弁護士会の取組み:バックナンバー

弁護士会の取組み

アトーニーズマガジン 弁護士会の取組み

地域司法計画を策定・推進する各地の弁護士会。地域に密着し、よりよいリーガルサービスの推進・向上のために活動を続ける各地の弁護士会の取り組みについて 、各弁護士会の会長よりお話を伺いました 。

長野県弁護士会

長野県弁護士会 会長 北川 和彦氏

司法改革の今、必要なのは熱意と覚悟。会員一丸で「新しい弁護士像」をめざす

会員の連携を密にする「在住会」 ITインフラなど拠点整備が課題

日本アルプスなど美しい自然に囲まれた長野県。人口約217万人に対して会員弁護士は154人。「在住会」と呼ばれる支部組織を導入し、地域に根ざしたリーガルサービスを推進しているのが大きな特徴だ。本年度の会長を務める北川和彦氏に長野県弁護士会の活動方針や取り組み内容についてうかがった。 南北210キロメートルに広がる長野県は、面積でいうと全国で4番目の広さ。長野県の最北に位置する本庁の会員弁護士は57名、最も少ない南部の伊那支部では7名で、県全体で見ると人口1万4123人に弁護士数は1人という割合です。 当会では、支部の独立性が強いため、上下関係がなく独立採算の「在住会」という呼び方の組織を、上田市、佐久市、松本市、諏訪市、伊那市、飯田市の6カ所に設け、本庁所在地にも長野在住会を置いています。 在住会が各地にあることで、市民が弁護士に容易にアクセスでき、また会員同士が顔の見える交流ができて、結果的に弁護士会全体として強い結束力を生み出しています。

裁判員裁判制度への対応や地域司法計画の実施に注力

本年度は、裁判員裁判制度の実施準備と啓蒙活動、地域司法計画の改訂、憲法問題シンポジウムの開催、自治体との関係強化、広報の充実などを重点課題としてきました。 目前に迫った裁判員裁判への対応では法曹三者が共同して模擬裁判を13回実施。昨年6月には制度の問題点や運営上の注意点を「模擬裁判に現れた裁判員裁判の到達点と今後の課題」という29ページの冊子にまとめました。9月からは法曹三者等で検討会を持ち、月1回運用を協議しています。また新しい法廷技術の習得に向けては、当会でも日弁連主催の研修会に参加した会員を中心に繰り返し研修を行っています。 会員の中には制度自体に疑問を持つ者も多くおり、昨年11月29日には制度の延期の是非を巡り臨時総会を開きました。86名が本人出席し、4時間30分の間、30名の会員がそれぞれの考えを披歴して真剣に議論をし、結果的には延期は求めないが課題解決を求める決議をしました。多くの会員が問題点を共有し、この制度の理解を深められたと思います。 一方、市民への啓蒙活動では、2月14日に長野市と松本市で日弁連が制作した裁判員制度PRドラマのDVD上映会を開催。他の在住会でも実施したいと思います。過去の冤罪事件から明らかな通り、調書中心の裁判では調書に嘘があれば真実が分からず、裁判官は類型的に判断する危険があり、市民の社会常識が必要です。このような制度の必要性を理解してもらうと共に、裁判員は不明点をどこまでも聞き、自身の考えで判断していただくよう語りかけたいと思います。 司法が地域の実情に合うようにと、ほとんどの弁護士会で「地域司法計画」を策定しています。当会でも平成14年に策定しました。当会の特徴は、市民に保障された各種の権利が現実にどこまで実現できているか、法的サービスの人的・物的設備の現状はどうか、などのデータを多用して具体的に検討している点です。高崎経済大学地域政策学会からは、ニーズを実証的に解明する資料として最も優れていると評価されました。 昨年7月にデータを一新、新たに書き下ろした改訂版を発行しました。「DVの保護命令申立が、ある裁判所支部では1年間、全件取下げで終了している」、「この6年間で弁護士は3割も増えているのに、裁判官や検察官は減員され、裁判所や検察庁の司法サービスは低下している」など、新しい発見が多々ありました。今後の弁護士会の活動は、この計画に従って行うことになります。 地域の司法計画は、常に現状を把握することが重要で、当会では今後も何年かに一度改訂していきたいと思います。 地域司法計画でも指摘された市民の弁護士へのアクセスについては、県内81の市町村に市民の一番身近な窓口として無料法律相談を実施するよう働きかけていきます。この自治体相談で、法律相談センター、直接受任、法律扶助などに振り分け、市民の司法アクセスを重層的に保障する態勢を整えたいと思います。 平成22年5月施行まであと1年となった憲法改正手続法。当会では昨年憲法改正プロジェクトチームを設置し、本年度は9条に関するシンポジウムを2回開催しました。長野県は満蒙開拓団を全国で最も多く輩出した県で、中国残留孤児問題も深刻でした。憲法改正問題に対する関心も非常に高い。そういう背景を考えても、今後も市民に対して必要な情報を提供するよう、積極的な活動を行っていきます。

若手とベテランが共に力を合わせ新しい弁護士像をめざす

長野県弁護士会の会員数は毎年10名程度増加、このままいけば200名突破もそう遠いことではありません。この度新規登録した会員の3名が即時独立開業しました。 当会では即独支援として、登録の紹介者や若手弁護士と在住会がバックアップする態勢で臨む方針です。起案のチェックや事件の相談など業務上のアドバイスは紹介者や在住会の若手弁護士が行い、在住会の他の弁護士が事件の紹介などでこれをフォローする2段構えです。また、委員会活動に参加することで、他の在住会員との交流を通じてさまざまな情報を得られます。新人弁護士を、在住会と委員会活動で育てる風土と態勢を整えたいと思います。 いい意味で理屈っぽく真面目なのが長野の県民性。「裁判員裁判制度には最適な県民ではないか。モデルケースとして信州から全国に発信できれば…」そんな期待を抱いています。 裁判員裁判では、弁護士は、徹底的に被告人の立場になり、真実を発見するためにどれだけ頑張れるか、『熱意と覚悟』が必要です。 若い会員は現在、裁判員裁判を含め多くの委員会で活発に活動していますが、若手だけでは活動がやせてしまいます。ベテラン会員が若手と一緒に活動を盛り上げ、共に切磋琢磨し、市民に寄り添いながらも志の高い新しい弁護士像を作り出していく、弁護士会はそのような活動を支援していきたいと思います。

■プロフィール

  • ● 所在地
  • 長野県長野市妻科432
  • http://www.avis.ne.jp/~nagaben/index.htm
  • ● 在住会
  • 長野在住弁護士会、松本在住弁護士会、上田在住弁護士会、佐久在住弁護士会、諏訪在住弁護士会、伊那在住弁護士会、飯田在住弁護士会
  • 現在、執行部が企画していることは拠点整備です。既に3つの支部在住会に会館があり、4月には佐久に会館ができますが、まだ2カ所には会館がありません。弁護士会館は最北の長野市にあるため、支部会員が各種の活動で会館に集まることは大変な負担です。研修に参加できず、委員会は土曜日に集中するなど、長年課題を抱えてきました。弁護士会が賃料や人件費を補助することによって全部の支部在住会に会館を設置し、ITインフラを整えて情報格差をなくし、かつ活動の効率化をはかりたいと思います。法律相談会の常設も可能となり、在住会館は市民にとっては山と峠で分断された地域の司法サービスの拠点となる存在です。
  • ● 会員数
  • 154人(2009年2月1日現在)