Vol.92
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前列左から、瀬川哲弘弁護士(68期)、岡﨑友子弁護士(60期)、墳﨑隆之弁護士(57期)、山本卓典弁護士(64期)。後列左から、葛西悠吾弁護士(70期)、田畑早紀弁護士(71期)、浅岡真直弁護士(74期)、根鈴久志弁護士(70期)。弁護士数50名(シニアカウンセル7名、顧問2名を含む)、その他顧問6名、外国法事務弁護士1名、外国法曹資格者3名/2025年3月現在)

前列左から、瀬川哲弘弁護士(68期)、岡﨑友子弁護士(60期)、墳﨑隆之弁護士(57期)、山本卓典弁護士(64期)。後列左から、葛西悠吾弁護士(70期)、田畑早紀弁護士(71期)、浅岡真直弁護士(74期)、根鈴久志弁護士(70期)。弁護士数50名(シニアカウンセル7名、顧問2名を含む)、その他顧問6名、外国法事務弁護士1名、外国法曹資格者3名/2025年3月現在)

STYLE OF WORK

#189

T&K法律事務所

最高のクオリティを突き詰めた独自の体制 切磋琢磨し、品質にこだわり続けるプロ集団

個性溢れる5人衆

「彼らのダンスはそろそろ勘弁してほしい」。今から15年ほど前、日本最大手の一角である総合法律事務所のオフィスパーティーに参加した弁護士たちは半ば苦笑しながらそう述べた。〝彼ら〟とは、毎年頼まれてもいないのにパーティーで歌やダンスなどの一芸を披露する、存在感と個性抜群の5人衆である。一風変わった彼らが後に共同で事務所を立ち上げ、弁護士50名を超え、顧問および職員を含めると80名以上にのぼる規模に急成長させることになるとは、誰が予想できただろうか。

今回はそのT&K法律事務所を訪ねた。同事務所は、国内・海外を問わず企業法務をメインに扱う総合法律事務所だ。冒頭のエピソードから窺われる、勢いのある5人衆との印象とは裏腹に、彼らは練り上げられた経営戦略と、そして依頼者や事務所を想う真っすぐな信条を持っていた。結束の固い5人衆が〝日本一の事務所〟を目指して旗揚げして以来、仲間を増やし成長を続けてきた同事務所が、全所員一丸となって洗練されたリーガルサービスの新たなスタンダードを打ち立てていく――今回の探訪で垣間見たその物語の一端を、以下紹介しよう。

T&K法律事務所の創業メンバーの一人である角谷直紀弁護士は、製造・流通・金融・通信・コンテンツ・アートやITなどにおける、老舗の上場企業から新興企業、官公庁や独立行政法人などまで、ほぼすべての業態や規模のクライアントから依頼を受けている。それは角谷弁護士が単にゴルフがちょっと上手だからだけではない。角谷弁護士はこう語る。「特定の法律に長けている弁護士はいくらでもいます。しかし、私が最も大切にしているのは、依頼者の経営課題はもちろん、実務上のニーズ、ひいては依頼者の社内外における立ち位置や想定される関係者の反応などの様々な変数を踏まえ、最適解となり得る対応の〝筋〟を読み解き提示することです。依頼者が『この人しかいない』と頼ってくださる時、究極的には、週末の夜に依頼者のお子さんの歯が痛くなってしまったというような法律とは全く関係のない困り事を相談される時こそ弁護士冥利に尽きるとも言えます」

同じく創業メンバーである墳﨑隆之弁護士は、大学3年生時に司法試験に合格しており、経済産業省模倣品対策・通商室での執務も経験し、現在は文化庁文化審議会著作権分科会の委員も務めている。また、海外での訴訟を含む数多くの知的財産案件を扱い続けることで、最新の法制度に加え、多様な実例に基づいた分析・助言が可能な、同分野においては屈指の存在である。加えて、インターネットやSNSの普及に伴って益々重要になっている個人情報保護法についても造詣が深いなど、時代の要請や依頼者のニーズを捉えながら高度な専門性を磨いてきた。なお、法制度や実例と同じように最新のアニメーションやJポップ、ゲームにも詳しく、〝オタク〟としても比類なき弁護士かもしれない。

「5人は何でも話せる飲み仲間で、互いを知り尽くして信頼していましたし、何より各自が異なる分野を得意としていて、互いに補完し合えば誰にも負けないと信じて走り出しました」と、墳﨑弁護士は事務所開設当時を振り返る。一方の角谷弁護士はこのようにも語る。「私以外の4人は、『俺たちがやれば、うまくいかないわけがない。100人規模の事務所にする』と。とにかく猪突猛進で、勢いだけはありましたね。『自分のことになると急に楽観的になるこの面々をまとめるのは自分しかいない』と、一人孤独に損益分岐点を算出していました」
 
これらの会話からも、各弁護士の性格や人間性まで含めた特徴を生かしながらシナジーを生み出す事務所であることが垣間見える。

脱縦割りと2人の責任者

「パートナーが依頼者を囲い込まず、すべて事務所の依頼者としていることが最大の特徴。それが、事務所全体が成長している要因の一つだと考えています」と、角谷弁護士は言う。誰が依頼者や案件を取ってきたかはさほど関係なく、その都度案件ごとに依頼者のニーズに応じた最適かつ柔軟なチームが組成されていく仕組みである。

