Vol.76-77
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前列左より、三村量一弁護士、玉井克哉教授/弁護士。後列左より、富山暁子弁護士(62期)、野瀬健悟弁護士(71期)、小松隼也弁護士(62期)、澤田将史弁護士(65期)、田邉幸太郎弁護士(67期)、松下昂永弁護士(69期)、山縣敦彦弁護士(60期)、中内康裕弁護士(71期)、海老澤美幸弁護士(69期) ※ほかに塩川泰子弁護士(62期)、大口裕司弁護士(61期)が所属

前列左より、三村量一弁護士、玉井克哉教授/弁護士。後列左より、富山暁子弁護士(62期)、野瀬健悟弁護士(71期)、小松隼也弁護士(62期)、澤田将史弁護士(65期)、田邉幸太郎弁護士(67期)、松下昂永弁護士(69期)、山縣敦彦弁護士(60期)、中内康裕弁護士(71期)、海老澤美幸弁護士(69期) ※ほかに塩川泰子弁護士(62期)、大口裕司弁護士(61期)が所属

STYLE OF WORK

#145

三村小松山縣 法律事務所

「訴訟に強い事務所」を看板に掲げつつ、少数精鋭で多様な専門分野へ果敢に進出!

柔軟な挑戦を可能にする少数精鋭体制

平時から訴訟を見据えたアドバイスをクライアントへ――裁判官時代にカードリーダー事件や青色発光ダイオード事件など著名な知財裁判を担当した三村量一弁護士と、小松隼也弁護士、山縣敦彦弁護士がネーミングパートナーを務め、「訴訟に強い事務所」を掲げる三村小松山縣法律事務所。知的財産分野の権威である東京大学先端科学技術研究センターの玉井克哉教授も立ち上げメンバーとして参加し、顧問を務めている。

「裁判官時代、契約書の記載が不十分であるがゆえに、訴訟に至ったと思われる事案を多く見てきました。基本的なスタンスとして平時から紛争を予防し、訴訟発生時には勝訴できる契約内容や社内体制となるようなアドバイスを実施しています」と、三村弁護士。

三村弁護士および小松弁護士は長島・大野・常松法律事務所出身だが、より幅広い訴訟案件に対し、柔軟にアドバイスを提供したいという思いから、同事務所を立ち上げたそうだ。

小松弁護士は、現在の取り扱い分野について次のように説明する。

「当事務所では大手企業の知財案件や訴訟案件だけでなく、中小企業やベンチャー企業へのアドバイスも行っています。また、各弁護士が自身の関心に沿って、エンターテインメント、ファッション、アート、アーキテクチャ、学校など、弁護士の関与が少なかった法分野にも積極的に進出しています。業界に深くかかわり業界をよく知る弁護士としての地位を確立した結果、多様な業務を依頼されるようになりました。5~6年かけて一分野として結実する印象です」

また、訴訟分野はもちろん、芸能プロダクションの法務や資産家のウェルスマネジメント、アート、建築分野の法務などに取り組んできた山縣敦彦弁護士も、この点に大いに共感したという。

「私も『その分野に取り組んでも食えないぞ』と言われながら、新分野を好んで切り開いてきました。弘中惇一郎弁護士の下で弁護士としての基礎を学び、一人の弁護士が訴訟全体を最初から最後まで担当することの大切さを学んだこともあり、少数精鋭の体制には大いに共感するところがあります。大人数で案件に取り組むと、担当業務に専念できる利点はありますが、部分的な視野しか育たないリスクもあります。その点、当事務所は若手弁護士がバランスよく適切な視点を持てるよう育成できる。とても優れた環境だと感じます」

三村小松山縣 法律事務所
会議室手前にある書庫。壁を埋め尽くす法律実務書のほか、ワインや日本酒、将棋、ファッション、アートなど様々な分野の解説書も

“跳び乗り”自由。合議と主体性を重視

同事務所では、所属弁護士が興味関心のある案件に、積極的に参加することを勧めている。

「新件のご依頼があった場合、全員に内容を共有して、コンフリクトチェックを行いますので、参加したい案件があれば手を挙げることができます。担当を決める際も、各弁護士の専門性について皆がよく理解しており、適性に合ったチームが組成されている印象です」と語るのは、田邉幸太郎弁護士。取り組みたい分野で様々な活動や新規の企画をすることも多いという。田邉弁護士は現在、アニメ制作・配信などを行うベンチャー企業の法務担当としても活動しており、今後もアニメ業界に特化したリーガルサービスを企画している。また小松弁護士は、資金調達前のベンチャーの多くが悩む法的課題を解決する新たなサービスを企画している。

