Vol.96
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PIONEERS

「寄り添い伴走型法務部支援」というオリジナル法務サービスを創造し、〝現場〟や経営判断を支えていく

キャサリン・オコーネル

オコーネル外国法事務弁護⼠事務所
外国法事務弁護士

#40

The One Revolution 新・開拓者たち〜 ある弁護士の挑戦 〜

母国のニュージーランドで日本人観光客を案内するツアーガイドから弁護士に転身した、キャサリン・オコーネル外国法事務弁護士。ニュージーランドの法律事務所、日本企業での法務責任者などを経験し、2018年に日本で独立。現在は、「寄り添い伴走型法務部支援サービス」を提供し、複数の日本企業をサポートする。様々な出会いやチャンスを生かし、自らのキャリアを〝リインベンション(再創造)〟し続けるオコーネル氏が見いだした、〝企業法務支援の新たなかたち〟とは。

日本への深い理解と信頼構築重視の姿勢

私は、人々の暮らしを支える製品やサービスを生み出す〝ものづくり企業〟が大好きで、来日して以降、メーカーに軸足を置いて企業法務をサポートしてきました。

これまでの経験のなかで、私の考え方・生き方に大きな影響を与えた出来事が2つあります。一つは、ある日本大手企業の不祥事後の再建で、法務機能をゼロから立ち上げる役割を担った時のこと。社内には当時、「早く忘れたい(面子を守りたい)」という感情と、「不祥事を繰り返さぬようガバナンスを強化したい」という決意が同時に存在していました。その時に痛感したのは、企業文化の変革や本質的な改善は、一方的な押し付けや画一的なルールの導入では進まないということ。「思いを聞き入れてもらえた」と経営陣や社員が実感できるように対話を重ねて信頼を積み上げ、社内の合意形成を図ること。それらが日本で持続可能なコンプライアンス改革を進めるために必要だと学びました。もう一つは、ある日本企業が国外子会社で大規模なコンプライアンス調査を実施した時のこと。その子会社のある社員が、私に資料を差し出し、「これはいつか必要になると思って保管していた。信頼できるあなたでなければ渡さなかった」と言ってくれたことがあります。「あなたなら信頼できる」と思ってもらえる関係を築くことこそ、弁護士が果たすべき使命。この出来事によって、私は弁護士として生きる意味と目的、そして覚悟を見いだすことができました。

私は、20代前半はツアーガイドとして多くの日本人と接し、日本という〝異なる文化と言語〟に触れました。弁護士になってからは、日本特有のハイコンテクストなコミュニケーションを理解し、そのうえで相手と信頼関係を築くことの大切さを学んできました。今、弁護士として、日本の文化、言語、商習慣、コミュニケーション特性などを踏まえた、私にしかできない法務サービスを提供できているのは、こうした経験のおかげです。

日本文化への、興味・関心、理解が深いオコーネル氏。休暇を利用して日本の各地へ出かけ、現地の人々や歴史に触れる(写真は、姫路城での一枚)

