不確実性の高い時代において、経営陣が法律の専門家である弁護士に望むのは、「リスクを取っても実現する」というギリギリの経営判断を支える存在になってくれることだ。今仲弁護士は、言う。
「例えば、企業が新規事業を推進する際は、法的リスクや前例のない課題がつきものです。誰も手を出さない事業には何らかのハードルがあるけれど、そこに大きなチャンスも眠っている。法律というルールを熟知している私たちだからこそ、限界まで攻めることができる。ルールを正しく理解した者が、『どこまで挑戦できるのか(リスクが取れるのか)』を経営者とともに考え、動かしていく。事業と経営を前へ進めるために、法律の知識や法務の経験を生かすことを戦略法務ととらえ、これを提供し続けていきたいと思います」
近年、同事務所では企業のAI活用に関する相談も著しく増えている。今年7月にジョインしたばかりの野口弁護士は、元Google日本法人のGCで、彼女の参画を契機に、シリコンバレーオフィスを開設した。今後は野口弁護士を中心に、現地で得た最新のAIと組織経営や法曹実務の知見を日本企業へ還元していく考えだ。
AI活用がどこまで広がろうと、事業の前進に向けた意思決定を支える戦略法務の重要性は揺らがない。武田彩香弁護士は、言う。
「AIが進化するほど、人にしか提供できない価値はむしろ明確になっていくと思います。これまで人手を要していた調べ物や論点整理といった作業は、今後はAIに置き換えられていくでしょう。しかし、そもそも、弁護士や法務の本質的な提供価値は、情報そのものの提供ではなく、経営陣やクライアントの悩みに対して『どうすれば解決できるか』を考え、それを実現するための支援をしていくことだと思います。これはまさに戦略法務の領域であり、AIには到達できない領域の仕事ではないでしょうか」
AIにはできない“人の判断”を、野口弁護士はこう説明する。
「AIは、法令や判例の整理などに力を発揮する一方で、文字化されていない情報を取り入れた判断はできません。例えば契約交渉や紛争解決には、相手との関係性や社内事情、優先順位をふまえたアドバイスが必要です。法律上の正解だけで現実の課題は解決できないのです。経験に裏打ちされた“相場観”や、感情を考慮した“落としどころを探る力”は、今後も人間ならではの強みであり続けるはずです」
こうした力は、一朝一夕に身につくものではない。次世代の法務人材を育てることも、これからの企業法務における重要なテーマだ。法務部門の組織づくりや人材育成に長年携わってきた野口弁護士は、「企業経営のなかでリスクをどう考え、どう意思決定するのか。そうした経験や考え方を還元し、次世代のGCを育てることにも力を注ぎたい」と話す。同事務所だからこそ、人材育成まで見据え、法務部門を支えていくような新たな価値の提供が可能となる。本間弁護士は言う。
「企業法務の強化が日本企業の強化につながると言われていますが、その重要性を企業に勤務して実感しました。企業法務をサポートする新たなサービスをつくり、日本の企業法務の強化をリードする事務所でありたいと思います」
法律事務所で培ったプロフェッション、企業法務での経験、そしてAI時代を見据えた人材育成や組織づくり。それぞれの経験や強みをかけ合わせながら、同事務所は企業の課題に深く寄り添う。法律相談の枠を超え、ビジネスの明日をともに創造するパートナーとしての挑戦は、始まったばかりだ。