弁護士の肖像:2018年9月号 Vol.65

弁護士の肖像

アトーニーズマガジン 弁護士の肖像

日本のリーガルサービスを牽引する、著名な弁護士の素顔や仕事観・人生観をご紹介。

※掲載記事の内容は取材当時のものです。

Human History

弁護士の肖像

川人法律事務所 弁護士 川人博

〝人権の縮図〞で培われていった弱者に味方する精神

「川人さんのおかげで、娘の尊厳を守ることができましたし、私が今生きていられるんだと――」。
2015年暮れ、電通の新入社員だった高橋まつりさんが、1カ月100時間を超える残業を課せられた末に自殺した事件は、社会に大きな衝撃を与え、「働き方改革」推進のきっかけともなった。まつりさんの死の労災申請につき、遺族代理人となり、労災認定を勝ち取ったのが、川人博だ。冒頭の言葉は、川人を取材したNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で、まつりさんの母親・幸美さんが語った感謝の一言である。
 1988年、「過労死110番」の運動にかかわった頃、それは「自己責任」とされ、遺族が救済されることはなかった。企業責任を認めさせるところまで世の中を動かすうえで、「過労死問題の第一人者」が果たした役割は、計り知れない。
「根底にあるのは、人間の命と健康にかかわる仕事がしたいということ」。その意志は、いかにしてかたちづくられていったのだろう。

 大阪の泉佐野市の出身です。1949年生まれというのは、団塊世代の〝末っ子〞でね。2つ3つ年上の子たちも含めて、とにかく大勢で夏は近くの海で泳いだり、かけっこしたり、缶蹴りしたり。終戦直後の田舎は、どこもそんな感じだったんじゃないでしょうか。
 父親は開業医でした。もともと旧満州にいて、そこで医師免許を取ったのだけど、肺炎を患って真珠湾攻撃の直前くらいに日本に戻ったんですよ。今から考えると、運がよかった。
 まだ国民皆保険になる前だったけど、地域には貧しい人もたくさんいて。父親はそんな人たちも「お金はいいから」と診察していました。夜中にドンドン玄関をたたく人はいるし、電話はかかってくるし。とにかく大変な仕事なのだな、と子供心に思っていましたね。ただ、医者の家に生まれた以上、自分もその道に進むのだろう、と漠然と考えていたんですよ。
 ところが、小学3年か4年だったか、色覚検査で赤緑色弱と診断された。今でも、「博は医者にはなれへんかも」という母親の言葉が耳に…(以下略)

経済学に目覚め東大へ。公害裁判に感化され弁護士を目指す

 壮絶といっても過言ではない中学時代から一転、進学した府立三国丘高校には、学びの環境が整っていた。一方、入学して始めた柔道では、半年で昇段試験に合格し、黒帯に。やがて主将を務めるほど打ち込んだ。多くの恩師と出会い、友人たちと語らう中で、徐々に社会に対する関心を高めていったのも、この時期だった。

 私が高校時代を過ごした60年代後半というのは、ベトナム戦争の影響もあって、日本社会にもどことなく反体制的な雰囲気が漂っていたんですね。高校の先生の影響もあって、私も2年生ぐらいから、社会的な問題を強く意識するようになりました。
 特に興味を持ったのは、当時は社会科学として比較的メジャーだった、歴史学や経済学だったんですよ。「歴史とは、現在と過去の間の尽きることなき対話」という一文で有名なE・H・カーの『歴史とは何か』の読書会をやったりしたことを覚えています。
 お話ししたような事情で医者の道をあきらめていたから、将来何になろうか、真剣に考えるべき時でもありました。そこで選んだのは、経済学だったんですよ。当時は、マルクス経済学とケインズ経済学という大きな2つの流れがあったわけですが、いずれにしても社会全体を考えて、どのような政策を立案する必要があるのか、という社会変革の立場に立った学問であることに魅力を感じていたのです。
 受験に関していえば、私にはアドバンテージがありました。2つ上の兄が医者を目指して東大に進学していたのですが、同じ部屋で勉強していたから、ずっとそのやり方を見ていたのです。だから、「このくらいやればいいんだな」というのが、なんとなくわかる。現役合格できたのは、兄のおかげ…(以下略)

■プロフィール

  • 川人法律事務所 弁護士
  • 川人博

  • 1949年10月7日大阪府泉佐野市生まれ
    1974年3月東京大学経済学部卒業
    1975年10月司法試験合格
    1978年3月司法修習修了
    4月弁護士登録(東京弁護士会・30期)
    文京総合法律事務所入所
    1995年9月川人法律事務所創設

  • ●役職など(2018年7月現在)
  • 東京大学教養学部「法と社会と人権」ゼミナール(自主ゼミ)講師、厚生労働省・過労死等防止対策推進協議会委員、過労死弁護団全国連絡会議幹事長、過労死等防止対策推進全国センター共同代表幹事、内閣官房拉致問題対策本部 拉致問題に関する有識者との懇談会の有識者委員、東京弁護士会人権擁護委員会国際人権部会長
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