ビルディング本部、ロジスティクス本部や22年に新設されたサステナビリティ推進本部などを担当してきた春田大吾氏(65期)に、インハウスローヤーとしての醍醐味についてうかがった。
「数年前から、当社が運営する施設の使用電力の“グリーン化”案件に携わっています。これは、電力会社と連携して、非化石証書由来の環境価値がついた電気をテナントなどに供給するというもの。今でこそ、論文や関連書籍があり、ナレッジもある程度まとまっていますが、私が本件にかかわり始めた頃は、まとまった情報はほぼなく、暗闇のなかを手探りで進むような状態でした。そのような状況でも、存在する情報を最大限吸収し、想定されるリスクや法規制を確認しつつ、担当部門とワンチームで事業をゼロからつくり上げることができました。こうした新規性の高い案件やゼロから事業をつくり上げる案件に携われるのは、インハウスローヤーの醍醐味だと思います」
そんな春田氏が意識しているのは、一般的な法律知識を述べるにとどまらず、当事者として担当部門に伴走することだという。
「法律事務を取り扱ううえで一般的な法律知識が必要なことは言わずもがなですが、インハウスローヤーの場合、それに加えて自社の社則やポリシー、過去の事例、そこから蓄積されたナレッジなど、自社ならではの事情にも精通している必要があると思います。いずれについても日々研鑽の必要性を痛感しておりますが、法律知識と自社ならではの事情両方を踏まえながら、課題の発見から意思決定まで担当部門に伴走することがインハウスローヤーに求められる役割だと思っています。例えば当社の本業といえる不動産開発では、一件一件、地権者や共同事業者といったステークホルダーの意向、法規制などを踏まえてスキームを構築していきます。そうした案件に一般的な法律知識のみで対応することは必ずしも十分ではなく、過去事例やそこからのナレッジなどを総動員しながら伴走するのが役割だと思っています」
同社には「MAG!C(マジック)」という事業提案制度がある。
「MAG!C案件では当社内にナレッジが蓄積されていないことが通常なので、他の案件よりも一層、インハウスローヤーが担当部門の一歩先をいき、課題の洗い出しなどを行って事業化をサポートしていくことが求められていると思います」(春田氏)