、「社会における構造的な課題を解決することに貢献したいから」です。社会を構成する重要な要素の一つが法律であると考えて法学部を選択し、せっかく勉強したのだから〝法律を使う人に〞と弁護士になりました。社会課題といっても様々で、法律がないことによって生じる課題もあれば、法律があっても実行されないことで生じる課題もあります。後者においては、そもそも法律があることを知らない、ゆえに自分が権利を制約されていることすら知らないという方も、少なくありません。

例えばサービス残業問題。残業時間が嵩んで体を壊すなどして窮地に立ち、弁護士のもとを訪れたとする。その時点で残業の証拠を取るのは大変です。上司や同僚もいる前でパソコンのログを入手できるのか、証明力の問題はさておき勤怠管理を自分で長期間記録し続けられるのか。多くの弁護士がそうした問題の解決に尽力しておられますが、私たちはそこにITを組み合わせて、解決に向けた、別のアプローチ法を提案したいのです。

サービス残業の証拠が簡単に取れるとなれば、もしかしたら経営者の判断も変わっていくかもしれません。「退職後に残業代を請求されたら割に合わない」「サービス残業は非効率」など、経営者の意識改革、ひいては働き方改革にまで影響を及ぼせるサービス・事業を目指したいです。

狭義の弁護士業務に縛られずに生きる

残レコ
「残業証拠レコーダー」(ホーム画面)。GPSなどによりユーザーの位置情報から勤怠状況を記録し、未払い残業代請求の証拠とするスマートフォンアプリ。労働問題を取り扱う提携弁護士に対して未払い残業代請求の依頼を簡単に行える

正直、弁護士業務との両立は大変です。「残レコ」が軌道に乗ってきたので、どうしても時間を取られます。また、ベンチャー企業はとにかく〝考えるべき課題の数〞が多い。しかも雑多なものはなくて、重要な問い、運営していくために解決すべき問い、誰も教えてくれない未知の問いもこなしていかなければなりません。前職の法律事務所では胆力や徹底したリサーチ力を身につけさせてもらい、コンサルティング企業では事業計画やビジネスモデルの立て方、マインドセットを学びました。どれ一つとしてムダな経験はなく、現在、問いに答えを出していく際に役立っています。私は、そうしてリーガルテック分野で新サービスを見つけました。狭義の弁護士業務に縛られなければ、〝自分は何を強みにするか〞のヒントは、どんな経験からでも引き出せると思います。

私たちは、まず労働系の「残レコ」をローンチしましたが、これからも新しいリーガルテックのサービスを開発していきます。法律業務の主役は当然弁護士ですが、弁護士の手が回らない部分、補助が必要な部分を支援したい。規模も拡大し、エンジニアの数も増やし、様々なサービスを提供することで社会にインパクトを与える。そうして社会における構造的な課題を解決する一助となり、社会から不公正を減らしていければと思っています。