私は、民事事件や刑事事件などを担当する傍ら、本人の状況をよくするために、本人の周りにいる人や機関と連携して知恵や力を貸し合い、総合的な解決を目指すいわゆる「司法ソーシャルワーク」も手がけています(法テラスが力を入れている分野でもあります)。この2年間だけでも会った人は、福祉事務所のケースワーカー、地域包括支援センターの担当者、精神病院のソーシャルワーカー、民生委員、本人の家族や友人など、数え上げればきりがありません。現場では、いつも多くのことを学ばされています。
日常の仕事は、いたって地味です。相談を受け、依頼を受け、解決に向けて活動する。その繰り返しです。このマガジンに掲載されている先輩たちのような目覚ましい活躍などしていません。可能な限り依頼者や関係者とたくさん会うために、いつもあちこち遠藤さんと二人で飛び回っています。遠藤さんとは、「私たちの仕事は地味で泥臭いけど、いろいろな人に会って、様々な経験をしてきたよね。これからも地道に積み上げていきましょう」とよく話しています。
ただ、依頼者から「ありがとう。あなたたちに頼んでよかった」、関係者から好意的に「こんな弁護士もいるんだ」などの言葉をもらった時は、遠藤さんとペアで信頼された確かな証拠だと思い、素直に嬉しくなります。弁護士3年目、まだまだ学ぶべきことが数多くありますが、困っている人に寄り添って一緒に悩み、よりよい解決策を見つけることができる弁護活動を、これからも研鑽を重ねながら、続けていきたいと思っています。
ところで日本では、まだまだ手話通訳士は〝専門家〞として認識されていません。その一方で、聴覚障がいのある学生たちが、弁護士含め様々な専門家を目指して日々頑張っている話を聞きます。これからますます多方面で、聴覚障がいのある専門家が増えてくるでしょう。近い将来、聴覚障がいのある専門家と、ペアで仕事をする手話通訳士という〝もう一人の専門家〞がいることが、当たり前になってほしいと願っています。