先述の通り、顧問として玉井教授が所属。知財法の権威で法学者の同教授とオフィスを共にすることは、大きな価値となっている。
「玉井教授には知財分野の先端的な案件の相談に同席を依頼したり、法の理論的背景に検討が必要な場合などに相談したりしています。特に海外の事情や法解釈の検討が必要な場合、我々はもちろん、クライアントにとっても大変心強い存在です」と、三村弁護士。法理論の課題がある場合は、玉井教授や所属弁護士、クライアントと共に研究会を実施し、国に法解釈の疑問を投げかける活動に発展する場合もあるという。また、所属弁護士の得意分野でも、立法や政策提言にかかわる活動は多いそうだ。
「例えば、芸能界におけるオンライン上の誹謗中傷や労働者性の問題、アニメ業界の勤務環境の問題、ファッション分野の個人輸入や商標の問題、アートであれば文化政策など、弁護士がかかわってロビイングすべきポイントはまだ多くあります」と、小松弁護士は語る。
各弁護士が関心のある分野へ伸びやかに取り組む様子が印象的な同事務所だが、三村弁護士は「各人の、弁護士としての基礎能力が十分であるからこそ」と強調する。
「専門分野を絞らず、広く業務をこなし、一通りの対応ができるからこそ、進出した業界で価値あるアドバイスができるのです」
多様な専門分野で活躍する山縣弁護士も、この点には大きく頷く。
「漠然と興味があって取り組み始めた分野でも、想像と違うと感じることもあります。一方で、選り好みせず様々な業務に取り組んでいると、自然と得意分野が見えてくる。私のウェルスマネジメントの案件も、当初は企業の顧問や芸能関連の契約のアドバイスから始まり、役員やタレントから個人的に相談したいというご要望に応えたことで広がりました。当事務所の弁護士の専門性は、興味関心だけでなく実務のなかで磨かれてきたものなのではないでしょうか」
三村弁護士は、弁護士としての豊かな素地をはぐくみ、自身の興味関心を見いだした気鋭のメンバーが、伸び伸びと業務に取り組む様子について「梁山泊のようなものです」と語り、笑顔を見せた。
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。