具体的なチーム構成としては、「例えば、危機対応・不祥事対応の専門家がM&Aに携わるとか、訴訟に強みのある弁護士が金商法上の開示業務を主導するといったことが起きないよう、各案件に応じた〝最適な弁護士(パートナー)〟が案件を担当します」(墳﨑弁護士)。また、上記の最適なパートナーが当該案件の責任者であるのに対し、「依頼者に満足を超えて驚きを与えられるぐらいのご提案をするために、依頼者をしっかり見て、その事業やニーズへの理解を継続的に深めるだけでなく、『この方の立場ならどうするか』を考え抜ける、〝依頼者ごとの責任者〟も別に置いています」(角谷弁護士)

危機意識から生まれる徹底したクオリティ

同事務所の徹底したクオリティへのこだわりの裏には、弁護士業界の現在・将来に対する強い危機感がある。

「弁護士法で規制されている業務以外では、弁護士業界は、例えばコンサルティング会社など、他業界との競争にさらされており、AIサービスも台頭してきています。タイムチャージだから稼働が増えさえすればよい、弁護士の理屈で大所高所からアドバイスをしていればよいという考え方では、弁護士として真に依頼者から頼られる、やりがいのある仕事は減っていってしまいますし、実際にそうなりつつあります」と角谷弁護士は警鐘を鳴らす。墳﨑弁護士もこう続ける。「だからこそ、当事務所では、他の法律事務所や事業会社等での経験など、弁護士や職員の肩書を問うことなく、様々なバックグラウンドを持つメンバーの知見を結集し、法律論はもちろん、企業の論理に則しているか、オペレーション上成立するのかなども含めて徹底的に議論します。また、課題への対応方針や依頼者に納品する成果物を、必ず、前述の依頼者ごとの責任パートナーに加え、案件担当弁護士も含めた複数人の多角的な視点で分析することを原則とし、参加したメンバーは必ず何らかの付加価値を出すことを徹底しています。これにより、あらゆる分野で最高品質の助言や提案ができているのではないかと思っています」

全員参加の事務所に向け強化されたチームワーク

徹底した依頼者ファーストの姿勢とそこから生み出される成果物の高いクオリティが共感を呼び、多くの依頼者を惹きつけてきたが、それだけではない。このようにプロフェッショナリズムをとことん追求する環境に身を置きたいと同事務所の門を叩く弁護士が次第に増え、これが、さらに大規模かつ高度な専門性や判断が求められる案件に対応するための、事務所の層を厚くすることにつながっていった。5人で始まった事務所は、その輪が広がり、今やあらゆる業界・分野の依頼が日々舞い込み、これに全員参加で対応する総合法律事務所となっている。

「個性の塊の5人が立ち上げた事務所ですが、今では、手綱を握って調整してくれる仲間がたくさんいます。オフィスパーティで踊り出す所員は今のところいませんが、日々所員から自由闊達な提案がなされており、皆の事務所になってきていることを感じています」(角谷弁護士)

弁護士の個性と可能性を広げる育成

同事務所のこれらのフィロソフィーは、どのように若手弁護士の育成に生かされているのだろうか。「当事務所への依頼案件は、最大手に比肩する非常に高いレベルの案件です。それに、特に企業法務分野では往々にして、若手の仕事は会議メモの作成や受領したエクセルファイルの内容をワードファイルにコピーして書類の体裁を整えるだけ、といったことも起こりがちですが、当事務所では若手のうちから、パートナーとともに案件の〝中身〟の検討・対応に関わり、役職や年次を問わない徹底した議論で成果物を練り上げる過程で様々な知見や気付きを得ることができます。また、当事務所には特定の業務分野やパートナーごとの〝島〟はありませんので、例えば、最初から金商法と知財訴訟と不祥事対応を〝すべて〟経験できるのは、当事務所の若手くらいでしょう。そのうえで、ジェネラリストになるのか、特定の分野を突き詰めていくのかは本人次第。幅広い業務分野への経験を積んでいく分、企業法務弁護士として〝活躍できている〟という実感が持てるまで、やや時間がかかるかもしれませんが、将来依頼者への責任を自分が持つようになった時に、必ず役に立つ財産となるはずです」(墳﨑弁護士)

最後に、どのような弁護士がこの事務所に合うのか角谷弁護士にうかがった。

「年上を含めた知人や友人が多く、人の真意をくみ取り寄り添うというようないわゆる社交性も大変重要だと思っています。ただし、これと同様またはこれ以上に大切なのは、職人気質があり細部に徹底的にこだわることができる力です。例えば、契約書の一文、交渉の際の言い回し、メールを送るタイミング、そうした細かい点にこそ神は宿ります。緻密さがあり、深い知識やそれを身につけるための探求心といい意味での執着心が強く、自分だけの武器を磨き上げられる〝知的オタク気質〟が大事なのかもしれません。とにかく、思い切りユニークな人と働いていきたいですね」