投資信託を中心とした金融商品の企画、組成・運用を行う大和アセットマネジメント株式会社。大和証券グループの資産運用ビジネスを担う中核会社であり、多様なアセットの運用実績と業界トップクラスの運用資産残高を有する。法務コンプライアンス部の永谷修一部長に、同部の役割を聞いた。
「当社は資産運用会社として、お客さまから託された資産を運用して最善の利益を追求しつつ、その活動を通じて、社会にどう貢献していくかが求められています。つまり、お客さまと社会から信頼されて初めて成り立つビジネスですが、目に見えない資産という商品を扱い、信頼を得ていくためには、リーガルとコンプライアンスに裏付けられた業務を遂行していることが非常に重要。その要となる役割を担っているのが、当部です」
ゆえに同部のミッションは、「経営戦略に沿った攻めの業務活動および、新規事業・新商品の開発などの推進をリーガル面からサポートするナビゲーターと、それらを取り巻くコンプライアンスリスクを適切に管理・コントロールするガーディアン。この2つの視点を持ち、バランスを取りつつ業務にあたること」と、永谷氏は言う。
同社は資産運用業界のなかでも、新たな投資対象や投資機会発掘の挑戦意欲が高いといわれる。一例が、米国株式のなかから企業の無形資産価値の高さに着目してポートフォリオを構築し、信託財産の成長を目指す投資信託だ。家門紋氏に、商品開発や新規事業分野における取り組み例をうかがった。
「ビジネス環境が急速に変化し続けるなか、競争力の源泉は、物理的な生産設備から、人々のアイデアや発想など、従来の財務諸表では把握できない源泉、つまり無形資産にシフトしつつあります。顧客満足、従業員エンゲージメント・人材開発、イノベーション、社会的責任など無形資産を評価するスコアを米国の研究機関と共同で作成し、そのスコアに基づいて運営していく、新しい投資信託です。当社の米国現地法人を介しつつ、我々が中心となって高度かつ複雑な契約交渉や契約書審査を行いました。ほかにも、これまで投資機会が限られていたベンチャーキャピタル・ファンドを投資対象とする投資信託を開発したり、お客さまの多様な投資ニーズに応えるため、商品数と事業領域は年々拡大しています。それに伴い、我々も、新たな投資対象・業務形態に対する法的課題の洗い出しと解決、内部管理態勢の構築・整備を行っており、法規制が追い付いていない新たな分野についても、プロアクティブに対応しています」
運用会社では、金融商品取引法で規制がかかる運用行為に対する取引審査課業務についても、ナビゲーター的な側面が期待される。取引審査課の嶋三裕氏は言う。
「我々は不公正取引の抑止・防止を担うガーディアンであることが第一義ですが、運用スタイルの多様化に伴い、ファンドマネージャーなど第一線からエンゲージメントやESGといった非財務情報に関する質問や相談も寄せられます。そのように誰も経験したことがない事案の場合でも、保守的になりすぎず、抑制しすぎず、実現のための方法を課内で議論し、結論を出す機会が増えました」
「日本経済活性化のために、資産運用会社自体が元気であることが重要だと考えます。意欲的に新たな挑戦を行う当社において、経営直轄の戦略部署ともいえる当部。社会的意義と、やりがいある仕事に携われる環境です」(永谷氏)