弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

長崎県弁護士会

長崎県弁護士会 会長 永田 雅英氏

全国有数の弁護士過疎の解決と公的活動に一致団結して取り組む

裁判員裁判制度の広報は法曹三者が強力に連携

県の総面積のおよそ半分を占める約600もの島々が、南北300kmにわたって広がる長崎県。長崎県弁護士会には現在約100名の弁護士が所属するが、7つの支部と3つの独立簡裁のうち、4支部・2簡裁が離島に点在。支部管轄区域内に「ワン地域」が4カ所もあるという全国有数の弁護士過疎県である。本年度、会長を務める永田雅英氏に、会が抱える問題や今後の課題についてうかがった。 現在、当会が特に力を入れていることは、間近に迫った裁判員裁判制度の実施準備、被疑者国選弁護制度の対象拡大への対応準備、そして弁護士過疎対策が挙げられます。小規模な単位会であるがゆえに、いずれも少ない予算と人数で対応することが強いられますが、それでもさまざまな工夫を施し、課題解決に努めています。 裁判員裁判への対応内容としては、主に受任弁護士の確保、新しい裁判に求められる法廷技術のトレーニング、市民への周知徹底があります。ただし受任弁護士の確保については、さほど心配はしていません。なぜなら、裁判員裁判の対象となる刑事事件は県内に年間数十件程度と推定され、100名の会員で十分に対応できる見込みがあるからです。けれども、新しい裁判に求められる法廷技術については、ベテランの弁護士から少々敷居が高いとの意見も上がっています。確かに、裁判員裁判にはパワーポイントを使ったプレゼンテーションや一般の裁判員にわかりやすい口頭説明など、これまでにない法廷技術が求められています。しかし私は、「裁判の本質は不変で、むしろ人生経験を積んでいるベテランの弁護士の方が、裁判員に対して説得力のある話ができる」と考えています。そこで、パソコンの操作などを得意とする若手と経験豊富なベテランが、チームを組んで裁判に向かえるような仕組みづくりを検討しているところです。 同時に、裁判員裁判の円滑な遂行には、十分な広報活動が必要です。しかしながら、そのための予算が少ない当会では、他の単位会以上に地裁・地検と連携して市民への周知徹底に取り組んでいます。例えば、交通が不便な小値賀(おぢか)島など離島へ裁判官や検察官とともに赴いて地元高校生参加型の模擬裁判を行ったり、長崎ではある喫茶店に法曹三者が順次訪問して出前の勉強会を開いたりしています。また、企業などの顧問を引き受けている弁護士には、そこの従業員が安心して裁判に参加できる就業規則の策定などについて、顧問先企業への積極的な助言・サポートを要請しています。

弁護士過疎地区には法テラスなどの拡充が急務

被疑者国選弁護制度の対象拡大への対応については、正直、頭の痛いところです。先に述べたように、長崎県は離島が多く、移動には大きな負担がかかります。そこで、離島などの弁護士過疎地域で被疑者が逮捕・勾留され、その後長崎本庁で起訴された場合は、本庁管内の会員とリレー方式で対応する複数選任制の導入を考えています。 こうした課題要因の一つが、弁護士過疎の問題です。当会では1998年4月に、離島では全国初の法律相談センターを五島に開設したのを皮切りに、対馬と壱岐に弁護士派遣型の公設事務所である弁護士センターを開設(その後、いずれも法律相談センターに改称)。さらに島原、平戸にも法律相談センターを設置しました。しかしながら、8つある本庁・支部地区の半数は、いまだに「ワン地域」。新年度には、これらの地域に新たな弁護士が着任する予定ですが、それでも弁護士不足は解消できそうにありません。 医療の世界では、全国的な医師不足が問題になっていますが、法曹界もそれと全く同じ構図にあります。離島などの弁護士過疎地域で開業する弁護士がいても、その後の経営を自力で成立させることは相当に困難なことです。すなわち弁護士過疎を解消し、県内の隅々まで行き渡る法的サービスを提供していくには、弁護士個人の使命感だけに頼っていてはいけないということ。経営の採算を気にせず、日々の活動に専念できる法テラスや「ひまわり基金法律事務所」といった公的施設の拡充を図る必要があるのです。

会員の法律事務所を市民の相談の場に活用

長崎県特有の活動としては、原爆被害者や炭鉱じん肺・造船じん肺被害者の救済支援が挙げられます。こうした社会的に意義のある大型の訴訟事件について、当会の会員はほぼ全員が関与。弁護団を結成し、長年にわたって被害者救済のために取り組んできたという自負があります。 また10年ほど前からは、会員が交代で市民の飛び込み型の法律相談に応じる「民事当番弁護士制度」を実施しています。相談の場には、裁判所の半径100m圏内に集中している会員の事務所を活用し、特別に法律相談センターを新設しなくても市民への法的援助の補完・実施に役立てながら、法律事務所の敷居を下げるなどの効果を発揮しています。 ほかにも、当会では台湾の台南弁護士会と姉妹会の関係を結び、毎年それぞれの会員が交換訪問を行っています。取調べの可視化や家庭内暴力への取り組みなどは、台湾の方が先行していることもあり、彼らから学ぶことも多々あります。ちなみに台南弁護士会との交流は、中国の明末・清初の武将で、人形浄瑠璃『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』のモデルにもなった鄭成功(ていせいこう) が長崎県の平戸で生まれ台南で没したことが契機になっています。 最後に一つ、当会の自慢を述べさせていただくと、非常に真面目な会員がそろっているということです。そうでなければ、1000人以上の会員を擁する大単位会が行う多種多様な会務を、約100人の会員でこなすことはできません。なかには、「多重会務者」などと自嘲する人もいますが、我々はそれが弁護士としての責務であると考えています。これから、弁護士の世界も競争の激しい時代を迎えると思います。それでも当会は他の単位会に負けないよう、公的な活動にも一致団結して取り組む覚悟です。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 長崎市栄町1-25 長崎MS ビル4階
  • http://www.nben.or.jp/
  • ● 法律相談センター
  • 【長崎県弁護士会法律相談センター】
  • (長崎市)
  • 長崎市栄町1-25 長崎MS ビル4階
  • (佐世保市)
  • 佐世保市島瀬町4-12 シティヒルズカズバ2階
  • 【五島法律相談センター】
  • 五島市池田町1-2 福江文化会館
  • 【しまばら法律相談センター】
  • 島原市高島2丁目7217 島原商工会議所
  • 【ひらど法律相談センター】
  • (平戸会場)
  • 平戸市宮の町648 宮の町コミュニティーセンター・ コメルシオ(松浦会場)
  • 松浦市志佐町浦免1110 松浦市文化会館
  • ● 会員数
  • 弁護士数101人 法人会員3法人 
  • (2008年11月30日現在)