Vol.87
HOME事務所探訪モルガン・ルイス&バッキアス外国法事務弁護士事務所/ モルガン・ルイス&バッキアス法律事務所(外国法共同事業)
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

2023年10月東京オフィス・マネージング・パートナーに就任した土田キャロル外国法事務弁護士は、「Asia’s Top 15 Female Lawyers for 2023(Asian Legal Business)」に選出された人物。ちなみに会長のジェイミ・マッキオン氏は、初の女性チェア。女性の活躍が大いに期待される事務所だ

2023年10月東京オフィス・マネージング・パートナーに就任した土田キャロル外国法事務弁護士は、「Asia’s Top 15 Female Lawyers for 2023(Asian Legal Business)」に選出された人物。ちなみに会長のジェイミ・マッキオン氏は、初の女性チェア。女性の活躍が大いに期待される事務所だ

STYLE OF WORK

#180

モルガン・ルイス&バッキアス外国法事務弁護士事務所/モルガン・ルイス&バッキアス法律事務所(外国法共同事業)

ダイバーシティ&インクルージョンを促進する、働きがいある“ワンファーム”

グローバルなチーム編成で案件に挑む

北米、アジア、太平洋、ヨーロッパ、中東地域に30以上のオフィスを展開し、2200名超の弁護士・法律専門家を擁するモルガン・ルイス&バッキアス外国法事務弁護士事務所/モルガン・ルイス&バッキアス法律事務所(外国法共同事業)(以下ML)。エネルギー、金融、ライフサイエンス、労働、知的財産(IP)、リテール、テクノロジーといった多様な業界のクライアントにサービスを提供する米国発のローファームだ。

東京オフィスには日米の有資格者が在籍し、インベストメント・マネジメント、コーポレート・ビジネス・トランザクション、IP、雇用・労働法関連の4つのプラクティスがある。オフィス・マネージング・パートナーの土田キャロル外国法事務弁護士は、「グローバルにビジネスを展開するクライアントはもちろんのこと、『The Legal 500 Asia Pacific』や『Chambers Asia-Pacific』などの第三者機関からも各グループが高い評価を得ています。私たちの最大の強みは、17のタイムゾーンをカバーする各国の弁護士と協力し合いながら業務を行う“ワンファーム”であること。メンバーは、たまたまその国のオフィスにいるだけで、全員が“一つのファーム”の仲間であると考えています」と、語る。

建設用クレーン大手の日本企業が、米国建機の大手企業から、ドイツで展開するクレーン事業を約2億1500万米ドルで買収した。当該案件に関与した時のことを、M&Aを中心に取り扱う荒木源德外国法事務弁護士と斎藤三義弁護士は、次のように振り返る。

「事業本拠地があったドイツを含む欧州をはじめとして、北米、ブラジルを含む中南米、オーストラリア、中国、シンガポール、インドなど、買収対象の子会社や支店・拠点は合わせて20以上ありました。その時は、東京オフィスの私たちだけでなく、MLの各国の弁護士50名以上が本件にかかわってくれました。特にグローバルM&Aでは、“ワンファーム”の価値を実感しますね」

IPグループの森下実郎外国法事務弁護士は、「国内外のクライアントからのどんな問い合わせに対しても『対応可能です』と即答できるのが、この事務所のすばらしいところです。なぜなら、全世界に2200名超の仲間がいるからです」と言う。

「私は国内企業の代理人として、米国での特許訴訟に多く関与しており、技術的なバックグラウンドを持つ弁護士、ブリーフィングに長けた弁護士などと、国を横断したチームを組成して対応しています。また、特許訴訟を発端とする反トラスト法、FDA対応、税務などの問題についても、当該分野を得意とする各国の弁護士に気軽に相談できる環境です」

各国規制が絡む複雑なクロスボーダーに対応

インベストメント・マネジメントグループの土田外国法事務弁護士、文永智子弁護士、堀部忠男弁護士は、国内外のクライアントの投資ファンド設立、投資ファンドの国内拠点の設立・ライセンス取得、金融商品取引法、投資信託法、外国為替及び外国貿易法(外為法)など各種規制に関する届出、上場企業とのコミュニケーション・サポート、当局検査対応などの法的サービスを提供している。

