各課メンバーに、仕事内容をうかがった。まず、佐藤美緒氏から。
「当社では今年度より、幼児から高校生向けのオンラインならいごとサービス『チャレンジスクール』を新規事業としてスタートしました。ダンス、そろばん、プログラミングなどをオンライン上で学ぶサービスです。同時並行で何ジャンルものリリースを進める必要があり、スピーディに対応を考えていく必要がありました。従来の通信教育事業とは異なり、多様なアライアンスパートナーと協業するビジネスモデルで、新設された事業部門には様々なバックグラウンドを持つメンバーが集結。彼らと事業リスクの抽出などを行い、パートナーとの交渉の進め方、契約条件の設定、お客さまへの告知など、細かな点までアドバイスしています。当該事業部門と同じフロアに席を置いていることもあり、みなさんはよく相談に来て、我々からも『あの件はどうなりました?』と。そうしてコミュニケーションを取ることで、部門特有の課題が見えてくるという効果がありました」
また佐藤氏は、カンパニー戦略推進部門と共同で、この事業部門専用の研修を企画。ほぼ週1回のペースで実施している。
「特定の部門に向けて、ここまで継続的に実施する研修というのは初の試みでしたが、その事業で起こり得るリスクを想定したリアルな内容にしています。特定の部門の悩みに寄り添い、解決していくことにより、実践的な知識の底上げに貢献できたと思います。実情に照らした効果的なサポートができますし、相手の喜ぶ顔も見えてやりがいがあります」(佐藤氏)
国際法務・知財課課長の植村健氏は、海外現地法人への赴任経験がある法務部員の一人である。
「私が中国の現地法人に着任したのは2011年です。中国における事業が急拡大して法務案件が増大し、日本本社とのガバナンス連携強化が必要になるとともに、当社キャラクター製品の偽物が出回るなどしたため、現地の法務体制の整備が必要と判断され、赴任することに。私と中国人スタッフの2名でスタートし、少しずつスタッフが増え、最終的に現地法人内に法務部が設置されました。言葉や考え方の違いをお互い受け入れながら、相互に理解を深め、事業の成長とともに、組織を強化していく貴重な経験を積むことができました。また、法務関連業務だけではなく、ISO27001の取得プロジェクトの責任者を務め、経営企画業務に携わるなど専門領域外の業務にも挑戦する機会も得られました。当時、まだ若かった自分を抜擢し、派遣してくれたことに感謝しています」
猪狩勇人氏は、大手法律事務所出身のバックグラウンドを持ち、新規事業開発、海外案件や、M&A・出資案件、トラブル対応、組織変革プロジェクトなどを担当する。
「新規事業開発はインキュベーション期から関与するので、非常にやりがいがあります。その検討においては、『そもそもどんな事業が顧客に“刺さる”か』『どんなビジネスモデルであれば法令に抵触せず、かつリスクを抑えて展開できるか』『どのようなオペレーションを構築すれば確実かつスピーディに事業展開できるか』などについて、事業担当者や財務・経理・税務部門などと何度もディスカッションを行い、コンプライアンスやリスクマネジメントの観点だけでなく『どうすれば事業が成功に最も近づけるか?』を常に考えて仕事をしています。そのように踏み込んで、事業部門や他部門とともにゼロから事業をつくっていけることが醍醐味です。また、社会・事業環境などが日々複雑化していくなかで、法務としての専門性はもちろん、事業への理解をより深め、財務・経理・税務といった分野の知識もより高めていかなければいけないと、日々の仕事を通じて感じています」
菅沼部長は言う。
「海外案件や新規事業の立ち上げでは、法規制や契約リスクのみならず『社会やお客さまのためになるものか』という自問自答を経て、そのうえでビジネススキーム自体の検討を行うことが重要。そこに知恵を絞った経験は、必ずその人の糧になる。法務知識を軸として、どんどん“横幅”を広げていく――それが、我々の目指す法務人材のキャリアパスの一つです」