Vol.69
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取材当日に参集したメンバー。このうち有資格者は、森氏、宮内氏、宮原氏のほか、井芹岳史氏(55期)、草薙俊輔氏(61期)、白沢勇樹氏(61期)、木下美希氏(62期)

取材当日に参集したメンバー。このうち有資格者は、森氏、宮内氏、宮原氏のほか、井芹岳史氏(55期)、草薙俊輔氏(61期)、白沢勇樹氏(61期)、木下美希氏(62期)

THE LEGAL DEPARTMENT

#95

野村證券株式会社 法務部/トランザクション・リーガル部

各自の強みを生かしたチームワークで、グループ事業の発展に寄与する法務部門

ビジネスを共につくり出す法務

野村グループは、持株会社である野村ホールディングスと国内外の子会社で構成された世界30カ国・地域を超えるネットワークを有するグローバル金融サービス・グループだ。営業、アセット・マネジメント、ホールセール、マーチャント・バンキングと、4つのセグメントが連携し合い、商品、サービスを提供している。そのビジネス活動において法的支援を行う森貴子氏、宮内佐和子氏、宮原裕介氏に、お話をうかがった。まずは、法務体制について。

「野村グループの日本法務部門は、法務担当役員のもとで3部体制を敷いています。野村證券下で同社コーポレート業務などを担当する法務部と、主にホールセールの金融取引を担当するトランザクション・リーガル部(TL部)、そして野村ホールディングスの法務や子会社の管理を主に担当するグループ法務部となります。なお野村證券の法務部・TL部の部員の多くはホールディングスのグループ法務部も兼務しています。3部合わせて64名が所属し、その全員で野村グループの法務をカバーしているのです」(森氏)

森、宮内、宮原三氏は法律事務所出身。入社動機は「グローバル展開する企業でビジネスにかかわりたい」「受け身ではなくプロアクティブなインハウスローヤーを目指す」「先端的な金融取引などファイナンス分野で専門性を高める」など。森氏は昨年までニューヨークの拠点に駐在し、ジェネラルカウンセルのサポートを務めた。

「アメリカには法務部員が50名ほどいます(駐在員は基本的に1名のみ)。帰国前の1年間は米州リーガル部門のCOOとして部全体を管理しました。アメリカでの訴訟手続においては、日本とアメリカの制度の違い、日本人にとって米国法の理解しづらい点の説明など、日米リーガルの橋渡し的な役割も。日本から海外へ駐在する者は少数ですが、特にTL部ではクロスボーダー案件への関与も多く、日本にいながら各国のリーガルメンバーであるローヤーたちと日常的にやりとりしています」(森氏)。

米国、ロンドンを中心とする欧州、香港を中心とするアジア、インドなど各リージョンのメンバーとの情報共有を頻繁に行っており、「常に世界に目を向けていられる状況です」と森氏。

TL部の重要な役割の一つに、仕組債の発行やデリバティブなどホールセールの金融取引サポートがある。宮原氏はそのうち、店頭デリバティブに関するドキュメンテーションの作成・サポート、およびリスク管理や規制周りのチェックを担当する。

「マイナス金利導入の際、店頭デリバティブ取引とその担保にかかるマイナス金利授受の要否をめぐって、契約上の解釈について議論が起きました。日本法のみならず、米国法(NY法)、英国法における解釈や実務も確認しながら、業界団体や外部法律事務所と協議を行いました。その結果を社内の多数の案件に個別に適用した際は、やりがいを感じました」(宮原氏)

また、宮内氏が所属する法務部および同部内のグループ法務部兼務者は、コーポレートセクレタリー、営業部門のサポート、訴訟対応、TL部担当以外の契約周りのサポート(野村グループでのM&Aなど)、知的財産権の管理、開示(米国SECへ提出する年次報告書作成など含む)、税制およびレギュラトリーなどに絡む社内からの意見収集・相談などを幅広く担当する。

「当社はそもそも規制業種ですから、これまでは〝コンプライアンス寄り〞の法務的視点で対処しがちだったように感じます。しかし近年は、例えば契約交渉時のリスクの指摘に留まらず、〝ビジネスをいかにして進めるか〞という提案を各自ができるようになってきています。部全体にそうしたマインドが広がってきていることや、解決や推進のための提案ができる知識が蓄積されつつあることを実感します。提案の結果、フロントなどの部署から感謝してもらえることが、大きな喜びです」

三氏の職掌はそれぞれ異なるが、共通するのは「営業など他部署と協働してビジネス・取引をつくること」――これを同社法務の大切なミッションと捉えている。

野村證券株式会社 法務部/トランザクション・リーガル部
法務担当役員、両部長、海外からの出張者とのミーティング

各自強みを合わせチーム力を高める

目に見えない金融商品・サービスを扱う同社。それをかたちづくるのが契約や法律だ。

「金融機関という特性上、リーガルのプロがビジネスに参画することを早期段階で求められます。TL部という部を設けていること自体がその証」と森氏。法務もビジネスチームの一員として機能することが強く求められるのだ。

「日本の法務部門には、企業法務全般や国際案件、金融取引分野が得意なメンバー、ドキュメンテーションのスペシャリストと呼ばれるメンバー、デリバティブ規制などに特化した専門知識を持つメンバーなど、資格の有無を問わず、それぞれの強みを誇る多様な人材が集結しています。そうした各自の能力を結束し、学び合い、より質の高いサービスをフロント部署へ、そしてお客さまへ提供しています。また、チームワークの良さも当部門の誇り。当社の様々な部署と〝一つのチーム〞となって事業を進められることが、各自のやりがいにつながっていると思います」(森氏)

森氏は、今後「各自がそれぞれの強みを生かし、チーム力を高めれば効率も上がる。成果の質とスピード感、その両方を向上させた組織をつくっていきたい」と語る。

最後に、森氏にインハウスローヤーの魅力をうかがった。

「法律事務所のチームは法律のスペシャリスト集団、企業法務部のチームはビジネスのスペシャリスト集団だと考えます。様々な立場のスタッフとチームを組むことで、より広い視野で物事を見ることができ、より大きな達成感を味わうことができます。また、混沌とした状況からかかわり、論理的に問題を整理し、解決策を共に考えてビジネスをつくり上げるという面白さが味わえるのは、インハウスローヤーならでは。加えて、企業内での法律の専門家の仕事やキャリアパスは法務部門内に限るものではなく、実際に当社では海外拠点を含め、ローヤーの資格を持ちながらビジネスの最前線の部門で働くなど、多様なキャリアパスを描くメンバーが少なくありません。まずは法務部門の一員として能力を発揮してくれることを望みますが、将来的に会社の中で様々な選択肢と活躍可能性もあるというフレキシブルな考え方を、私としては大事にしていきたい。この点も、当社のインハウスローヤーの魅力ではないでしょうか」

野村證券株式会社 法務部/トランザクション・リーガル部
法務担当役員を囲んで。日本の法務部門のメンバーは64名。うち日本法有資格者13名、日本法外国法有資格者5名、外国法有資格者3名が所属