チェアマンや執行役員、理事との距離の近さも経営基盤本部に属する法務部の特徴だ。
「社員総会、理事会、経営会議には必ず法務も出席します。役員層・管理職層からは会議の場で、あらゆる議案において様々な角度から質問を受けるので、その対応も重要な任務となっています」
助川氏は、当初は10年間だった放映権契約を一部変更し、2年の契約期間延長となったDAZNとの契約締結にも関与している。
「前チェアマンを中心とした少人数の交渉チームに法務も入り、秘密裡に交渉を進めました。そうした、組織運営の根幹にかかわる事案に関与していけることも大きなやりがいです」
そのように、組織運営の要となる事案に対応する法務部だが、同法人内に、独立した部門として設立されたのは18年のこと。まだ、若い組織といえる。「ようやく、管理職層を含めた各部門の担当者が、様々なアクションが必要となった際、『これって法的にどうだっけ?』と意識して問い合わせてくれるように。法務と現場との垣根が低くなってきた」と、助川氏。
「国内外の事業者への放映権の販売、新たなデジタル技術の導入など、Jリーグが“外の世界”とつながるビジネスを活発化し始めたことや、コンプライアンスに対する意識の高まりが、我々のプレゼンスを向上させた理由といえます。リーガルリスクへの意識を継続的に高めていくことで、組織全体の“足腰”が強くなり、リスクも未然に表出しやすくなります。『法務部に相談すると最適解が見つかる』『新しいアイデアが見つかる』といった声を増やし、組織内の情報が最も集まる部として、他部門同士の橋渡しのような役割も果たしていきたい。今後も部のプレゼンスをさらに高めつつ、組織全体でリーガルリスクの低減・排除を実現するべく尽力していきます」
助川氏はさらに、組織内コミュニケーションの円滑化に向けて、様々な施策を企画・実施している。例えば、学校の“ホームルーム”にかけて、Web会議ツール上に「ほうむ(法務)ルーム」を設置。
「手元の案件がない時、急ぎの相談がない時でも、法務部メンバーと気軽に話をして、身近に感じてもらうことが狙いです。ほかにも『Jリーガルランチ』と称した、“堅苦しくない法務研修”も企画。著作権の基礎、選手契約の基礎などテーマを幅広く設定し、業務上必要となる法律が、より“身につきやすい研修”を目指しています。これらの取り組みがきっかけとなって、案件の話に発展したり、リスクの芽に気がつくこともあり、実施効果は高いと自負しています」