Vol.78
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経営管理グループは、法務、会計、税務、IR、管理会計などの機能を有する。それぞれ専門担当はいるが、グループ内の横連携を密にして仕事を進めるのが特徴

経営管理グループは、法務、会計、税務、IR、管理会計などの機能を有する。それぞれ専門担当はいるが、グループ内の横連携を密にして仕事を進めるのが特徴

THE LEGAL DEPARTMENT

#115

株式会社ドリームインキュベータ 経営管理グループ

法務の枠を超え、人を巻き込み、事業をスピーディにドライブ!

事業を推進するハブ機能として

新規事業の創出、成長支援などに関する戦略コンサルティングおよびインキュベーションを行う、株式会社ドリームインキュベータ。「社会を変える。事業を創る。」をミッションに掲げ、“社会のあり方をも変えるような大きな事業創造(ビジネスプロデュース)で、日本経済を元気にする”を信念として、大企業とタッグを組み、また、ベンチャー企業への投資はもちろん、自らが事業経営も行うという独自のビジネスモデルを強みとする。その法務機能は経営管理グループ内にあり、マネジャーの香村尚志氏ほか2名がかかわる。まずは同グループ長の上村敏弘氏に、法務の役割についてうかがった。

「当社の最大の特徴は“ベンチャー気質”が色濃いこと。各自が知恵を絞り、人を巻き込み、一丸となって事業を進めていくというカルチャーで、常に事業展開のスピードや判断の速さが求められます。法務も同様で、経営管理グループが所管する会計、税務、投資管理、IR、株主総会、管理会計の担当者が、社内のフロント(コンサルタント)、外部の専門家などと密に連携し、経営層の意思をくみ取りながら一体感を持って事業をドライブしていくことが求められます」

同社が創業20年の節目に打ち立てたのが「枠を超える。――領域の枠を超えて構想する。常識の枠を超えて戦略を立てる。組織の枠を超えて仲間を集める。自分の枠を超えて挑戦する。」というバリューだ。当然ながら法務も様々な枠を超えて活動していくことが求められている。香村氏も、「法務の役割はそこに尽きる」と語る。

「事業部から寄せられる相談は、法務だけで完結できるものはまずありません。事業を組み立てる際は、会計や税務が必ず絡みますし、当社としての方針や取引先への説明の仕方などをアドバイスすることもあります。つまり法律知識だけで対応することはそもそも不可能。しかも、事業立ち上げの初期段階からかかわるので、多彩なメンバーを巻き込んで差配し、事業推進の“ハブ機能”として動かなければなりません」(香村氏)

「ゆえに当社では、法務だけに特化した独立部署がないのです。経営管理グループ内のメンバーは各自の担当分野を専門としながらも、会計や税務、コーポレートガバナンスや適時開示など、本来の担当分野以外にも手を広げて仕事を遂行しています」(上村氏)

  • 株式会社ドリームインキュベータ
    経営管理グループは30~40代前半のメンバーが多い。現在、週2回程度、交代制で在宅ワークを実施。子育て世代も多いため、融通し合いながら時短勤務も実施する。また今年、法務担当の新卒を1名採用。グループの“新しい風”として期待されている
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“法務”の力を“実務”に生かす

香村氏は契約法務、機関法務、法務相談、コンプライアンス、知的財産などの法務業務に加え、プロジェクト案件も数多く取り回す。

「コンサルティング業務の契約書や秘密保持契約については定型フォーマットがありますし、フロントのメンバーが基本交渉を進めたうえで相談にきてくれます。ただし、恒常的に複数のプロジェクトが走っています。それらはほぼ前例がなく、契約内容もそれぞれ特殊。ですから“日々、挑戦。日々、勉強”という刺激に満ちた毎日を送っています」(香村氏)

