<第2回:法律事務所コラム①>派遣社員として法律事務職員になる場合の勤務実態とは?
今回の法律事務所コラムでは、派遣社員として法律事務職員をされているNさんに勤務実態を伺いました。派遣社員という働き方を考えていらっしゃる方にはとても参考になる内容だと思いますので、ぜひご一読ください!
Q はじめまして!Nさんは現在、子育てを中心とする生活をされながら、派遣社員として週3日、9時30分から15時という時間帯で法律事務職員をされていらっしゃるそうですね。まずは、大まかな1日の業務フローを教えてください。
A はい、私の勤務する事務所では、9時30分が事務職員の始業時間となっています。出勤して最初にすることは、郵便物の確認と会議室フロアの整理整頓です。ゴミをまとめたり、備品のチェックと補充をしていきます。前日に事務職員が帰宅してから打合せがあった場合などはお茶出し用のグラスが残ったままになっていることもあるので、それを洗う作業もあります。このあたりまでをだいたい15分で終わらせています。
その後は、私の勤務時間外に弁護士から至急の作業指示が出ていないかを確認するため、メールチェックをします。私の働く事務所では、弁護士は外出していたり在宅で作業をしていることも多く、また、文章に残る形で指示を出したほうが事務職員も対応しやすいという配慮から、メールで指示が出ることが多いのです。メール以外に情報共有ツールも併用しているので、常にどちらも確認するようにしています。
至急の指示が出ていなければ、前日積み残した仕事をしたり、特に何も作業がない場合には先取りできそうな仕事を探して前倒しで進めています。この時もメールなどを気にしながら、何か弁護士から指示が出ればそちらを優先して対応するようにしています。時には郵便局や銀行、裁判所などに入金対応や書類送付手配、書類提出のため外出することもあります。特許関連の業務も扱う法律事務所であるため、外出先に「特許庁」がある点が他の法律事務所と比べた時の特色のひとつかもしれません。
このような作業を、昼休憩を挟んで15時まで行い、退勤します。残業は基本的にありません。
Q 詳細な業務フローを教えてくださり、ありがとうございます。弁護士からの作業指示に従って業務をおこなうとのことですが、具体的にはどのような作業を多く担当していらっしゃるのですか?
A 現在所属している法律事務所は、弁護士数が20人くらいで、企業法務を中心に、企業に関する一般民事事件も扱うというタイプの法律事務所です。このため、クライアントの企業様に対する請求書の発行が主な仕事です。請求先がたくさんありますので、この作業に多くの時間を費やしています。
民事の裁判案件では、期日が近くなると裁判所に提出する証拠の準備、送付の準備や、弁護士が作成した書面の誤字脱字・体裁チェックなどが短期間に発生します。これが請求書の発行日付近に重なるとかなり忙しくなりますので、弁護士のスケジュールなどを見ながら先を見越してできる作業を進めておくことも重要だと考えています。
Q これまで最も忙しかったのはどのような時でしょうか。
A 事務職員の人数が少ない中で業務が大量に発生した時は本当に大変でした。正社員として法律事務所で働いていた時のことですが、合併登記の申請と民事再生の申立てが重なって、連日夜10時くらいまで残業が続いた時期があり、今でも印象に残っています。
Q 新型コロナウイルスの感染拡大以降、リモートワークをおこなう会社も増えましたが、Nさんの勤務する法律事務所ではいかがですか?
A 弁護士はリモートワークをしていることもありますが、事務職員は基本的に出勤するのが原則です。フルタイム勤務の事務職員は一部をリモートにすることもあるようですが、私は時短で働いていることもあり、基本的には出勤して欲しいといわれています。
毎日届く郵便物の処理はどうしても出勤しないとできませんし、押印に必要な印鑑やファックス機器などは法律事務所にありますので、私が働くところに限らず、事務職員は出勤がメインとなっているところが多いのではないかと思います。
もちろん、子供の体調などの関係で一時的にリモート勤務をおこなうということは認められています。
Q Nさんは派遣社員として働いていらっしゃるとのことですが、待遇はいかがでしょうか?Nさんは正社員としてお仕事をされていた時期もおありですが、正社員と派遣社員ではここが違うなと感じるところはありますでしょうか。
A 正直なところ、今の職場に関しては、派遣社員と正社員との違いはあまり感じていません。派遣社員の方が待遇面で劣るということはないですし、積極的に業務に取り組めば正社員と変わりない仕事も任せてもらえます。
確かに、総合的な福利厚生や昇給賞与制度といった面では正社員の方がいいかもしれませんが、今は子育ての都合で週3日のみの時短勤務というところを厳守したいので、派遣社員であることのメリットのほうが大きいと感じています。正社員になる場合には、そのような勤務条件で雇用してもらうことは難しいと思いますから。
Q 派遣社員で働くか正社員で働くか迷っている方にアドバイスをお願いいたします。
A 結局は、「何を重視するか」ということだと思います。雇用の安定性や定期的な昇給制度などという点を重視するのであれば正社員を目指すのがよいと思います。一方、私のようにフレキシブルな働き方を重視するのであれば派遣社員がオススメです。
また、法律事務所においては、派遣社員であっても、「指示待ち」のスタンスではなく積極的に取り組めば多くの業務を任せてもらえることが多いと思います。派遣社員から始めていずれは正社員になりたいと考えているのであれば特に、積極的に業務に取り組んで経験を重ねていかれるのがよいと思います。
Q ありがとうございました。派遣社員で働かれている方の業務が具体的にイメージできるお話しだったと思います。Nさんはこれまで多数の法律事務所や企業で働いたご経験がおありですので、次回は企業と法律事務所の違いや、法律事務所の中でも企業法務系法律事務所と一般民事系法律事務所の違いなどを詳しく伺っていきたいと思います。次回もよろしくお願いします!
A はい、よろしくお願いします!
記事提供ライター
社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。
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第2回:法律事務所コラム
②>法律事務所と一般企業における待遇の違いは?
③>企業法務系事務所と一般民事系事務所における事務職員の業務の違いとは?
過去のコラムはこちら
第1回:法律事務所コラム
①>法律事務所ってどんなところ?
②>法律事務職員のお仕事は?
③>法律事務所での仕事のやりがいとは?
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