インターネット上の誹謗中傷分野など、それぞれが得意分野を開拓。弁護士がプロジェクトリーダーとなり案件に臨む

弁護士法人港国際法律事務所は、玄君先弁護士により2009年に横浜で設立された。1年で弁護士を十数名まで増員するなど、神奈川県でトップクラスの規模を誇る。現在、相談拠点は国内8カ所。また、シンガポールで外国法事務弁護士のライセンスを取得し、アジアを中心とした海外案件にも積極的に関与している。
設立直後から電光石火で体制構築を推し進めた玄弁護士。四大法律事務所、外資系証券会社のインハウスロイヤー、営業職を経て独立を果たした、個性溢れる弁護士だ。
「私は法律事務所から外資系企業へと、自らがやりたいと思うことの実現とキャリア形成のために転職しました。金融・投資という興味の高かった分野で“リスクを取ってチャレンジし、面白いビジネスにかかわること”を志向してきました。しかし、在籍していたリーマン・ブラザーズ破綻を契機に、“リスクを取るビジネス”が世の中から実質消滅してしまったわけです。そこで自分にとって次のチャレンジは何かと真剣に考えた時、弁護士としての独立・開業という答えが浮かんできました。事務所を立ち上げることは当然初めてですし、これまでの経験と人脈を生かせば新しいことができて面白い、やりがいも大きいと考えて決断しました」
しかし弁護士業務から10年以上遠ざかっていた玄弁護士。「立ち上げ時はマネジメントに専念し、実務ができる弁護士をとにかく採用しよう」と決め、わずか1年で十数名の弁護士を雇い入れた。
「スターティングメンバーとなる修習生を面接した際、仕事は1件もなく、人員も私1人(笑)。しかし『半年後、あなたたちが来るころには事務所は必ず稼働している』と説明。実際、彼らを面接する間に即戦力も入所し、案件も回り始めました。私は長く企業にいたので、ゼロの状態からビジネスプランを組み立て、目標を設定し、目標達成のための人と資金を集め、事業を軌道に乗せていくのが当たり前だと思っていました。それは、一般的な弁護士の独立・開業の流れに照らすと、異色ではあったでしょうね」
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国内外拠点間のやりとりは、ビジネスチャットツールを活用。離れている分、連絡はリアルタイムかつ緊密に行う。また「当事務所は女性も多く、産休後も半数以上が職場復帰。居心地いいんでしょうね(笑)」と玄弁護士。「仕事では裁量・権限を与え、組織構造はフラットに。働く環境は心地よく」が事務所のポリシー
設立当初は、運転資金を確保するため、債務整理案件を多く手がけたが、現在は、M&A、ファイナンス、一般企業法務、海外案件などの割合が増し、企業向け案件と個人向け案件をバランスよく取り扱っている。
「海外案件については、シンガポールに拠点があることがポイントです。渉外案件の経験が豊富な松尾祐美子弁護士と共に、シンガポール、ミャンマー、インドネシア、タイなどで海外企業との取引、現地法人の開設、外国企業と国内企業とのジョイントベンチャーや投資案件などを多く扱っています。また、国内では一般医薬品のインターネット販売を行う企業の代理人として、東京高裁で国を相手に逆転判決を勝ち取ることができました」
司法修習修了後に入所した若手弁護士もそれぞれ、自らの得意分野を開拓しつつある。そのうちの一人が湘南平塚事務所で所長弁護士を務める最所義一弁護士で、インターネット風評被害・誹謗中傷対策で多数の実績を持つ。前出の松尾弁護士と最所弁護士が、海外企業が運営するブログ上で中傷を受けた被害者を代理し、東京地裁に米国企業の情報開示仮処分申請を申し立て、速やかな情報開示を勝ち取った。これは12年の改正民事訴訟法を受けて、変更後の規定を用いた初めての例だった。
「私が大切にしているモットーは、自助努力。所員も同じく、それを心に留めて事務所を盛り立ててくれています。当事務所を“法律事務所っぽくない”と評する声も聞きますが、それは依頼者利益を最優先に考え、様々な専門家を巻き込みながら“弁護士がプロジェクトリーダーになる”姿勢で業務に臨むゆえ。これは、私が様々な職場で会得した知見から生み出した仕事の進め方です。自分のテリトリーを狭めず、『本当にそれって弁護士の仕事?』という事柄にも挑戦し、自分が役に立てるところを探り、お客さまとの強固な信頼関係を築いていく。その継続が、弁護士が活躍できるフィールドを、さらに広げてくれるはずです」
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設立以来継続開催する年1回の事務所旅行。過去の行き先は香港、ベトナム、シンガポール、台湾、ソウルなど。写真はベトナムのハロン湾。クリスマスパーティや新年会も恒例行事