そんな香村氏に、最近の思い出深い仕事を聞いてみた。

「当社は事業の動きが速いため、直近3カ月を振り返ってみただけでも、お伝えしたい事例が多すぎて(笑)。例えば2021年5月に締結した電通グループとの資本業務提携。相互のクライアントへのクロスセリングの促進・支援や共同・連携による新規クライアントの発掘・開拓などを協業目的としたもので、経営層が水面下で話を進め、いざやるぞ!と決まってからのスケジュールが極めてタイトな案件でした。先方からのデューデリジェンスの対応、資本業務提携の契約書の作成、金商法上の対応、法規制に対するレギュレーションの対応、適時開示の記載検討など、一気通貫でかかわりました。その際の体制は、上村と私を含む経営管理グループ3名+広報1名です。少人数かつ短期間での対応は大変でしたが、やり切ったという達成感は大きかったですね」

ほぼ同時期、同社事業の一部のカーブアウトに伴う、スキーム検討、契約交渉、取引実行支援の際にも、八面六臂の活躍をみせた。

「これも全体設計から交渉まで、上村と私が担当しました。プロジェクト全体を見ながら、細部の契約条件などについて“押し引き”していくのは、法務の知識だけでは無理ですし、“法務の仕事はここまで”と役割を明確に区分していないからこそうまくいったのだと思います。また、自社の未来にとって大事な新規事業創出や既存事業の成長支援に加え、社会課題解決に資する官民連携の新たな仕組みであるソーシャルインパクトボンド(SIB)の取り組みも。この時は、ファンド組成にあたって、ファンドスキームの検討、LP(有限責任組合員)から求められた質問への回答書の作成、LPとのミーティングへの出席などを本社管理部門という立ち位置でサポートしました。19年に、スタートアップ支援のための最大50億円規模の新ファンドを設立した際は、フロントと伴走して、組成から運用も行いました。やってみたいと思った仕事には、すべて参画できている感じです」

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    コンサルタントの仕事スペースは、フリーアドレス。経営管理グループは、ガラスで仕切られた固定スペースで執務する。コンサルタントは「経営管理部屋に行けば、誰かに相談できる」という安心感があるそうだ
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コーポレート部門のトップも目指せる

「どの案件も、一人ではなく仲間と一緒に挑戦できること、また達成感を共有できることがうれしい」と、香村氏は語る。

「私自身の課題としては、スピード感を重視しがちで、対応が後手に回るケースが多いということ。法務も法務以外の分野も、最新情報を日頃からキャッチアップし、フロントからの相談に先手で対応していくことが理想です。案件が生じてから調べているのでは遅いくらい。ですから休日も、積極的に自己研鑽しています」

法務という枠にとらわれず、法務以外の知識や人脈を駆使しながら事業を組み立てつつ、フロントをサポートする作業は実にクリエイティブだ。香村氏は、経営管理グループのマネジャーとして、どのようなチームを理想としているのか、うかがった。

「法務担当としての専門性を深めながら、ジェネラルに広く知識・経験を蓄え、一人ひとりが部門の枠も会社の枠も、さらには自分自身の枠も超えて活躍する――そんなメンバーの集まりでありたいと思います」

上村氏には、同社法務への期待をうかがった。

「私は、香村のようなメンバーがCFOを目指してくれたらと考えています。つまり法務からCFOが出てもいい、と。本来はCLOかもしれませんが、名称にこだわる必要もないと思っています。CFOもCLOも、人事、IR、広報なども含めてコーポレート部門全体を所管するわけですから。経営管理グループのメンバー全員が、そのような人材に育っていく環境とチャンスをつくっていくのが私の使命だと思っています」

そう語る上村氏自身、公認会計士の資格を持ち、監査法人や会計事務所でコンサルタントとして勤務したのち、同社に転職したそうだ。いわばフロントからバックオフィスへの転身だ。21年4月からは執行役員に就任し、経営管理グループのトップを兼任している。

「当社に転職したばかりの頃、あるプロジェクトにおいて、フロントから『それなら会計基準を変えたらいいのでは』と言われ、『そんな発想があるのか!』と驚いた経験があります。しかし当社が手掛けるビジネスプロデュースとはまさに、官と連携してそうした提案を行ったりするものなので、彼らにとっては当たり前の発想。“自分の考え方を変えてくれる、新しい視座をくれる場所だ”と実感しました。ある意味、自分の人生におけるパラダイムチェンジですよね(笑)。そうした柔軟な発想を持つ仲間がいて、幅広い分野で自分の可能性を無限に広げていけるのが、当社法務の仕事の魅力だろうと思います」(上村氏)

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。