弁護士を目指すきっかけとなったのは、高校生のころに高校OBで少年事件に関する弁護士の講演を聴いたことです。そこで“人と接し、人を助ける弁護士”という仕事に興味を持ち、法学部に進学しました。司法修習後は、「Best for Clients」を強く謳っていた森・濱田松本法律事務所に入所。企業法務のイメージは正直あまりなかったものの、この事務所なら“人と接し、人を助ける”仕事に出会えそうだと考え、思い切って飛び込みました。
当事務所では、入所後は1年間にわたり、大きく2つの分野を順に経験するローテーション制度をとっています。私はM&A部門とファイナンス部門に順に配属されました。M&Aやファイナンスは、もちろんクライアントの利益を実現することが前提ですが、そのうえでディールを成立させるために、関係者の皆が同じ方向を向いて進めていける分野といえます。これは、“相手を打ちのめす”といった面がある訴訟・紛争より、自分には向いていると思えました。そしてM&A部門では、1年目から、“買う案件”だけではなく、“買われる案件、売る案件”に多く関与する機会に恵まれました。“買われる案件、売る案件”では、その企業の役員や担当者の思いが溢れ出てくることもしばしばあり、ある種、非常に“泥臭い案件”といえます。そうしたディールにかかわる人たち全員が、同じ方向を向いて進んでいけるようリードしていく先輩弁護士を見て育ち、「この仕事の第一人者になりたい」と考えるようになりました。以来、M&Aが私の軸足の一つとなっています。そして、M&Aの文脈における独禁法の対応、すなわち日本及び海外各国の企業結合審査対応がもう一つの軸足です。複合的な問題が起きた際には、M&Aと独禁法、それぞれの分野のスペシャリストが協働して進めることが通例ですが、どちらも理解している弁護士がサポートすることがクライアントのニーズに沿えるのではないか――そう考えて、現在も研鑽し続けています。
また米国留学前に、経済産業省への出向も経験しています。そこでは、M&Aやコーポレートガバナンスに関する経済界からのニーズの吸い上げ、企業法制の在り方に関する研究会の運営、M&Aに関する特例法(旧産活法・現産業競争力強化法)の改正への関与など、貴重な経験を得ました。この時の経験で、社会のニーズにアンテナを張り、幅広い分野にアドバイスを提供するという弁護士の姿勢が醸成されたとも思っています。そのなかで近年では、経産省で得られた人脈・知見も生かし、外為法・外国投資規制対応も多く手掛けています。