Vol.38
HOME法務最前線日清オイリオグループ株式会社
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

役割分担は定めず、5人のメンバー一人ひとりが、様々な案件を担当し、合意に導く(前方右から小林氏、大八木氏、後方右から齋藤氏、渡辺氏、永井氏)。厨房施設とプレゼンスペースを有した日清フードプラザにて

役割分担は定めず、5人のメンバー一人ひとりが、様々な案件を担当し、合意に導く(前方右から小林氏、大八木氏、後方右から齋藤氏、渡辺氏、永井氏)。厨房施設とプレゼンスペースを有した日清フードプラザにて

THE LEGAL DEPARTMENT

#44

日清オイリオグループ株式会社

法律知識にとどまらず、常に会社が進むべき方向性を見据えた「総合的な見識」を念頭に、少数精鋭でグループ法務をサポート

企業倫理浸透の先頭に立つ

日清オイリオグループ株式会社 法務部

人事・総務部内に置かれている同社法務グループは、総勢5名の〝所帯〞だ。小林新執行役員人事・総務部長は「法務グループに限りませんが、仕事は少数精鋭がモットーです」と話す。

グループ内に、明確な担当分けなどは設けていない。

「一人ひとり多少の得手・不得手はありますが、基本的に様々な案件に挑戦し、合意・解決に至るまで責任を持ち取り組みます。それによって自信を付け経験の幅を広げ、個々人が成長すると考えています」

知的財産権関連などを除き、各事業部門、グループ会社の法律案件全般を担う法務グループだが、「企業倫理を統括し、社としてのポリシーを浸透させていくことも、重要なミッション」だと小林氏は強調する。

「どんな会社でもそうですが、特に我々食品業界はお客さまが直接口にされる商品を扱っており、コンプライアンスに特に厳しさが求められます。昨今業界で発生した事件をみても、一子会社で問題が起これば、グループ全体が大きなダメージを被ることにもなる。企業倫理というものを全従業員にどう根づかせていくのかには、細心の注意を払って取り組んでいるのです」

具体的には、社の行動規範を徹底させるための「読み合わせ会」を海外子会社も含めて実施するほか、講演会や社内イントラネットを利用した啓蒙活動などを企画、実行している。

日清オイリオグループ株式会社 法務部
写真中央の女性、渡辺氏は、ロースクール卒業生

総合的な見識を磨きグローバル化に対応

現在の各事業部門と法務グループとのかかわり方については、「案件スタート時から関与し、契約書の審査やリーガルリスクのチェックに加え、ステークホルダーに対する責任、ブランド価値、コーポレートガバナンスなど、様々なリスク視点で案件の検討を行い現場にフィードバックしています」と小林氏は説明する。

「ただし、たとえ現場から頼まれても、法務グループが前面に出て、例えば相手との話し合いの場に同席し、交渉当事者の役目を引き受けてはいません。しかし、海外の会社との交渉では、テーブルにつく先方の弁護士や法務担当者に圧倒されることが珍しくありません。現場の交渉力の問題もありますが、今のような法務グループのサポートのスタンスでよいのかどうかは、検討課題だと思っています」

小林氏を補佐する齋藤茂樹法務グループリーダーは、「実際の契約では、交渉がデッドロックに陥ってしまうことも結構あります。前面に出ないとはいえ、それを調印まで持っていけなければ我々の存在意義はありません。最終的にどこまで譲ってどこを死守するか、といった点を現場にていねいに説明し、交渉が前に進むようフォローしています。そういう局面では、送ったメールがそのまま相手方に転送されてもいいように、細心の注意で文章にするんですよ」と語る。

日本が高齢化、人口減少に悩むなか、同社にとっても、グローバル化は経営上の重要テーマに位置づけられている。法務グループの課題について、小林氏は「英文契約、英米法などの知識に加え、特にこれからは、各国の法体系、商習慣、言語への対応などに対し、幅広い見識が我々に求められているという思いを強くしています」と話す。

「新しい国で事業を興したり、現地企業と提携したりという時、それに潜むリスクは具体的に何なのか、契約でどこまでカバーし、カバーできないものは何で担保するのかなどを捻出しなければならず、そのためには、論点のポケットを多く持ち、意見の奥行を深める訓練が必要です。この意味で、法務の視点で活字を読みまた話を聞き、日頃から自らの興味の幅を拡げる努力が重要です」

ところで小林氏は、営業、人事、マーケティングなどの現場を経験した後、現職に就いた。他のメンバーもほとんどが他部署からの異動である。

「いろいろな現場を経験させるのが社の方針で、実際、これまでの経歴が今の仕事をするうえで糧になっています。一方で、法務グループにますます専門性が要求されているのも事実。今後の人材育成や採用は、やや〝専門性志向〞になっていくと思います」

最後に、法律を学ぶ若い人たちに対するメッセージを小林氏に聞いた。

「当社のような食品メーカーの場合、研究開発から始まって、生産、マーケティング、物流、営業といったたくさんの機能が凝縮されていて、そこで様々な関係者が働いています。彼らと日常的に接しながら仕事をしていくことになるので、非常に躍動感に満ちた日々を送ることができるのは確か。事業会社での仕事に少しでも興味があれば、ぜひチャレンジしてほしいと思います」

日清オイリオグループ株式会社 法務部日清オイリオグループ株式会社 法務部
「あまり杓子定規なことは言わず、法務としての見解をきちんと示したうえで現場に任せ、サポートしていく」(小林氏)のが、法務グループの基本姿勢。より主体的に動ける組織の構築がテーマの一つだ。

ところで小林氏は、営業、人事、マーケティングなどの現場を経験した後、現職に就いた。他のメンバーもほとんどが他部署からの異動である。

「いろいろな現場を経験させるのが社の方針で、実際、これまでの経歴が今の仕事をするうえで糧になっています。一方で、法務グループにますます専門性が要求されているのも事実。今後の人材育成や採用は、やや〝専門性志向〞になっていくと思います」

最後に、法律を学ぶ若い人たちに対するメッセージを小林氏に聞いた。

「当社のような食品メーカーの場合、研究開発から始まって、生産、マーケティング、物流、営業といったたくさんの機能が凝縮されていて、そこで様々な関係者が働いています。彼らと日常的に接しながら仕事をしていくことになるので、非常に躍動感に満ちた日々を送ることができるのは確か。事業会社での仕事に少しでも興味があれば、ぜひチャレンジしてほしいと思います」