Vol.81
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法務部門のメンバーは約20名。グローバル展開に伴い、英語や中国語の契約書作成・レビュー業務などもこなす

法務部門のメンバーは約20名。グローバル展開に伴い、英語や中国語の契約書作成・レビュー業務などもこなす

THE LEGAL DEPARTMENT

#124

株式会社マクアケ 経営管理本部 企業法務/品質保証本部 審査法務

新市場を切り拓くビジネスをサポート。出品者・購入者の安心と信頼を守り抜く

事業の加速に合わせて法務業務を分割

つくり手の、商品やサービスにかける想いに共感した人が応援の気持ちを込めて対価を支払うことで開発と製造を支援する――そんな、これまでにない消費スタイルを日本社会に広めたのが応援購入プラットフォーム「Makuake(マクアケ)」だ。年間流通総額は215億円に達し、今やMakuake発の商品がテレビやSNSで話題となることも珍しくない。運営会社の株式会社マクアケは、2013年の創業から約6年半で、東証マザーズ(当時)に上場。地方自治体や企業と連携してプロジェクト支援を展開し、今ではアジアや欧州でも事業展開を進めている。法務の立ち上げから携わってきた千葉大吾氏に、同社法務の体制をうかがった。

「当社には、『企業法務』と『審査法務』という2つの法務部門があります。経営管理本部直下の企業法務は、契約法務、法律相談、ガバナンス関連、知的財産などを担当します。一方の審査法務は、品質保証本部直下にあり、Makuakeに申請される全プロジェクトの実現性、表記などのチェックに業務特化しています」

法務機能を経営管理本部と品質保証本部の2つに分けて配置していることには、明確な理由がある。

「Makuakeでは、月に約650〜800件もの新規プロジェクト案件が公開されており、通常の業務スピードでは対応しきれないのが実状です。そこで2年前に法務を分割して、審査法務を新設し、プロジェクトの審査などを加速化できるようにしたのです」(千葉氏)

Makuakeが行っているのは、先行予約販売という販売手法だ。購入者はまだ商品が世の中に存在していない状態で代金を支払うことになるため、購入者保護が大きな課題であった。審査法務を独立させたことで、プロジェクト全体を横断してチェックできるようになったほか、「Makuakeというサービスの品質を管理する専門部署がある」という安心感にもつながり、結果、サービスの信頼性向上という効果をもたらした。

株式会社マクアケ
社員全員がMakuakeのファン。共感した商品は各人が応援購入することも多いという

法務を支える多様なメンバー

企業法務も審査法務も、メンバーは30代前後が中心で、全員が中途入社者だ。メーカーの法務部や、中央官庁での執務経験者、職種でいえば営業職や知的財産を担当していたメンバーなど、その経歴は多種多様。新しいサービスを扱うので、様々な経験を持つ人材にかかわってほしいという思いで、仲間を募っているそうだ。

千葉氏に、メンバーがかかわる仕事の内容、魅力を聞いた。

「企業法務のミッションは、『真摯な正しさをベースに、ローリスクハイリターンを導く』です。契約法務、ガバナンス法務、戦略法務の3つの担当があり、契約法務は契約やアライアンスの実務、ガバナンス法務は取締役会や株主総会の運営、戦略法務はシナジーを拡大するための投資や法務デューデリジェンスを扱っています。現行のECに関する法律は、すでに商品がある状態での販売を想定してつくられています。そのためどうしても弊社のサービスが該当しない部分がでてきます。行政や弁護士に確認しながらビジネスを推進していかなければならず、苦労はありますが、それが逆に面白さでもあります。また、当社にはセクショナリズムがないため、他部署が主導するビジネスに、スタート段階から参画できることも大きな魅力だと思います」

購入者保護の最後の砦として力を尽くす

Makuakeはサービスの特性上、購入者の手元に商品が届くのは、早くても購入申請から数カ月先となる。また、“当初の計画を実現できなかった”といった可能性もゼロではない。それを防ぐ“最後の砦”となるのが審査法務だ。その業務を、審査法務・マネジャーの村上綾氏が説明してくれた。

