さて、インハウスローヤーの利点の一つは、ワークライフバランスの実現を会社が後押ししてくれることだろう。実際、本間氏の〝旗振り効果〞もあり、法務部の有給休暇消化率は高い。子育て中の芝田氏は言う。
「私は昨年から施行された在宅勤務制度を活用し、育児と仕事の両立を図っています。担当業務に裁量があるということは〝無限責任〞であり、また〝課題は見つけた人がやる〞というカルチャーなので、私は仕事を自らつくってしまうほうですが(笑)。任せてもらえる環境であること、法務の枠にはまらない仕事ができること、そして自分のやり方次第で仕事の進め方をコントロールできるという点が、やりがいになっています」
金子氏も自身のやりがいについて次のように話してくれた。
「自らの発言や関与が、会社の方針や利益、あるいは損失に直結する――つまり〝代理人〞ではなく当事者として働けるということが、まず一つ。また、自分一人で完結する仕事はなく、財務や経営戦略、マーケティングや生産・技術のエキスパートと専門知識をぶつけ合い、互いの意見を述べながら課題を解決し、ビジネスを創造していける点がインハウスならではのやりがいではないかと思います」
自由に仕事をクリエイトできるのはプロ集団であればこそ。しかし、全員が基本を忘れないようにと、本間氏が明文化したのが「法務部の十誡」だ。「リスクの管理とオポチュニティの活用という〝結果を出す〞こと」「検討に必要な事実を積極的に収集せよ」「解決(ソリューション)を示せ」など、明快な指針が並ぶ。これが法務部員の仕事の根底にある心得になっている。
「当社の社員は皆、法務部から言われたことをまっすぐ受け止める。我々が間違った判断をして『ダメ』というと、事業が止まりかねない。それだけ法務部のメンバーの言葉や行動、判断は重いということを、常日頃から意識してほしいと考え、共有しています」と本間氏。指針からぶれず、自信を持って意見を発信し、行動できる人材。そうした真のプロを求めている。