「私が入社した2008年には、まだ法務部がありませんでした。私は、入社前から外部の立場でホールディングス化に伴う分社化と持ち株会社設立などの業務に関わっていましたが、入社後は、一人法務としてまずコンプライアンス・ガバナンス強化に着手し、一方で人員補強に取り掛かったのです。ロースクール卒業生など法律の素養があり、将来にわたって戦力として期待できる人材を採用。会社も法務部も体制が整った現在は、契約法務が中心になっていますが、先述した新規事業や他社とのジョイントが次々に生まれ、他部署からの日常的な法務相談や訴訟対応もありますので、仕事は繁忙です。また権利開発部と協力しつつ、テレビ・CM出演やコンテンツ類の契約も法務部がチェックしています」
部内の役割分担はどうなっているのだろうか。
「二人の女性メンバーが契約書チェックを担当。一人は商標権や個人情報に関わる案件も担当しており、もう一人は英語力を生かし海外との取引に活躍しています。男性では映画事業の条件交渉も含めた契約担当が1名。他部門と兼務しているメンバーは、小規模子会社のガバナンスを含めた管理を行っています。私は業務全体の管理に加え、主要会議に参加して経営判断のサポートにあたり、全社のリスクマネジメントやコンプライアンスも所管。結果として法務部は制作・マネジメント・広報・映画事業・ネット事業、DVD・CD販売、経理など全ての部署や子会社と連携を持っています」
記憶に新しいTOB※で、氏と法務部はどのような役割を果たしたのだろうか。
「国内エンタメ企業初という事案、また私自身も未経験のTOBに関われたのは良い経験でした。振り返ってみると、人気に影響されやすくゴシップも多い業界の特徴からか、多くのことがリスクと見られがち。その誤解を解くことが難しかったなと思います。しかし打診を受け、社内で調整、デューデリジェンスを受け、第三者委員会を立ち上げ、希望条件を通し、賛同決議する一連の流れ全体に関われたことは、法律家として実に良い経験だったと思っています」
※2010年、元ソニー株式会社CEO出井伸之氏が組成するクオンタム・エンターテイメント株式会社による株式の公開買い付けを受けた。