<第2回:法律事務所コラム③>企業法務系事務所と一般民事系事務所における事務職員の業務の違いとは?

【企業法務系事務所とは】
主に企業(法人)のビジネスに起因する法的問題を扱う法律事務所を指します。契約書の作成・チェック、契約交渉、紛争対応、株主総会対応、知的財産関連業務、M&A対応、危機管理・予防法務などの業務があります。

【一般民事系事務所とは】
市民の日常生活から生じる問題を幅広く取り扱う法律事務所を指します。金銭トラブル、交通事故、労働問題、離婚問題、相続問題などが中心で、離婚や相続といった家庭内の法律問題は、一般民事事件と区別して「家事事件」と呼ぶこともありますが、一般民事系法律事務所の大多数はこれらも扱っています。

Q それでは、一般民事系法律事務所と企業法務系法律事務所の両方でのご勤務経験を振り返って、それぞれどのような特徴があるかを教えてください。

A 企業法務案件は基本的に会社とのお付き合いになりますので、企業法務メインで扱っている法律事務所で勤務する場合、法律事務所の雰囲気や業務内容も会社勤めをしているのとあまり変わらないような印象です。企業法務系の法律事務所でも、顧問先の企業に関する訴訟案件などは行うことがありますが、全体の業務割合からすると裁判案件は少数に留まることが多いと思います。勤務している法律事務所では、事務職員の業務としては請求関連業務が中心です。

これに対して、一般民事案件、特に裁判案件が増えると、裁判所とのやりとりが発生するようになります。裁判所に出す書類は独特で、その体裁を整える作業なども事務職員の担当業務になりますが、このあたりは法律事務所ならではの業務といえるでしょう。

Q 企業法務案件と一般民事案件では、対応する事務職員のスタンスも変わってくるものでしょうか。

A そうですね、企業法務は、会社が相手ということもあり「ビジネス」をしているという感覚が強いです。私の場合、請求業務を任されたことで、請求金額の大きさから自分の業務の責任の重さを感じるようになりました。また、自分の仕事が日本経済を動かす一端を担っていると思うと、そのような重大な仕事を任せてもらっていることをありがたく思うと同時に、身が引きしまる思いです。

それから、企業法務案件に関わるということは企業の内部事情を知るということでもあるので、企業秘密を守るという点には特に気を遣っています。例えば、外にランチをしにいったときにうっかり担当案件の企業名などを出してしまうといったことのないよう、情報の取扱いには細心の注意を払っています。ご自身やご家族が株取引をしている場合は、インサイダー取引にならないように注意する必要もあります。

一方で、一般民事系法律事務所の場合(特に個人の方の案件の場合)は、「感情」という側面が強いです。企業法務系法律事務所に比べていろいろな意味で「人間味」や「人柄」といった要素が強いため、事務職員の立場であっても、依頼者の方に寄り添って業務をすることを意識しています。目の前の困っている人の役に立ちたい、という素朴な正義感が突き動かされる感覚です。問題が解決し、依頼者の方が喜んだりほっとされているのを見ると嬉しく思います。

一般民事系法律事務所での勤務では依頼者が最初に来所された時と先生と話をしたあとの晴れやかになった顔の変化が忘れられません。私自身は直接やり取りをしているわけではありませんが、そのようなことを目の前で経験したことにより、弁護士のフォローを今以上に的確に行おうという気持ちになりました。依頼者一人一人により依頼内容は違うため、その内容に沿ったフォローをすることで、弁護士の役に立てることへの誇りと専門分野の知識・経験が増え自分の成長を感じられました。

企業法務系法律事務所と一般民事系法律事務所ともに、専門的な知識を得て経験を積むことにより、人生のイベントがあった際のブランクがあったとしても法律事務所への復職がしやすく、長期的な就業ができるという点も法律事務所を希望する方へのメリットとして挙げられると感じています。

Q それぞれにやりがいや達成感が感じられるということですね。Nさんは、法学部のご出身で行政書士の資格もお持ちですが、その点が業務にプラスになっているという側面はどのくらいありますか?

A 現在の仕事では、行政書士の資格を活かす機会はありませんが、所内には行政書士として登録して資格を活かしている人もいるので、将来のキャリアアップの励みになっています。私もゆくゆくはフルタイム勤務として資格も活かしながら働いていければと思っています。

法学部出身という点については、確かに法学部で学んだ知識が役立っている部分があると感じます。例えば、裁判手続や差押えの申立などは、法律用語の意味や手続きの流れを知っているので、初めから業務内容が理解しやすかったです。もっとも、このような知識は就職してから業務を通して身につければよいことであり、法学部出身でないことがハンディキャップになるとは全く思いません。実際、法学部出身でない事務職員の方が多いと思います。

Q 法律事務所で働くのが向いている人というのはどのような人だと思われますか?

A 真面目な方、細かいところまできっちりと見ることができる方が向いていると思います。専門的な業界というイメージがあるかもしれませんが、やっていることは通常の事務スタッフとしての業務とそれほど大きな差はありません。先ほども申し上げたとおり、必要な法律知識は業務を通して身につけることができます。先輩事務職員もサポートしてくれますので先入観を持たずにチャレンジして欲しいです。

私は結婚後10年間仕事をしていませんでしたが、それだけのブランクがあっても就職に不利になったとは感じませんでしたし、ライフワークバランスを重視した働き方をすることができています。少しでも興味のある方は、ためらわず飛び込んでいただきたいと思います。

Nさん、ありがとうございました。派遣社員や正社員といった働き方による違いや、法律事務所の取扱分野による事務職員の業務の違いについて、その一端を垣間見ることができるお話しだったと思います。

法律事務所は規模も取扱分野も様々ですので、法律事務所ごとに雰囲気や任される業務の内容、忙しさは異なります。今後も様々な法律事務所で働く事務スタッフの方にインタビューをしていきますので、ぜひ次回以降のコラムもご一読ください!

記事提供ライター

社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。

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