Vol.50
HOMEスペシャルレポート知的財産教育協会 Fashion Law Institute Japan(ファッション・ロー・インスティテュート・ジャパン)
  • ご意見・ご感想はこちら
  • 無料 転職支援サービスに今すぐ申し込む
  • 無料メンバー登録 将来のために情報収集をスタート
  • 弁護士や法務の転職・求人情報なら弁護士転職.jp

#11

SPECIAL REPORT

#11

ファッションビジネスに関する知財の保護制度を調査研究・教育。業界を巻き込み最適なバランスを模索

Fashion Law Institute Japan

ファッション・ローとはファッション業界で活動する人々の権利保護を目的としてアメリカで生まれた学問で、日本では2015年に知的財産教育協会内の団体として「Fashion LawInstitute Japan(FLIJ)」が発足している。事務局長と研究員、知的財産教育協会事業部長に団体の活動内容や目標について語っていただいた。

権利侵害の訴訟対策として誕生

――そもそもファッション・ローとは?

金井:2000年頃から、アメリカでは衣服などのデザインの模倣が急増し、ファッション関係の訴訟も増えました。背景にあるのが①ITを中心とする技術の進展、②ファストファッションの拡大、③LVMHなどファッションコングロマリットの台頭です。特に①の出現前は、パリコレなどで有名ブランドから新作が発表されても、その影響を受けた服が市場に出るまでに時間がかかっていましたし、技術的な理由もあり、似たような服でもそっくり同じというわけではありませんでした。しかし、今ではファッションショー会場内でスマートフォンを使って撮影した画像データを工場などに送信し、すぐ大量生産することも可能。実際に、ファストファッション分野を中心に、有名ブランドの新作発表直後にそっくりな商品が世界中で販売されるという状況が起きています。この対策に本腰を入れて取り組もうと00年代に生まれたのが、ファッションビジネスに関連する法律を指す「ファッション・ロー」という概念です。06年、ニューヨークのフォーダム大学ロースクールでファッション・ローの授業がスタートし、現在では複数のロースクールだけではなく、各地のファッションスクールでもファッション・ロー教育が実施されています。

――FLIJ設立の経緯を教えてください。

金井:14年にフォーダム大学ロースクールでファッション・ローの授業に参加して学んだ際、日本でもこの活動が必要になると感じました。そして帰国後、知的財産教育協会内にFLIJを立ち上げたというわけです。

――なぜ知的財産教育協会内に立ち上げたのですか?

近藤:知的財産教育協会は、知的財産管理技能検定という国家試験の実施・運営を主たる事業としている一般社団法人です。この検定は、知的財産に関する専門的知識を有する人材の養成および資質の向上を図るために実施しています。当然、ファッション業界でも知的財産の保護は重要な課題ですし、当協会の活動とも関連性が高い。そういった観点で、FLIJを協会内の一活動として、リソースを提供することとなったのです。

調査研究と教育2つの活動

――FLIJの具体的な活動をお聞かせください。

中川:現在は、大きく分けて調査研究と教育の2つを主に展開しています。前者では、国内外におけるファッションの法的保護に関連する判例などの情報を集めたり、海外の法制度・実務を調査するなど、会員企業の皆さんと共に、ファッションデザインの適切な保護のあり方について検討・研究を重ねています。後者では、ファッション・ローに関するセミナーや勉強会を開催し、具体的な事例を元に法律を利用してファッションデザインやブランドを保護する方法を紹介したり、ファッションビジネスの現場で働く方々と意見交換・議論を行うことで、知見を共有しています。過去に開催した無料セミナーの参加者は100名を超え、関心の高さがうかがえました。セミナー参加者は業界で働く方々が中心ですが、学生や弁護士などの法律実務家もいらっしゃいます。

金井:例えば今、アメリカでは若手デザイナーの斬新なデザインを大手企業が模倣するトラブルも起こっています。個人デザイナーは権利侵害で訴えたくても訴訟に莫大なお金と時間がかかるので、泣き寝入りを強いられることが多く、こういうことが続けばデザイナーの創作活動が阻害されてしまう。そんな事態を防ぐためにクリエイターを保護する制度が必要なのですが、保護が強過ぎると今度は新しい作品が生まれづらくなる。そのバランスが非常に難しいのです。

中川:例えばこの辺りまではセーフ、この辺りからはアウトという大まかな線引きだけでも業界全体で共有できれば、ファッションデザインの保護と自由なクリエイションの領域の確保とのバランスがある程度実現され、無用な紛争が減ると思います。その際の線引きは明確な一本線で白黒をはっきりつけるのではなく、グレーの濃淡によるグラデーションでもいい。それが共有されるだけでも、適切なバランスを目指すうえで大きな意義があると考えています。

金井:そのために国内外の一つひとつの事例を地道に収集、調査、研究して、より多くの業界の方々と一緒に結果を発信、共有、啓発していきたいのです。

一消費者にも啓発。政府に政策提言も

――FLIJの今後の目標を教えてください。

中川:学生向けの講義を含め、ファッション・ロー教育の場を増やしていくこと。また、さらに海外の情報を収集し、研究していきたいです。これらの活動を継続・拡大しながら、権利保護と自由なクリエイティブとのバランスがとれた、よりよいファッションカルチャー創出に貢献できればと思っています。

金井:消費者にも、安価だからと模倣品を買うことがデザイナーの新たな創作を阻害し、結果、新作が生まれづらくなることも伝えたいです。企業からは、ファッション・ローという観点で現在どんな問題を抱えているのかなど、多くの具体的事例や意見を聞きたい。将来的には中川先生のようなファッション・ローに精通する弁護士を増やし、専門的知見を交互に提供し合うことで、つくる側の権利保護と自由なクリエイションが両立する適切な制度を考案し、政府に提言できればと考えています。