Vol.86
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法務統括部のメンバーは全世界で108名(2023年9月末時点)。日本所属の弁護士は日本法弁護士7名と、米国、ニュージーランド、フィリピン、台湾、オーストラリアの有資格者が各1名ずつ(国外は大半が有資格者)。うち10名が中途入社者で、国内大手や外資系法律事務所、大手企業法務部の出身者が多い

法務統括部のメンバーは全世界で108名(2023年9月末時点)。日本所属の弁護士は日本法弁護士7名と、米国、ニュージーランド、フィリピン、台湾、オーストラリアの有資格者が各1名ずつ(国外は大半が有資格者)。うち10名が中途入社者で、国内大手や外資系法律事務所、大手企業法務部の出身者が多い

THE LEGAL DEPARTMENT

#139

ルネサス エレクトロニクス株式会社 法務統括部

変化のスピードが著しい半導体業界。迅速な対応で事業の成長をサポート

ワン・グローバル・リーガルを掲げる

日本を代表する半導体メーカーとして、世界中の企業に半導体ソリューションを提供しているルネサス エレクトロニクス株式会社。自動車および産業、インフラ、IoTの分野を集中領域としているが、とりわけ自動車向け半導体とマイコン分野においては世界トップレベルのシェアを誇る。元々は、日立製作所、三菱電機、NECを母体として設立された同社だが、近年は国外でのM&Aを積極的に進めており、米国のアナログ半導体の大手、Intersil社やIDT社、さらに英国のDialog社を子会社化したことで、世界をリードする“組み込みソリューションプロバイダー”としても、大きく飛躍している。法務統括部は、契約、商事紛争、ガバナンス、コンプライアンス、M&Aなどの一般的な企業法務に加え、知的財産や貿易コンプライアンスの分野をカバー。テクノロジー企業の要となる特許などの知的財産業務と半導体技術の輸出規制に関する業務を一体かつグローバルでサポートする体制が整っている。

同部のミッションを、統括部長の本間隆浩氏は次のように話す。

「半導体業界は変化が早く、競争も激しい非常にアクティブな業界です。そうしたなかで迅速な意思決定をサポートし、会社のグローバルな成長を支えることがミッションです。全従業員が共有する『ルネサス・カルチャー』では、Transparent、Agile、Global、Innovative、Entrepreneurialの5つの要素を掲げており、当部が率先してこれらの価値の実現をリードしていきたいと考えています」

また、同部では「ワン・グローバル・リーガル」をスローガンに、地域や部門の枠にとらわれないオープンなコミュニケーションや協力関係を通じて、あらゆる課題に対して柔軟かつ効果的に対応することを基本姿勢としている。

グローバルメンバーとのミーティングの様子。社内のドキュメントは基本的に英語であり、メンバー同士も英語でコミュニケーションする機会が多い

事業部門との距離が近く、主体的に議論を重ねる

同社ならではの仕事の進め方について、本間氏に聞いた。

「例えば、M&Aにおけるデューディリジェンスは、外部の法律事務所との役割分担を明確にしたうえで、我々自身も徹底的に深掘りします。M&Aチームのメンバーは米国にいますが、知的財産や貿易コンプライアンスなど、案件に応じて様々な部門のメンバーでタスクフォースをつくり、法務全体のプロジェクトとして進めます。知財部門が主体となって、事業部門や法律事務所と直接ディスカッションしつつ、対象会社の知財を分析することも多々。そうすることで、より精緻な投資判断や契約交渉が可能となるだけでなく、各担当部門が対象会社について検討段階から深く理解しているため、買収からPMIまで一気通貫に対応できるメリットがあります」

“ビジネスの現場”との距離は近く、同部が事業部門のトップと直接コミュニケーションを取りつつ事案を進めていくケースも非常に多いという。本間氏が印象に残っている案件について話してくれた。

「欧州でのある重要な契約交渉に際して、日本・米国・欧州にいる事業部門の幹部、私と現地の法務の責任者が一堂に会し、成功に導いたケースがありました。ビジネスサイドと法務の距離の近さだけでなく、誰もが地域や分野の枠にとらわれず、常に主体的に関与しながら物事を解決していきます」

