Vol.82
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前列左より、浅井隆弁護士(42期)、木下潮音弁護士(37期)、吉益(吉は土に口)信治弁護士(36期)、田多井啓州弁護士(26期)。後列左より、坂井瞭平弁護士(70期)、宇野由隆弁護士(65期)、髙木美咲穂弁護士(70期)、東志穂弁護士(59期)、林栄美弁護士(64期)、大野孟彬弁護士(69期)、金澤康弁護士(69期)

前列左より、浅井隆弁護士(42期)、木下潮音弁護士(37期)、吉益(吉は土に口)信治弁護士(36期)、田多井啓州弁護士(26期)。後列左より、坂井瞭平弁護士(70期)、宇野由隆弁護士(65期)、髙木美咲穂弁護士(70期)、東志穂弁護士(59期)、林栄美弁護士(64期)、大野孟彬弁護士(69期)、金澤康弁護士(69期)

STYLE OF WORK

#165

第一芙蓉法律事務所

労働問題の解決における先駆として、誰もが望む労使関係の構築に取り組む

世代をつないで弁護士を育てる

第一芙蓉法律事務所は、戦後日本の代表的な労働事件を数多く手がけてきた橋本武人弁護士を師とあおぎ、日産争議や三井三池争議の企業側代理人として現場の指導、訴訟を担当した竹内桃太郎弁護士が開設した事務所を前身とする。昭和の労働運動史上に残る事件の解決に寄与し、事件をとおして積み重ねてきた知見を今につなぐ法律事務所である。開設当初からのメンバーである、木下潮音弁護士と浅井隆弁護士に、事務所が掲げる目標をうかがった。

「一つは事務所の継続性です。世代をつないで弁護士を育成し続けることを大切にしています。若い弁護士を採用し続け、世代交代を重ねながら継続していくということですね。もう一つは、仕事のうえでは、企業側の立場で人事・労働問題にかかわるものの、企業側の一方的な利益追求ではなく、安定した労使関係の構築と、社会的存在としての企業の立場を守り高め、社会に資する存在となること。これらが、事務所開設時から変わらず守ってきた目標であり、理念です」(木下弁護士)

「言い換えれば、労使がWin-Winの関係を築けるようにサポートすること」と、木下弁護士。浅井弁護士は、「そのために、お客さまの潜在的なニーズを明らかにして対応することを常に心がけている」と語る。

「本当は何をしてほしいか、どんな解決が望みなのかといった、お客さま自身が気づけていない課題を感じ取り、探り出し、解決に導くことで、依頼者利益の最大化を図る――これも私たちが大切にしていることです。その実現の仕方は、個々それぞれのスタイルがあるものの、仮説を立てる力と想像する力が、当事務所の弁護士が共通して持つ武器であると思っています」(浅井弁護士)

「『それはできません』が、弁護士の常套句と思われがちですが、私たちはお客さまに、『一番やりたいことを一緒に実現しましょう』『一番やりたいことを、まず考えてください』と最初にお伝えします。その実現の方法を一緒に探しながら、サポートしていくのが私たちの仕事です」(木下弁護士)

第一芙蓉法律事務所
「伝統ある事務所ならでは、書籍では得られないノウハウや、長年にわたり蓄積されてきた事件処理方法を体得できることが魅力」が、同事務所所属弁護士の総意だ

難易度の高い労働問題を解決

同事務所は、労使関係に関する法律相談、訴訟、労働組合との団体交渉など労働問題の解決、および商事法務を主な業務としており、人事労務問題全般の紛争予防と円満解決のためのコンサルタント的な役割を果たす。例えば木下弁護士は、スルガ銀行の「企業文化・ガバナンス改革委員会」の委員長として、また電通の「独立監督委員会」委員として、それらの体制立て直しに尽力した労務分野のエキスパートだ。木下弁護士が関与した事案には、高齢者雇用のあり方という、日本が抱える社会問題に直結した訴訟もあった。

「『京王電鉄ほか1社事件』ですね。バス運転手の定年後の勤務形態として、2つの制度(継匠社員制度と再雇用社員制度)を有する会社の従業員らが、会社における地位確認などを雇用先のバス会社および親会社の電鉄会社に求めた事案で、会社側が勝訴しています。高年齢者雇用安定法の運用時、この法律を自社にあてはめて考えると、どのような運用がよいか、社内の制度づくりと運用方法の検討・作成から、会社の方々と一緒に行ったものです。この制度に不満だった従業員の訴えがあり、裁判までやったということです。これは、浅井弁護士が述べた『何を望むか』『その会社にとって何がよいか』を突き詰めて実現してきた事件といえます。従業員が高齢者になった時の処遇をどうするかは、どの企業も悩みどころ。この事件は、これからの企業が抱える課題の、解決のための一つのヒントになったと自負しています」

