Vol.67
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法務本部のメンバーは6名(派遣社員含む)。有資格者は、うち2名。左から、桑名直樹氏(65期)、五十嵐沙織氏(66期)、渡邉涼子氏、中山一道氏

法務本部のメンバーは6名(派遣社員含む)。有資格者は、うち2名。左から、桑名直樹氏(65期)、五十嵐沙織氏(66期)、渡邉涼子氏、中山一道氏

THE LEGAL DEPARTMENT

#92

freee株式会社 法務本部

変化著しいFintechビジネスをリードすべくチームワークあるリーガルオペレーションを目指す

急成長企業にこそ強力な法務体制を!

2013年に「クラウド会計ソフトfreee(フリー)」をリリースして以来、急速な成長を遂げるfreee。派遣社員を含めて600名を超える企業規模に対応するため、17年に総務部から独立した法務セクションを設けることになった。

「リーガルがビジネスにかかわる案件が急増し、外部の法律事務所に依頼するだけでは対応できなくなりました。また、会社の規模が大きくなったことでガバナンスを整備する必要が出てきたのです。加えて、ビジネススキームの詳細を詰めるためにリーガルの存在が不可欠になったことも大きな要因です」

freee株式会社 法務本部
2018年に新たに加わった渡邉涼子氏と五十嵐沙織氏。「いわゆるコーポレート法務以外の分野に積極的にかかわるチームです」と渡邉氏。法律事務所やコンサルを経て入社した五十嵐氏は「経営に近い立場でスピード感溢れるビジネスを経験できるのがメリット」と語る

そう語るのは〝新〞法務の設立に携わった法務本部長兼事業開発部長の桑名直樹氏だ。業務や企業規模の拡大が引き金になったとはいえ、約600名の陣容で弁護士2名を含む4名の法務専任スタッフを擁するケースはめずらしい。桑名氏と同日に入社した法務本部マネージャーの中山一道氏は、「ナレッジの共有をコントロールすることも、リーガルチーム強化の目的でした」と語る。

同社が主軸とするFintech領域は、国内外で存在価値を増しているが、少なくとも国内では、そのすべてを理解する法務スペシャリストが足りているとはいえない状況だ。しかしそうした中、同社には桑名氏と中山氏という、ITおよびFintech領域に興味・関心の高いリーガルプロフェッショナルが参集することとなった。

  • freee株式会社 法務本部
    ベースとなる法務の執務スペース
  • freee株式会社 法務本部
    同社は「好きな場所で仕事ができる」環境。こたつや卓球台が置かれたフリースペースなど、社内の様々な場所で多様なメンバーが出入りしながら、打ち合わせをし、企画書を作成している

ビジネスの加速を法的にサポート

同社リーガルチームの業務について桑名氏は、「金融機関との折衝や銀行協会への対応などタフな交渉が多く、活動領域は多岐にわたる」と言う。実際、18年9月に公表された金融庁の「電子決済等代行業に係る規制等を含む銀行法施行令などの一部を改正する政令・内閣府令案等」において、金融庁のヒアリングやパブリックコメントの作成にリーガルチームが深く関与、同社は電子決済等代行業の登録第1号となっている。

一方で、契約書作成や日々の法律相談はもちろん、社内体制の整備も重要な任務だ。

「電子署名の推進、ネット上のやりとりだけで契約を完結させる電子契約システムの構築などが一例です。法律的な側面をカバーするだけでなく、現場にヒアリングし、オペレーションを検討します」(桑名氏)

また、労務関係も担当する中山氏は人事と協働して、制度の改善に尽力する。

「フレックス制の導入や裁量労働の制度をつくり、個々の社員にフィットした働き方を支援しています」(中山氏)

昨年秋には、新たに2名がリーガルチームに参画した。彼らに共通するのは、リーガルスペシャリストというだけでなく、〝法務の運営〞に関する経験が豊富という点だ。

「何もない状態から主体的に法務体制のあり方を構築できるところは、私たちの大きなやりがいになっています。ただ、ゼロからつくりだすには、私たちがビジネスの全容を知ることが第一。ですから積極的に、私たちも現場とコミュニケーションをとっています。しかし弊社では、社員の大半が法務の業務への理解を持っていて、協働してくれるので、非常に助かっています」(桑名氏)

こうした桑名氏の言葉は、同社の強さの一端を物語る。バックオフィスであるリーガル部門と現場が、互いの仕事を理解し合っていることを示すからだ。さて、同社リーガルチームが掲げるミッションは2つ。①ビジネスのブレーキではなく、共にビジネスを創るアドバイザーであること、②先進的なリーガル・コンプライアンス体制を実現することだ。

「例えば新規ビジネス立ち上げの際、単純に法令を示して『できない』と答えるのではなく、法令を精査してサービスの方向性を見定め、リスクを洗い出し、自社のビジョンに照らしてリソースなども考慮したうえで現場に回答していくことが必要。現場に即応し、各自が存分に活躍できることを、私たちは目指しています」(中山氏)

同社のサービスは、クラウド会計・人事労務・会社設立・マイナンバー管理など。ユーザーにとっては、使い勝手のよさはもちろんだが、セキュリティ面もサービスを選択する際の重要なポイントだ。法務はそうしたサービスを提供するうえで、法的な側面から〝信頼を担保〞し、サービスの質を高める一助を担っている。

「私たちリーガルチームだけでなく、〝全社的にチームで働く意識〞が、大きなプロジェクトを成功させるために不可欠な要素となっています。それが一つひとつのプロジェクトで実現できていることが、私たちの組織および仕事の魅力になっています。多くの人を巻き込みながら、チームワークを尊重し、かつ自ら率先してプロジェクトを推進していける方、ITやFintech領域に感度の高いリーガルプロフェッショナルと共に、弊社事業を盛り立てていきたいと考えます」(桑名氏)

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    同社では、社内コミュニケーションの施策として「スナック燕」を定期開催。オンオフ問わずコミュニケーションを深める機会がある