「海外のアセットマネジャーが日本の投資家向けのファンドを組成したり、運用サービスを提供したりする場面でのご依頼が多いですね。クロスボーダー案件の場合、日本の規制と海外の規制がかみ合わないこともあるので、落としどころを探るのが難しい場合があります。現在、日本政府が資産運用立国を標榜して、拠点開設サポートオフィスを設け、英語での業登録を開始し、海外のアセットマネジャーの招致を進めているため、私たちがお手伝いできる場面がますます増えていくのではないかと思います。海外のアセットマネジャーとやり取りをする場合、やはり英語でのコミュニケーションがスムーズなほうが、クライアントにも安心してご相談いただけますし、『自分たちの物の見方を理解したうえで、日本でのビジネスについてアドバイスしてくれる法律事務所に相談したい』と思ってくださるのでしょう。セカンドオピニオンを求められ、そこからお付き合いが始まる場合もあります」(文永氏)

実際、堀部氏はある国内大手証券会社から、ボルカールールに特化した調査報告やアドバイスを求められ、米国のパートナーと連携しつつ進めた経験がある。

「私は雇用・労働法関連も担当しています。日本の雇用慣習や労働問題は独特なこともあって、相談は多いです。また、例えばパンデミックやロシアのウクライナ侵攻など、世界を大きく揺るがす出来事が起こった際、クライアントからの要望に即時対応できるよう国を横断したタスクフォースが組成され、自分もメンバーとして参加した経験があります。日頃の案件以外でも“横のつながり”を広げ、自分を知ってもらえる機会が多々あるのは、このファームの良いところです」(斎藤氏)

なお、アソシエイトにも多くのチャンスがある。

「米国パートナーから、仕事を任せてもらえるケースがあります。日本のパートナーを通じて推薦されるかたちですが、頑張り次第で活躍の場をどんどん増やしていけます。その仕事がうまくいけば、米国の仲間の間で自然と評判が高まり、また別の米国パートナーから仕事の依頼が届くこともあります」(アソシエイト)

取材には、全パートナーに同席いただいた。左から、堀部忠男弁護士、文永智子弁護士、斎藤三義弁護士、森下実郎外国法事務弁護士

多様性を尊重し協働を重視する風土

各国にオフィスを有するMLの理念は、「多様性の重視」だ。東京オフィス・マネージング・パートナー職を、土田氏にバトンタッチした荒木氏は言う。

「人種・文化、性別などを問わず、多様性を重んじることが私たちの誇りです。これは、MLの会長を務めるジェイミ・マッキオンの考え方でもあります。彼女の教えには、ユニークなものがあります。それは、外出などで不在にしている間に届いたメッセージについて、『クライアントからの依頼より先に、仲間からの相談、質問、連絡への対応を優先しましょう』というものです。日頃、ほかの弁護士に質問をすると、回答がすぐもらえることも、そのような教えが根付いているからだと思います。第一に仲間を大切にする――それが結果的にクライアント・ファーストにつながるMLならではの事務所風土なのです」

同オフィスのアソシエイトは、「いつでもどこでも、パートナーが親切に質問に対応してくれる。結果的に、自分の時間を効率的に使えていると感じる。また、ミスを責めない、引きずらない、切り替えが早いことが当オフィスのパートナーの特徴。適度な緊張感のなかで働けている」と語る。

創業150年の歴史があるMLだが、東京オフィスの歴史は35年。TMI総合法律事務所とのジョイントベンチャーや、国内の大手法律事務所との人材交流もあり、日本でも、実績を積み上げつつある。文永氏は言う。

「海外では知名度のあるMLですが、カタカナで表記される“モルガン・ルイス&バッキアス(=東京オフィス)”のブランディングは道半ばといったところです。米国商工会議所やAIMAなど業界団体での活動や、東京オフィス主催のセミナー、LawFlashなどによる情報発信、プロボノ活動と、多様な試みに挑戦していますが、クライアントや、司法修習生・若手弁護士などもっと多くの方々に、当オフィスを知っていただくことが急務だと考えています。ただ、裏を返せば、それだけ“伸びしろ”の大きな法律事務所だと、私は思っています」

「当オフィスでは、各自が得意とするプラクティスグループにそれぞれ属していますが、もちろん活動範囲を限るものではありません。現に複数のグループを横断して活躍する人もいますし、今後、新たな仲間が増えていけば別のプラクティスグループが生まれることも十分考えられます。既存のグループの強化を図りつつ、新たな分野の立ち上げにも柔軟に、全員で協力しながら挑戦していきたいと思います」(土田氏)

Editor's Focus!

公用語は英語。国内にいながら留学と同じレベル感で、語学や文化・習慣を学べる。「海外のクライアントや海外オフィスのローヤーと一緒に仕事をしていくうちに実践的な英語力が身につきます。会議もeメールも8割以上英語です。厳しい環境かもしれませんが、入所後に英語力が向上するのは間違いありません」(文永氏)