一方の浅井弁護士は、外資系の企業案件に強みを持ち、近時でいえば、クレディスイス証券の整理解雇事件を担当している。

「外資系における整理解雇という、企業側にとって難易度の高い裁判で勝訴しています。その判決の前に、バークレイズ証券が同様の整理解雇で全面敗訴しており、東京地裁の労働部でも、2つの事件を比較検討するなど高い関心を寄せてくれていたようです。ただ、勝訴はしましたが、私自身の目的ややりがいは、裁判で勝つことではありません。あくまでも“早期解決”です。たとえ裁判で勝っても紛争の火種は残るものですし、和解で早期解決できるほうが、依頼者のメリットは高い。私たちが目指す“労使Win-Win”の観点からも、雇用者が負うデメリットは小さくて済むと考えます。過去を振り返ると、7~8割は和解で、1~2割が判決といったところです」(浅井弁護士)

「私たちが和解をなぜ重視するか。企業経営のための重要事項は、裁判官に決めてもらうのではなく、自社でまず決めるべきだと思うのです。自社のことは、そこで働く人たち、サポートする私たちが一番よく知っているわけですし、自分たちで決めたことなら納得感も高いはず。和解=逃げた・負けたではなく、企業存続・発展の観点から見れば、むしろ“勝っている”――この考え方を大切にして、その時々にし得る早期解決の最適解を、経営者にアドバイスしています」(木下弁護士)

第一芙蓉法律事務所
初代所長は、故竹内桃太郎弁護士。「名前のとおり、日本一の事務所になれ」と先輩弁護士に激励され、“芙蓉の峰(富士山を指す)”から第一芙蓉法律事務所と命名した

弁護士の自主性を最大限に尊重

「企業法務のなかでも、人に関する労働分野は面白く、やりがいがある」と考えて同事務所に入所した60~70期台の若手弁護士は多い。彼らが入所した後は、先輩弁護士と2名体制か、多くても3名体制で各事案に携わる。それは訴訟でも団交事案でも同様だ。

また、同事務所では個人事件の受任が自由で、経費納入も不要。留学や任期付き公務員への応募といったキャリアプランの描き方も、本人の意思と決断を尊重する。

「そもそも労働分野はコンフリクトが起きにくいので、若手弁護士も自由に仕事を受けやすいのです。“自分のお客さまを持つことは大事”という考え方が浸透していて、それぞれが忙しいなかでも、仕事の幅を広げるための活動を積極的に行っているようです。例えば、社会保険労務士など他の士業との勉強会や交流会に出かけて人脈を広げ、そこから紹介される案件も多々。労働事件をきっかけに家事事件の相談を受け、仕事の幅を広げている若手弁護士もたくさんいます」(木下弁護士)

“世代をつなぐ”の理念どおり、「事務所開設以来30年以上のお付き合い」という顧客割合は高い。

「今、当事務所の一番若い弁護士は30代前半。その弁護士が60歳を超えるまで、この事務所が継続していることを願っています。そのためには、今あるお客さまとの信頼関係は当然大切ですが、ベンチャー・スタートアップ企業の仕事も積極的に進めていきたい。新たなビジネスや世の中の動きを学び、そこで起こり得る労働問題と問題解決のノウハウを、どこよりも早く深く積み上げられる事務所でありたいですね」(木下弁護士・浅井弁護士)

最後に、両弁護士に、これから法曹界を目指す方や若手弁護士へのアドバイスをいただいた。

「“判例の勉強の仕方”について、事実に興味を持つ、事実を読み取ることを大切にしてほしい。例えば、就業規則の不利益変更の判決を読む時、規範との当てはめだけで判断しないことです。どんな会社でどんな人間関係で何が起きたのかを頭に入れて初めて、その判決の意味がわかる。事実は光の当て方でいくらでも変わっていくものですから、誰かが要約したものだけ見て納得するのではなく“事実の読み方”をぜひ学んでほしい。効率よく勉強しようとせず、本質に迫る勉強をする。そして、書く力を鍛えること。他人が書いたもの、他人がまとめたものを信用せず、基本書を一から体系立てて読み、そこから自分で表現できることを求める。そのような勉強の仕方で、弁護士に本当に必要な基礎力を磨いてほしいと思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

Editor's Focus!

故竹内桃太郎弁護士が労使問題を手がけていた放送会社では、労働問題だけでなく、法学部生なら必ず学ぶ「TBSビデオテープ押収事件」にも取り組むことになった。「こんな弁護士になりたいというお手本でした。やり方ではなく、その精神を今につなごうと日々、仕事に取り組んでいます」。木下・浅井両弁護士のコメントから変わらぬ志が感じられた

第一芙蓉法律事務所