「私たちはMakuakeで扱う全プロジェクトを審査します。具体的な手順は次の2ステップ。最初は実現性の確認です。プロジェクトが机上の空論になっていないか、必要な許認可をきちんと取っているか、食品衛生法、電気用品安全法など法律に違反していないかといった点をチェックします。次に表記の確認です。Makuakeのサイトのプロジェクトページに掲載される内容は、すべて広告に該当します。そのため景品表示法や薬機法など、広告関連の法律と照らし合わせて問題がないか審査します。さらに、生活者にとってわかりやすい表現になっているか、注意事項は記載されているかといった点も併せて見ています」

たとえ問題があっても、単純にNOを突きつけないのがポリシー。代替案を提示するなどしつつ、営業部門とともに最適解を探る。だが各プロジェクトは、対応する法律やガイドラインが異なるため、一つひとつ確認が必要。“見たことがない商品・サービス”のアイデアに戸惑うこともあるという。

「カーシェアのようなビジネスモデル『馬シェア』のプロジェクトを審査した際は頭を抱えました。動物愛護関連や道路交通法など、あらゆる法律を調べ、行政にも何度も確認を取り、ようやく答えに辿り着いたということもあります。サービスリリースから約9年が経ち、審査に関するナレッジは社内に蓄積されてきました。しかし前例だけでは対応できないケースもまだ多く、想像力や思考力が問われる毎日です」

仕事の魅力について尋ねると、村上氏は目を輝かせた。

「審査法務の仕事は、常に新規事業の立ち上げに関与しているようなもの。毎日新しいプロジェクトに出会える、刺激的な仕事です。私はこれまで、数社で法務を経験してきましたが、これほど多種多様なビジネスにかかわったことはありません。これこそ、新しいビジネス市場を切り拓いている、当社ならではの仕事の醍醐味。メンバーもみんな、『法務の最先端を走っている』と自負しています」

株式会社マクアケ
村上氏は北海道在住。東京の千葉氏とはオンラインでの週1回定例ミーティングのほか、メッセージングアプリも活用しながら、頻繁にやり取りしている

密な連携を前提に自由にリモート勤務

セクショナリズムがなく、風通しの良いことが特徴の同社。企業法務と審査法務も情報共有を頻繁に行っており、業務の進捗確認をはじめ、事業方向性の確認なども欠かさない。

「社員からの相談、社内外でキャッチした情報など、共有すべきことがあれば、すぐにビジネスチャットツールで連絡を取り合います。審査法務のメンバーから『株主総会に携わりたい』というリクエストがあった時は、一時的に企業法務の株主総会チームにメンバーを参加させてもらいました」と、村上氏。

千葉氏も「今後は、そのような企業法務と審査法務間での異動・人材交流も適宜行っていきたい」と語る。

働き方に対する考え方もフレキシブルだ。新型コロナ禍を経て、勤務形態は部署ごとの判断に委ねられるようになったという。

「企業法務は、週2日、メンバーが交代でオフィスに出社しているといった感じです」(千葉氏)

「審査法務は日数の縛りなく、リモートワークも出社も、メンバーが自由に選べるようにしています。メンバーは東京のほか東海にもおりますし、審査法務ではありませんが品質保証本部では九州地方在住の人もいます」(村上氏)

19年の上場後、同社の社員数は急増し、現在は180名ほどとなっている。新サービスのリリースや、アライアンスを次々と進めるなど、今後の事業展開も見逃せない。最後に、千葉氏と村上氏に、どのようなメンバーとともに働いていきたいか、うかがった。

「『生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現』というマクアケが揚げるビジョンに共感し、受け身ではなく自発的に行動できる人、“or”ではなく“and”で考えられる人と働いていきたいですね。当社のビジネスはまだ新しい分野であり、しっかり想像力を働かせて対応しなければ、予測もし得ないトラブルに見舞われる可能性もあります。例えば審査法務において、どれだけやっても100%事前対策ができたということは少ない。そのリスクを最小限とするために、“未来を予測した動き”が、私たちには常に求められるわけです。そのような変化や未来予測を楽しめる人なら、当社の仕事にフィットできるのではないでしょうか」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。