同社リーガルチームの業務について桑名氏は、「金融機関との折衝や銀行協会への対応などタフな交渉が多く、活動領域は多岐にわたる」と言う。実際、18年9月に公表された金融庁の「電子決済等代行業に係る規制等を含む銀行法施行令などの一部を改正する政令・内閣府令案等」において、金融庁のヒアリングやパブリックコメントの作成にリーガルチームが深く関与、同社は電子決済等代行業の登録第1号となっている。
一方で、契約書作成や日々の法律相談はもちろん、社内体制の整備も重要な任務だ。
「電子署名の推進、ネット上のやりとりだけで契約を完結させる電子契約システムの構築などが一例です。法律的な側面をカバーするだけでなく、現場にヒアリングし、オペレーションを検討します」(桑名氏)
また、労務関係も担当する中山氏は人事と協働して、制度の改善に尽力する。
「フレックス制の導入や裁量労働の制度をつくり、個々の社員にフィットした働き方を支援しています」(中山氏)
昨年秋には、新たに2名がリーガルチームに参画した。彼らに共通するのは、リーガルスペシャリストというだけでなく、〝法務の運営〞に関する経験が豊富という点だ。
「何もない状態から主体的に法務体制のあり方を構築できるところは、私たちの大きなやりがいになっています。ただ、ゼロからつくりだすには、私たちがビジネスの全容を知ることが第一。ですから積極的に、私たちも現場とコミュニケーションをとっています。しかし弊社では、社員の大半が法務の業務への理解を持っていて、協働してくれるので、非常に助かっています」(桑名氏)
こうした桑名氏の言葉は、同社の強さの一端を物語る。バックオフィスであるリーガル部門と現場が、互いの仕事を理解し合っていることを示すからだ。さて、同社リーガルチームが掲げるミッションは2つ。①ビジネスのブレーキではなく、共にビジネスを創るアドバイザーであること、②先進的なリーガル・コンプライアンス体制を実現することだ。
「例えば新規ビジネス立ち上げの際、単純に法令を示して『できない』と答えるのではなく、法令を精査してサービスの方向性を見定め、リスクを洗い出し、自社のビジョンに照らしてリソースなども考慮したうえで現場に回答していくことが必要。現場に即応し、各自が存分に活躍できることを、私たちは目指しています」(中山氏)
同社のサービスは、クラウド会計・人事労務・会社設立・マイナンバー管理など。ユーザーにとっては、使い勝手のよさはもちろんだが、セキュリティ面もサービスを選択する際の重要なポイントだ。法務はそうしたサービスを提供するうえで、法的な側面から〝信頼を担保〞し、サービスの質を高める一助を担っている。
「私たちリーガルチームだけでなく、〝全社的にチームで働く意識〞が、大きなプロジェクトを成功させるために不可欠な要素となっています。それが一つひとつのプロジェクトで実現できていることが、私たちの組織および仕事の魅力になっています。多くの人を巻き込みながら、チームワークを尊重し、かつ自ら率先してプロジェクトを推進していける方、ITやFintech領域に感度の高いリーガルプロフェッショナルと共に、弊社事業を盛り立てていきたいと考えます」(桑名氏)