「特許や商標などの知財については、資金調達前の不備がのちのち大きく響くことも。創業時もしくは資金調達前の段階で、当該ビジネスで何が法的な問題になり得るかを大まかに相談できる相手が必要でしょう。電話のみの法務相談で必須となる点をカバーし、企業の費用負担を最小限に抑える新たなサービスをかたちにしたいと計画しています」(小松弁護士)

案件を進める際には、フラットな合議制を重視する同事務所。若手弁護士が主体となって資料の読み込みやクライアントからのヒアリングを実施し、意見を表明、議論することが求められる。これは、三村弁護士が裁判官だった時代の合議制を踏襲しているそうだ。「裁判所では『合議は跳び乗り・跳び降り自由』と表現したりもしますね。最終的な結論こそ裁判長が主導して決定しますが、そこに至るまでは左右の陪席が事件全体を見て問題点を洗い出し、裁判長と相談して進めます。当事務所も同様の方針で運営したいと思っています。最終的な決定権がクライアントにある点は少し違いますが」と、三村弁護士。

2019年の設立後まもなくから新型コロナ禍となってしまったため、事務所に全員が揃って会合を行えた機会は多くない。ただ隔週で全体ミーティングが開催されており、所属弁護士間の個人的なコミュニケーションも活発、非常に意見を出しやすい環境だ。今年入所したばかりの中内康裕弁護士は、所内コミュニケーションの在り方などを次のように語る。

「私はファッションに興味があるので、小松弁護士や、同業界に精通する海老澤美幸弁護士などと共に、ファッション・ローユニットを発足し、同業界のお客さまに充実したリーガルサービスを提供できる体制を整えています。そうした業務以外でも両弁護士とは、常日頃からファッションに関する話題で会話が弾みますし、当事務所は、“弁護士同士の心理的・物理的な距離が近い”と感じます。ほかの弁護士に気軽に相談ができるので、いたずらに自分一人で悩む時間もほぼありません。そのため、成長できるスピードが速いのではないかと思っています」

三村小松山縣 法律事務所
山縣弁護士の執務室。窓からは丸の内のビル街が見渡せる。壁には愛読する漫画のイラストやフィギュアも飾られている

相談からロビイングまで対応可能な人材が揃う

先述の通り、顧問として玉井教授が所属。知財法の権威で法学者の同教授とオフィスを共にすることは、大きな価値となっている。

「玉井教授には知財分野の先端的な案件の相談に同席を依頼したり、法の理論的背景に検討が必要な場合などに相談したりしています。特に海外の事情や法解釈の検討が必要な場合、我々はもちろん、クライアントにとっても大変心強い存在です」と、三村弁護士。法理論の課題がある場合は、玉井教授や所属弁護士、クライアントと共に研究会を実施し、国に法解釈の疑問を投げかける活動に発展する場合もあるという。また、所属弁護士の得意分野でも、立法や政策提言にかかわる活動は多いそうだ。

「例えば、芸能界におけるオンライン上の誹謗中傷や労働者性の問題、アニメ業界の勤務環境の問題、ファッション分野の個人輸入や商標の問題、アートであれば文化政策など、弁護士がかかわってロビイングすべきポイントはまだ多くあります」と、小松弁護士は語る。

各弁護士が関心のある分野へ伸びやかに取り組む様子が印象的な同事務所だが、三村弁護士は「各人の、弁護士としての基礎能力が十分であるからこそ」と強調する。

「専門分野を絞らず、広く業務をこなし、一通りの対応ができるからこそ、進出した業界で価値あるアドバイスができるのです」

多様な専門分野で活躍する山縣弁護士も、この点には大きく頷く。

「漠然と興味があって取り組み始めた分野でも、想像と違うと感じることもあります。一方で、選り好みせず様々な業務に取り組んでいると、自然と得意分野が見えてくる。私のウェルスマネジメントの案件も、当初は企業の顧問や芸能関連の契約のアドバイスから始まり、役員やタレントから個人的に相談したいというご要望に応えたことで広がりました。当事務所の弁護士の専門性は、興味関心だけでなく実務のなかで磨かれてきたものなのではないでしょうか」

三村弁護士は、弁護士としての豊かな素地をはぐくみ、自身の興味関心を見いだした気鋭のメンバーが、伸び伸びと業務に取り組む様子について「梁山泊のようなものです」と語り、笑顔を見せた。

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

Editor's Focus!

サピアタワー8階の一部執務室と会議室は東京大学先端科学技術研究センターのサテライトオフィスと共有。知財案件の会議には時に玉井教授も出席し、意見を述べる。玉井教授とは事務所内研究会などで頻繁に議論でき、別階の執務室に在席していることが多く、理論や海外判例について相談できる。

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