〝事業に寄り添う伴走型〟の法務サービスを創出

私は、日本でインハウスローヤーとして働くうち、2つの課題があることに気づきました。一つは、シニアレベルの法務サポートが必要であるにもかかわらず、多くの中堅企業や外資系企業の日本法人はフルタイムの法務担当を雇用する固定費が簡単には捻出できないということ。ある企業に勤務していた時、チーム唯一のスタッフが突然退職し、週に数時間働いてくれる法務人材を探すことにすら苦労した経験があります。当時の選択肢は、大手法律事務所からの出向しかなく、法務部の予算ではとても賄えませんでした。もう一つの課題は、日本に進出する外国企業にとって、規制の複雑さのみならず、〝コミュニケーションの壁が厚い〟ということ。欧米のダイレクトな仕事の進め方と、日本特有の合意形成や関係重視の文化を基にした仕事の進め方には、大きなギャップがあります。それらの課題のせいで、あるグローバルテンプレートがローカライズされないまま導入されたり、信頼関係の構築よりもスピードが優先されたり、法務がビジネスを理解し、守る役割を果たすのではなく「法務部のレビューを経た」というチェックボックスとして扱われるケースを数多く見てきました。こうしたアプローチは社内に摩擦を生み、長期的な成功を阻む要因になります。この課題解決のために、私は「寄り添い伴走型法務部支援サービス」というビジネスモデルを立ち上げました。これは、日本のビジネスマインドを熟知したバイリンガルの弁護士が、クライアント個々の予算と時間のニーズに応じ、法務部の一員として柔軟に稼働するサービスです。このビジネスモデルは、昨今、欧米でも「フラクショナルGC」と呼ばれ、注目を集めています。契約書のレビューはもちろん、コンプライアンスプログラムの設計・運用、事業を十分に理解したうえでの戦略的な法務アドバイス、取締役会への参加や事前の資料準備など、社内に入りこみ、法務社員と同様の業務を行います。これまで複数のクライアントが、社外の弁護士ではなく、チームの一員として信頼を置いてくれています。例えば、日本で事業展開するグローバル・ヘルスケア企業の急成長と内部変革の時期に、〝寄り添い伴走型法務部員〟として関与しました。メールアドレスをもらい、週に何度もオフィスに通い、取締役会への報告も行う。組織再編の検討段階からかかわり、組織構造へのコメントや従業員への適切な説明の仕方についてなどもサポート。その後、正社員の社内法務担当者採用時には、面接・引き継ぎ・トレーニングまでサポートし、スムーズなオンボーディングを実現できました。最初はあくまでも法務部員の人員交代の際の〝つなぎ役〟。しかし数年後には、同社の社外監査役として再び声をかけていただきました。ある企業のリージョナルカウンセルからは、「当社のような中堅企業は常勤の法務部員を雇うほどの業務量はないが、柔軟に対応してくれる経験豊富な法務の専門家を求めていた。あなたは大手の顧問法律事務所と社内法務間のギャップを埋めてくれる存在。伝統的な法律事務所は、私たちがよほどのビッグクライアントにならない限り、専任の弁護士を出向させることには消極的。だからこそ、あなたの存在が私たちには必要」という言葉をいただきました。

〝成功の型〟はない。自ら道をつくろう!

私は、企業法務とコンプライアンス分野で専門性を築いてきました。外国法事務弁護士ですから、訴訟対応は当然、日本法の弁護士と連携し、私は予防法務と和解に注力します。ほかに会計・税務、入管・雇用、特許等の知的財産権、ガバナンスやリーダーシップなども、信頼できる弁護士や各専門家と協働します。事務所のメンバーは私一人ですが、幅広いネットワークで守備範囲を広げています。つまり、日本法のアドバイスは日本の弁護士・専門家と連携しますが、その際に私は、〝ビジネス視点と異文化理解〟を融合した〝法務リーダー〟として、全体をつなぐ役目を担います。

私が考える、この仕事に必要なマインドセットは5つ。①希少性よりも豊かさ(ネットワークを積極的に共有し、必要に応じて専門家を紹介し、内製化できる案件はクライアント自身に任せていく)、②ロングターム思考(関係構築に時間をかけて信頼を得る)、③高水準のサービス品質と20%のプラスα(期待を超えるサービスを提供する)、④曖昧さに耐える力と境界線の管理(外部人材が内部に深く関与する仕事なので、寄り添って戦略的助言を行いつつも、客観性と独立性を保った適度な距離感が大切。すべての意思決定に関与できなくても動じない精神的柔軟性も必要)、⑤起業家的思考(ビジネスオーナーの意識を持つ)。

私がこのビジネスモデルを立ち上げた頃は、ロールモデルがいなかったので、「自分がロールモデルになろう」と思って進んできました。他人の〝成功の型〟に自分をあてはめる必要も、決まったキャリアパスに従う必要もありません。企業法務、法律事務所、スタートアップ、行政などの様々な仕事にかかわっていけるのも、あるいはまったく新しい道を自ら切り開いていけるのも、弁護士という職業の魅力です。ぜひ、あなたオリジナルの〝成功のかたち〟を見つけてください。

法曹人材のキャリアなどについて、オコーネル氏がホストとなって多彩なゲストと英語で語り合う「Lawyer on Air Podcast 」は必聴だ