Vol.86
HOME法務最前線大塚製薬株式会社
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

海外留学中の部員と育休中の部員を加えた13名の陣容(2023年7月時点)。中途入社、司法修習生からの入社、大学新卒入社とバックグラウンドは様々。現在、日本法弁護士7名、米国法弁護士2名が所属する。大塚製薬と子会社の法務担当者を合わせると約80名規模となる

海外留学中の部員と育休中の部員を加えた13名の陣容(2023年7月時点)。中途入社、司法修習生からの入社、大学新卒入社とバックグラウンドは様々。現在、日本法弁護士7名、米国法弁護士2名が所属する。大塚製薬と子会社の法務担当者を合わせると約80名規模となる

THE LEGAL DEPARTMENT

#140

大塚製薬株式会社 法務部

先例にとらわれない創造的な仕事で、“事業部とともに考える法務”を目指す

グローバル展開するプロジェクトが増加中

1964年の設立以来、医療関連事業とニュートラシューティカルズ(NC)(※1)関連事業の2事業で、世界の人々の健康に向き合ってきた大塚製薬株式会社。「ものまねをせず、世界に通じるものを創る」を基本に革新的な新薬や画期的な製品づくりに取り組んできた。デジタルを活用した健康課題解決への取り組みにも「これからのヘルスケアにおいてさらに重要となる」として注力する。

2021年にグループ創業100周年を迎えたが、次の100年に向けて、時代に即した健康課題の解決や新しい市場の創出に力を入れていく考えだ。

法務部の業務について、部長の森山亮子氏にうかがった。

「法務部がサポートする範囲は、各事業部からの法律相談対応、契約書の作成・レビュー、子会社や合併会社の設立時の運営サポート、紛争対応、ガバナンス構築のためのアドバイス、社内法務教育などです。法的思考を生かし、新たな事業アイデアにおけるビジネスの枠組みを提案したり、一緒に検討を行うことも多々あります」

国内製薬企業に先駆けて、73年からアジアに進出、その後、欧米へ――と、独自のグローバル展開をしてきた同社。アジア・アラブ・アフリカ諸国への進出にあたっては地域の独自性に対応すべくOIAA事業部(※2)を設置、法務部も専任担当を置く。

「OIAA事業の法務は同専任担当者がメインで遂行していますが、欧州・北米市場の事業は医薬品事業部・NC事業部が各々担当しているため、OIAA事業専任担当以外の法務部員も買収、出資、共同研究開発、共同販売ライセンスなどの海外案件に関与します」(森山氏)

各自が様々なプロジェクトで、各国の事業部、法務担当などと連携し、グローバル会議に参加するなどして業務を遂行する。担当業務にもよるが、法務部では経験年数・ポジションが上がるにつれて海外案件が増える傾向にあり、担当業務のほとんどが海外案件という管理職もいる。海外案件といっても海外会社との契約交渉や海外子会社とのプロジェクトだけを指すのではなく、海外子会社統括のあり方など社内検討も含む。

このように、グローバルで新たな事業の創出などに取り組む同部のミッションは、「先例創造、俯瞰、信頼」だ。

「当社はイノベーションを重視しています。法務部としては過去から学びながらもそれに縛られず、創造的・建設的な提案で当社の将来を切り開く推進力になりたいと考えています。また、法務部はすべての部署から相談を受ける立場であるからこそ、全社最適と、大塚製薬の未来を考えたアドバイスや判断ができる部署です。どんな相談に対しても親身でありながらも迎合せず、客観的な視点を忘れず対応することで、信頼を一層強固なものにしていこうと奮闘しています」(森山氏)

※1:ニュートラシューティカルズ(NC)/栄養を意味するニュートリションと医薬品を意味するファーマシューティカルズを組み合わせた言葉
※2:OIAA事業部/Otsuka International Asia Arab Division。アジア・アラブ・アフリカ・オセアニアのグループ各社を統括するため2001年に創設された

医薬関係、生産・工場、NC関連事業製品、OIAA事業エリア、診断事業・デジタルシステム系と、部内を事業で担当分け。また、垣根を越えたチーム編成も多々。数年に一度、ローテーションも行う

多様な業務経験を通じ、広い視野が養える

「せっかく大塚製薬で働くのだから、いろいろな経験をしてほしい」という考えから、若手部員に対しても積極的に仕事を任せているという。法務部課長の賀勢修一氏が、印象に残る若手の頃の仕事について教えてくれた。

