Vol.9
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THE LEGAL DEPARTMENT

#2

川崎重工業株式会社 法務部

オートバイから鉄道車両・航空機までの幅広い製品を製造する大企業で、法務部が果たす役割

事業拡大とともに増え続ける案件。法務部も人材補強に注力している

日本を代表する重工業メーカーである川崎重工業株式会社は1878年、造船から事業をスタートした。現在ではオートバイから、鉄道車両、航空機まで実に多彩な製品を製造しており、トンネル掘削機などインフラ関連製品も扱っている点が大きな特徴である。

また、同社の持つ企業ネットワークは大きく、関連会社を含めると国内外に「川崎重工グループ」として100以上の拠点を展開。この大グループへの法務支援は、どのように行われているのだろうか。現在、法務部長を務める安藤隆氏に仕事内容を説明していただいた。

「法務部に在籍する人員は19名です。業務内容では、取引一般の契約に加え技術契約を含めた契約支援業務が大きなウエートを占めています。また最近は、海外合弁事業や事業提携案件が増えてきています。私が入社した1977年当時は、月間30件ほどだった取扱案件数が、現在では倍以上に増加しました。その約半数が海外事案であり、ここ数年は人員拡充と組織のレベルアップに注力しています」

資格取得者を採用した理由。これからに期待すること

法務部は、新卒・中途採用と社内公募システムで人員を補強している。社内公募は、法務部で働きたい本人の希望とスキルを考慮し転属を決める。現在までに、中堅部員1名がこのシステムで転属している。また、中堅層が手薄なため、ここ3年で3名を中途採用した。昨年、2名中途採用したうちの1名は弁護士資格取得者だった。採用にはどういう意図があったのだろうか。

「中途採用に当たっては、短答式試験の合格または実務経験5年程度を目安に、コミュニケーション能力を条件にしていました。多数の応募がありましたが、特に注目した2名の優秀な応募者がいたのです。そのうちの1名が、弁護士資格を有していました。もちろん社内弁護士の存在には注目していましたが、当社での採用は少し先かなと思っていたのが正直なところでした。しかし『企業内弁護士として活躍したい』という彼女の熱意と素養に大きな可能性を感じ、採用に至りました。もう一人の採用者も知識・スキルに高い素地を持っています」

資格取得者に特に期待することは、一体どんなことだろうか。また今後、資格取得者の採用は増えていくのだろうか。

「基本的な法律知識・分析力は保証されています。その強みを十分に発揮してほしい。確かな社会倫理にも期待しています。企業法務はどうしても自社の立場に偏りがちなので、もしそういう場面に出合ったら客観的な指摘をしてほしいと思います。弁護士資格を持つインハウスロイヤーを初めて雇用しましたので、まだ手探り状態です。今後の採用に関しては様子を見ながら決めることになると思いますが、その意味でも先駆者が担う役割は大きい。弁護士会などの知脈・人脈から彼女が得た情報を共有させてもらって、一緒に方針を考えていきたいと思っています。ですから、国選弁護人としての活動も認めています。彼女の弁護士活動を応援することで、会社にもさまざまな情報をフィードバックしてもらえることに大いに期待をしています」

これからの法務部をどう牽引するかベテラン部長のかじ取りに期待

法務のスペシャリストとして30年以上活躍し、海外法律事務所研修や財団法人・海外子会社への出向を経験した安藤部長から見ると、まだ課題が多数あるという。

「関連会社を含めたグループ全体のリーガルマインドと法務対応力を底上げしたいと考えています。そのため、まず部内レベルアップを目的とした教育と人員計画を推進しています。ベテラン社員+中堅・新人のチーム制を導入し、メンバーを定期的に入れ替えることにしました。これにより、経験・知識・スキルの共有が図れて業務負荷も均一にできます。さらにもう少し大きなローテーションも考えていて、神戸本社に法務窓口を置くことや社内事業部門・関連会社に法務要員を供給することを検討中です。私自身、アメリカの子会社に出向した4年半で貴重な経験をしました。PL訴訟対応を担当し日米の裁判制度の違いを目の当たりにしたことが、海外拠点業務への理解につながっています。若い人たちにも、そういうチャンスを積極的に与えたいと思います。法務部の業務に法律知識を要することは当然ですが、高度の専門性が求められる部分は外部の専門弁護士を活用すればいいわけです。企業法務を担う法務スタッフとして、そういった外部弁護士を十分活用できる広い視野を持つ人材に育成しようと考えています」