Vol.6
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PIONEERS

専門性の高さで会社の発展に貢献したい。次なる課題は、若手の人材育成

片岡 詳子

株式会社ファーストリテイリング
グループ法務部 
リスクマネジメント/コンプライアンスチーム リーダー
弁護士(1998年登録、50期)

#7

新時代のWork Front 開拓者たち

グループ会社のあらゆる法務ニーズに8人で対応

おなじみのユニクロなど、国内外にアパレル約20社を持つファーストリテイリング。グループの総店舗数は実に約2000店。アメリカのGAPやスウェーデンのH&Mのような世界的なアパレル企業グループを目指し、M&Aにも積極的だ。そんな同社のグループ法務部は、実働部隊8人。国内法務チーム、海外法務チーム、リスクマネジメント/コンプライアンスチームの3つに分かれ、グループ全社の法務ニーズに応える。

「私は、リスクマネジメントとコンプライアンスに関連した業務を担う、“リス・コン”チームのリーダーという位置づけですが、何でもやらなければならないのが実情です」とは、2007年11月より同社のインハウスとして活躍する片岡詳子氏だ。業務は契約関連、顧客とのトラブル解決、取締役会事務局、ホットライン対応など、多岐にわたる。

「当社の法務部員は皆、優秀ですし、訴訟件数は少ないので、今のところ弁護士の”資格“は重視されていません。ただ弁護士である以上、会社は一定レベル以上の法律の知識と技術、経験などを期待しているはずです。そこで、プライベートの時間は、弁護士会のセミナーや日本組織内弁護士協会の活動に参加するなどして、弁護士としての能力維持と他社のインハウスロイヤーとの交流を図っています」

きっかけは司法改革。生き残りに危機意識を持つ

大阪の法律事務所で、弁護士人生をスタートさせた片岡氏だが、就職活動は人一倍苦労したという。

「訪問した事務所は40軒くらい。名門大学を出たわけでもなく、27歳になっていた私に、声をかけてくれた事務所はひとつだけでした」

入所した先のボス弁は、損害保険会社の代理人を務めていた。業務はボス弁が損保の案件を担当し、それ以外は片岡氏という役割分担。個人・法人にかかわらず、民事、商事、家事、刑事と何でもこなした。仕事は面白かったが、方向性の違いから2年で退所。時同じくして独立を考えていた友人と共同事務所を設立し、経営者になった。

「ほかの法律事務所に転職する道もありましたが、いずれ独立するなら早い方がいいと思って。それに、何でもできるという自信もありましたから」

一般民事を中心に、さまざまな案件処理に向かう日々。事務所も軌道に乗り、「これならやっていける」と実感する一方で、「このまま、小さくまとまっていってしまうのでは」という危機意識を持つようになる。

「ちょうど、司法改革が始まって、法曹人口の増員が日弁連で決議された頃でした。これから先、弁護士として生き残っていくためには、高い専門性や新分野での経験、幅広い人脈といったものを備えていく必要がある、と考えたのです」

大手老舗メーカーのインハウスとして再出発

独立して1年半で片岡氏は事務所を友人に託し、松下電器産業(現パナソニック)に入社。インハウスロイヤーに転身した。

「松下を選んだのは、実家が近かったから。松下は私にとって身近な地元企業だったんです。会社員になることで仮に収入が減っても、実家から通えばなんとかなるという単純な発想もありました(笑)」

しかし、当時の同社は弁護士資格を持つ社員を募集していたわけではない。「企業には法務部があるのだから、法律の知識が生かせる仕事はいくらでもあるはず」という鋭い勘どころで、同社に勤める友人に履歴書を託したという。彼女の履歴書が法務部門のトップの目に留まり、トントン拍子に採用が決定。当時三十数万人いた社員の中で、唯一の日本の弁護士有資格者であった。

「それまで組織で仕事をした経験がなかったので、面食らうことばかり。“報・連・相”すら、何のことだかわかりませんでした(笑)。けれど、協調性はあるほうですから、環境に慣れることから始めました」

松下電器産業といえば、世界を舞台に事業を展開する巨大企業である。初めて配属された先では、会社法まわりや、知財など、それまで無縁だった案件に携わり、一気に活躍の幅を広げていった。そんな時、業績不振を理由に企業年金の給付利率を一律2%引き下げられたことに反発した同社の退職者が、減額分の支払いを求めて集団提訴(福祉年金訴訟)。片岡氏は、同社の代理人として03年5月の提訴以降、会社の勝訴が確定した07年5月の最高裁決定までの一切に関わる。

「丸4年闘った難しい裁判に勝ったときは、ひと仕事やり終えた、という充足感がありました。けれど、法務部員として特別な評価を得ることはありませんでした。会社員ですから仕方ない部分もありますけど、正直寂しかったですね」

そんなある日、ヘッドハンターから「ファーストリテイリングが法務部で働く弁護士有資格者を探している」との電話があり、さんざん悩んだ末これに応じた。

「ここには、個性と可能性にあふれた若さがあります。皆とワイワイやりながら、自分の専門性を生かして会社の発展に尽くすこともできる。革新性のあるスピード経営を実践する柳井社長とは、直接語り合うこともしばしば。そんな環境が私に合っている気がします。ここでインハウスとしての成果を上げ、日本企業のインハウスロイヤーの成功事例になりたいですね」