「入社6年目の時に、新たな事業展開として立ち上げたあるグループ会社の法務も担当することになりました。いわば一人法務として直接そのグループ会社の社長・役員などとやりとりをしながら、取締役会向けの法務的な資料の作成や説明、出資案件の検討、提携先との交渉の支援、クライシス対応などの業務を行いました。約4年担当しましたが、苦労した一方で面白い経験も多く、充実した時間を過ごせました。どんな仕事でも『ここから先は法務の業務ではない』と枠をはめてしまうと、事業への貢献はそこで終わってしまいます。だからこそ『事業を推し進めるため、また経営者が決断できるよう、自分がどう役に立てるか』と考えながら日々精進することで信頼が得られましたし、いろいろな業務経験を通じて広い視野を養うことができました」

インハウスローヤーならではのやりがいも教えてくれた。

「企業法務部では、弁護士の資格の有無はさほど重要ではありません。そのなかでインハウスローヤーとしての自分の価値を何に置くかですが、私の場合は、課題解決の手助けを法的創造力を駆使して多角的に提案できる点と考えます。相談できる仲間が同じ部にいる環境で、自分自身が判断を繰り返しつつ、事業部門に親身に向き合い、大塚製薬というチームの一員として、経営の意思決定に近いところにかかわれることが、やりがいの一つです」(賀勢氏)

森山氏にも、印象に残っている案件をうかがった。

「私の部長就任直後の最初の大仕事は、米国訴訟でした。米国子会社に在籍する法務部員(弁護士)とともに対応にあたりました。それまでも米国の訴訟法の勉強はしてきたつもりですし、経験もありましたが、“訴訟弁護士”の経歴を持つ米国子会社の担当者はさらに知識も経験も持っている。その人に意見やアドバイスをもらいつつ、私もグローバルHQの法務責任者として適宜判断を下していく。そのような仕事の進め方を何カ月か続けるうちに、お互いをリスペクトする感情も親近感も増してゆきました。頻繁に会えない海外子会社の仲間とも業務を通じて、ともに喜べる深い関係が築けることも、当社で仕事をする楽しさだと感じる一例です」(森山氏)

事業の成長を支える法務部でありたい

同部で求められる力と、育てていきたい人材について森山氏に聞いた。

「大きくは3つです。1つめは、多角的に物事を見る力です。特にNC関連事業ではプロモーションなどでSNSを活用することも多いため、レピュテーションリスク、社会的評価を踏まえた判断が必要になります。近年は法律の枠を超えて、地政学リスクも考慮しなくてはならないケースが多いですし、“法律の専門家だから法律だけ”ではなく、社会情勢に幅広く興味を持ち、それも踏まえて判断をする力が必要です。2つめがリーガルテックに興味を持ち、どのように導入するのが適切か判断する力です。今後人材の流動性が高くなる可能性を考えると、ナレッジシェアに有効で、かつ各部員の業務を効率化して戦略立案のための時間を生み出してくれるリーガルテック導入は、法務部の重要課題の一つ。その素養がある人材も、法務にとって重要です。3つめがグローバルな業務スキルで、これは語学力よりマインドが重要だと考えています。海外のグループ会社と協力して事業検討する場面では、場の空気を読んで遠慮したりせずに、会議の場で疑問があれば質問し、意見を述べ、意見が異なる人と討議をする気持ちを持つことが必要。これらのいずれかの力を持っている人を集めたいですし、また育てていきたいですね」

こうした力のほかに、同社事業・製品ならではの知識、知見の習得も必要となる。

「医薬品や科学的根拠に基づくエビデンスベースなNC関連事業製品を取り扱うにあたり、薬機法その他のヘルスケア関連規制に関する基本的な知見は必須です。薬機法に絡む各種申請業務などは薬事部門などほかの専門部署が担当しますが、変則的な対応が必要となったり大きな問題が生じた時は、当部員も対策チームに参加します。基本理解のもと、ヘルスケア関連規制の勘所は持っておく必要があります。そのような勘所は、OJTや事例勉強会を通じて当部の部員にも養ってもらっています」(賀勢氏)

なお、働きやすい環境づくりについては時短勤務のほか、「ファミリースマイルサポート制度」という、出産を控えた女性社員や小学校1年生以下の子どもを育てる社員、介護中の社員が、在宅勤務中心に執務できる制度もある。

最後に、法務部が“目指す姿”を聞いた。

「法務の仕事は決断の連続です。事業部と一緒に走りながら、小さな決断を日々繰り返すことで、大きな決断に対してもひるまない法務部員をきちんと育てられる組織でありたいです」(賀勢氏)

「事業部からも経営者からも『法務部のおかげで、社会的に見て適切な方向に会社が成長している』と強く思ってもらえる組織を目指していきたいです」(森山氏)

医療関連事業と、世の中にまだない新たなカテゴリーを創出する“ニュートラシューティカルズ”関連事業の2本柱に注力。後者の代表的な製品である「ポカリスエット」は点滴、「カロリーメイト」は濃厚流動食、「オロナミンCドリンク」は医薬用栄養ドリンクと、医療関連事業で培ってきた知見・科学的根拠を基に開発された