弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

山口県弁護士会

山口県弁護士会 会長 内山 新吾氏

都市分散型の特性を踏まえ過疎解消・人権擁護向上に努める

薬害肝炎感染被害や多重債務問題に注力

本州西端に位置する山口県。県内の都市は分散しており、山口地裁を置く山口市は、全国で最も人口の少ない県庁所在地である。そのため弁護士も山口市、下関市、周南市、岩国市、宇部市、防府市などに散在し、各地域における弁護士数も10〜35人程度。山口県全体が“弁護士過疎”と言われる状況にある。そんな山口県弁護士会の会長を務める内山氏に、今後の課題と活動方針についてうかがった。
本年度、当弁護士会が特に力を入れているのは、裁判員裁判制度および被疑者国選弁護制度の対象拡大に向けた対応態勢の確立と人権課題への取り組み、そして今年10月に山口市で開催される中国地方弁護士大会への対応が挙げられます。
裁判員裁判への備えとしては、日弁連主催の研修会に参加した会員が中心となり、繰り返し研修会を実施するなどしています。しかしながら、当会の会員数は昨年ようやく100人を超えたばかり。宇部や岩国など、いまだ深刻な弁護士不足の問題を抱える地区もあり、このままでは国選弁護人の融通をつけるだけでも大変困難な状況です。たとえば、中心部から離れた警察署に被疑者が勾留され、当該地区の弁護士が選任された場合。被疑者面接のために勾留中の警察へ通うことはできても、裁判が山口地裁(本庁)で取り扱われることになると、その負担は相当なもので、十分な弁護士活動に支障をきたす恐れがあります。そこで、当会では被疑者国選弁護制度の対象拡大に向け、本庁のある山口地区会と各地区会の会員弁護士による複数選任制を検討。裁判所とともに早急の課題解決を目指しています。
また、人権擁護活動としては、特に多重債務と薬害肝炎の問題に注力しています。前者については、これまでも期間限定で無料法律相談を実施していましたが、相談数は増加傾向にあり、本年度からは法律相談センターでの相談を無料にしました。後者については、当会に対策本部を設置。県の医師会や医療機関に対する申し入れ、薬害肝炎救済法に関する無料説明会の開催、無料電話相談窓口の常設などにより、被害者の掘り起こしをするとともに、有志弁護士の活動を支援しています。
さて、中国地方弁護士大会についてですが、本年度はその開催地となる当会が運営を担当するため、何としても成功させなければなりません。そこで、目下懸案の「IT(ICT)と子ども」をテーマに、大会シンポジウムを準備中。一般の方にも参加いただき、社会全体としてIT犯罪やいじめから子どもをどう守っていくのか、一緒に考える場にしたいと思っています。なかでも、出会い系サイトや学校裏サイトは、子ども自身が情報発信者になっているという非常に難しい問題です。当会では、すでに県警、携帯電話会社の幹部、総務省の官僚、学校の教師を招いた研修会を開催。子どもや保護者からも情報収集を行い、当日の充実した議論に備えています。

相互扶助の精神で公民協働による地域活性化・過疎解消を目指す

昨年5月、県内には「美祢社会復帰促進センター」が開所されました。ご存じのとおり、これは我が国初のPFI方式(民間資本活用による社会資本整備)による刑務所です。施設には高い塀や鉄格子を設けず、ICタグをつけた受刑者は施設内を自由に移動できるという画期的な運営については、その成果に各方面から大きな期待が寄せられています。
当会は、2005年度の中国弁護士会連合会大会において、同センター運営についての検証・監視の透明性を高めることを求める議題を提出、採択されました。現在、視察委員会の委員には当会の会員が就任、受刑者からの意見を受けて運営の改善につなげています。最近では、女性受刑者からの「スイーツを増やしてほしい」といった要望を実現させ、話題になりました。
また、今年2月に「萩ひまわり基金法律事務所」が開設されたことも大きなトピックです。萩支部の管内人口は10万人余りですが、同事務所が開設されたことで、管内は所長の小林亨弁護士、弁護士法人サリュの丹羽洋典弁護士、萩・山口法律事務所の山口正之弁護士となり、弁護士過疎の解消に一歩前進。3人とも30歳代の若手ですが、すでに地域に欠かせない、親しまれる存在になっています。
このように当会では、ここ数年、若い会員が増えています。58期は、山口で実務修習した6人のうち5人が県内の弁護士として活躍。いわゆる〝即独〟も珍しくありません。なかには即独について不安に思う人もいるようですが、弁護士同士が目に見える関係にある当会では、事務所の垣根を越えて、新人弁護士を周りの弁護士が支え育てる態勢ができています。弁護士が分散している分、まだまだ仕事はありますし、会務での活躍の場はいくらでもあります。
また当会は、全国に先駆けて会内に「TV電話会議システム」を導入しました。このため、本庁所在地にある会館まで足を運ばなくても、委員会などの会議に参加できるようになり、日弁連が行うライブ研修の設備も各地に備えています。
全国どこでも弁護士の力を必要としている人はいますし、過疎地ほどその存在感は大きいといえます。地方では我々の活動がすぐに地域に伝わり、手応えも大きい。当会は、都市分散型地域の困難を長所に変えていきたいと考えています。そして、制度改革により市民の権利が地域の隅々まで保障されるよう、市民とともに考え、発言し、行動していく弁護士会を目指しています。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 山口市黄金町2-15
  • http://www.yamaguchikenben.or.jp/
  • ● 地区会
  • 山口地区会:山口市黄金町2-15 
  • 宇部地区会:宇部市琴芝町2-2-35 
  • 下関地区会:下関市上田中町8-2-2 
  • 岩国地区会:岩国市錦見1-16-45 
  • 周南地区会:周南市岐山通り2-5 
  • ● 会員数
  • 弁護士数102人 法人会員3法人
  • (2008年7月31日現在)