実は、教育の中身は「法律」だけではない。
「コミュニケーション能力、そして何よりもビジネスの能力が不可欠。『法務部は法律知識が豊富でも、会社のビジネスがわかっていない』という声が、時々聞こえるのです。自社のビジネスの中身も知らずに契約書の完璧なチェックなどできませんから、これではいけない」
そう考えたグルゾン氏は、多忙な業務の傍ら自ら率先してビジネススクールでMBAを取得し、さらに進んだ法務部を目指している。今では法律問題に加え、定期的に会社のビジネスに関する勉強会も開く。
「部門の担当者を呼んで、セールス部門はどのような営業活動をしているのか、マーケティング戦略はどうなっているのかといった話をする。現場の苦労を知ることができるのは、非常に意義深いこと」と芹生氏は話す。自身もMRに同行して、朝早くから医者を待ち続け、商談時間30秒という世界を体験。現場の苦労を分かち合った。
グルゾン氏の目標は、「“No”ではなく“Yes, but”であること」。
「現場が求めるのは、『いいでしょう。でもここが問題だから、解決策を考えよう』と、親身に相談に乗ってくれる法務部のはず。そうなるためにも、ビジネスを知る必要があるのです」
最後に「自らに課せられたミッション」を語ってくれた。
「私の仕事で重要なことの一つは、日本のリーガルチームを本社に〝売り込む〞マーケティング。早い時期からコンプライアンスの重要性を認識していましたので、全社の意識を高めるために、Eラーニングで全社員向けのコンプライアンス教育を実施しました。欧米よりも声を大にしてこうした取り組みをアピールした結果、コンプライアンスはグローバル法務の最重要課題となったのです」