<第2回:法律事務所コラム②>法律事務所と一般企業における待遇の違いは?

前回のコラムでは、派遣社員としての法律事務所勤務の実態をお伝えしました。お話しを伺っているNさんは、現在の法律事務所に就職するまでの間に、複数の士業事務所や一般企業の勤務を経験してこられました。今回は様々な職場環境を知るNさんに、一般企業と法律事務所の違いについてお尋ねします。

Q それでは、Nさんのこれまでのご経歴について教えてください。

A 大学卒業後、最初に就職したのは、いわゆる「士業」とは関わりのない職場でした。
そこで働きながら行政書士を取得し、資格を活かせる職場を探して、司法書士事務所で勤務するようになりました。
司法書士事務所では派遣社員として働いていましたが、勤務するうちにやはり正社員で働きたいと思うようになり、正社員として雇用してくれる法律事務所へ移籍しました。その法律事務所はいわゆる債務整理の多い法律事務所で、弁護士数も多かったため、弁護士との距離が遠いように感じ、1年くらいの勤務を経て、もっと弁護士との距離感の近い小規模の法律事務所に移りました。こちらも債務整理や民事事件を中心に扱う法律事務所でした。

ここでは長く働こうと思っていたのですが、私が事故で数ヶ月の療養が必要となったときに、「そんなに長く休まれると困る」ということで、辞めざるを得ない状況になってしまいました。この経験を通して、休業制度が確立していないと何かあったときに立場が弱いと感じたので、身体が治ったあとは福利厚生のしっかりしている一般企業で正社員として勤務する道を選びました。
一般企業で2年ほど働いたあと、再度法律業界に戻って、今度は15人くらいの規模の法律事務所に所属しました。ここには企業法務系の弁護士と民事系の弁護士が所属していて、最初は企業法務系の弁護士の担当をしていましたが、その後の配置換えで、司法書士や民事系の弁護士の補助をしていました。ここで3年半ほど働き、結婚を期に退職しました。

結婚後10年ほどは家事や育児に専念していましたが、2021年の秋にC&Rリーガル・エージェンシー社に派遣登録し、再度働くことを決めて今に至ります。現在の法律事務所での勤務内容は、コラム①でお話ししたとおりです。

Q ありがとうございます。Aさんが士業事務所と一般企業を経験してみて感じた大きな違いというのはどういった点でしょうか。

A 一般企業と法律事務所では、事務スタッフの働き方に大きな違いがいくつかあります。例えば、法律事務所の場合は、四大法律事務所ほどの規模でもない限り部署異動は基本的にありません(そもそも「部署」が存在しません)。また、事務職員として入所した後に経験を積んでパラリーガルになるということはあっても、係長・課長・部長といったように経験に応じた地位が用意されているわけではなく、昇進・出世という概念にあまり馴染まないという点も特徴かと思います。

また転職先の企業は福利厚生が充実しているなと感じました。転職のきっかけとなった休職制度についてもしっかり定められていました。
ただ、これは士業事務所と一般企業の違いというよりは、組織の規模による違いともいえるのかもしれません。小規模法律事務所は事務職員も1~2名というところが多く、一人ひとりが長期間働けないとなると法律事務所全体の業務が滞るのは明らかなので、制度というより現実問題として一人の人が長期間休むというのは難しいのかなという気がします。

Q なるほど。ご指摘のとおり、組織の規模による部分も大きいかと思いますので、一概には言えないかもしれませんが、一般的に法律事務所の正社員の福利厚生というのはどのようなものなのでしょうか?

A 法律事務所によって本当にまちまちだと感じます。規模だけでなく、代表弁護士の考え方によるところも大きいかもしれません。現在働いているところは健康保険も加入できますし、育児手当も出してくれていると聞きました。一方で、自分で国民健康保険に入ってねという法律事務所もあります。

派遣社員として勤務する場合、福利厚生は派遣会社が担当するため、法律事務所でどのような福利厚生があるかはあまり関係しませんが、正社員として働く方は、採用前の段階で必要な点を確認しておくとよいかもしれません。特に子育てや介護をされている方は、不安に思っていることを率直に伝えて、事前に業務体系や福利厚生についての摺り合わせをしておいた方が、採用後のトラブルを防いで長く務めることができると思います。

ありがとうございました。今回は、法律事務所と一般企業の違いについて、福利厚生の点を中心に,ご経験を元にお話ししていただきました。次回は法律事務所固有の話に戻って、企業法務系事務所と一般民事系事務所で事務職員の仕事内容はどのように違うのかを伺いたいと思います。

記事提供ライター

社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。

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