外資系法律事務所から転職してきた田子晃氏は、「社内コミュニケーションの機会、密度の濃さに、おどろきました」と言う。

「法律事務所の弁護士には、法務部などの担当者があらかじめ問題点を“交通整理”したうえで相談にきてくれます。ですから弁護士としての自分は、フィルタリングされた事実関係に基づく相談内容について、法的な見地に従ってアドバイスを行えばよかったわけです。しかし事業会社では、あらゆる相談がダイレクトに、なおかつ“生煮え状態”で持ち込まれます。日々、相談者と喧々諤々議論し、時には法的な観点に限らず案件自体を正しい方向にリードすることも必要になります。しかも、我々のアドバイスによって会社の業績が左右されるのですから、責任感とやりがいが非常に大きい。密度の濃いコミュニケーションを通じて、ビジネスに伴走するという、まさに、インハウスローヤーの仕事の醍醐味を味わっています」

同社の現在までの道のりは平たんではなかった。2010年の3社統合時に統合契約の交渉業務などを担当した橋口幸武氏が、当時を振り返る。

「統合に必要な合併・増資を株主総会の特別決議で承認いただくための株主への説明の準備がとても大変だったのを鮮明に覚えています。それに輪をかけたのが、翌年の東日本大震災です。主力工場の一つが深刻な被害を受け、経営状況が一気に悪化。当時の産業革新機構(現INCJ)などから出資を受けるかたちで再生に取り組んだのですが、これも特別決議に……。再編計画を進めたことなども合わせて、非常に苦労しました」

今年の株主総会では、いち早くバーチャルオンリー方式を導入し、好事例としてメディアにも取り上げられた。「前例がないという理由だけで、やらないという選択はしません。案件を実現するために、法令や実務上の課題があるなら、どうすれば解決できるかを検討します。これも、当社ならではの仕事の進め方かもしれません」と、橋口氏は話す。

事業の成長に向け、常にできることを模索

風土については「良い意味でベンチャー」と、本間氏。

「現状に満足することなく、変化をおそれずに、より高みを目指してチャレンジしていこうという意識を会社全体に感じます。それは我々法務統括部のマインドにも浸透しています」

メンバーの相当数を中途入社者が占める同部。外から新しいメンバーが加わることで、組織の活性化が進んでいるようだ。

「誰もがフラットに話せる環境で、私のような転職者の意見や気づきを部のメンバー全員が歓迎してくれますね。これまで部内で積み重ねてきた各自の知見と、当社にとってはフレッシュで改革的に映る転職者の視点をうまくミックスしながら、新しい組織風土を醸成していると思います」(田子氏)

今後の目標を本間氏は「一体性と柔軟性のさらなる強化」と話す。

「部門間や地域間のやり取りをさらにスムーズ、かつ迅速にしていきたいと考えています。そのためには、メールやテレビ会議・チャットだけでなく、ナレッジの共有やコミュニケーションを促進する部内SNSや、AIなどの最新ツールも活用して、もっといろいろな情報を気軽にシェアできる環境にしていきたいです。そのために、まだまだやれることはたくさんあると思っています」

組織の成長のためには、個人の成長も欠かせない。マネージャーとの1on1に加え、四半期ごとのグローバルミーティングでは、各部門の業務状況の共有だけでなく、社内外のゲストスピーカーによる講演、若手メンバーによる個別案件の発表などの機会を設ける。外部の法律事務所の協力のもと、基本的な法務知識や国内外の最新の法規制・実務の動向などを学ぶためのレクチャーも頻繁に開催しているという。最後に、同部のメンバーの特徴を、三氏にうかがった。

「他部署と垣根をつくらず、プロアクティブな行動が取れ、『事業発展のために法務に何ができるのか?』を柔軟に発想し、自由に議論できる仲間が揃っています」(橋口氏)

「当部はダイバーシティにあふれた組織。クロスボーダー案件も、国際的なコミュニケーションの機会も数多くあります。また、半導体業界は日々新しいことが起こるダイナミックな業界ですから、新しいことを学び続ける意欲があるメンバーが多いですね」(田子氏)

「会社の事業がグローバル・ボーダーレス化するなかで、地域や部門の“枠”にとらわれない法務のサポートが求められています。さらには、いわゆる戦略法務やESG・サステナビリティなど、典型的な『法務』といった固定観念の“枠”自体を超えた活躍の場も生まれています。このような環境のもとで、柔軟で主体的な発想に基づいて、事業の成長に貢献し、また、自身の成長を楽しめるメンバーが揃っていると感じます」(本間氏)

同社では、リモートワークが選択できるほか(部内には関西在住者も所属)、“外国に滞在して一定期間業務可能”という、自由な働き方や働く場所を制限しないための独自の制度がある