ユニクロやジーユーなどの人気ブランドを擁し、アパレル企業世界第3位の売上規模を誇る株式会社ファーストリテイリング。中核事業のユニクロだけを見ても、25の国と地域に約2300店舗を出店、直近の売上高は1兆6500億円である。法務・コンプライアンス部部長の渡部大輔氏に、同部の構成を聞いた。
「現在、日本を含めて世界18の国・地域に約100名の法務メンバーが所属しています。ここ数年で、主要海外拠点のほぼすべてに法務組織の設置が完了。また、海外拠点の法務組織のほとんどに現地法の弁護士が配属されています。私たちは、グローバルヘッドクォーター(GHQ)として、それら全拠点と連携し、業務を遂行しています」
人員が拡大してきた要因を、渡部氏は次のように語る。
「当社が“情報製造小売業”へと業態を変革させてきたことが大きいと考えます。現在その流れから、AIによって膨大な情報を分析し、その結果を用いて新商品開発や商品改善を行い、需要予測につなげることで“無駄なものをつくらない、運ばない、売らない”ことを目指す『有明プロジェクト』を全社一丸で進めています。これにより世界中の生産工場、倉庫、店舗がシームレスに連動するサプライチェーンの仕組みの構築を目指していますが、そうした経営的な動きに伴い、様々な側面からスピーディな法的対応が必要となります。海外の出店数も急増しており、当然、そこには各国の法律がかかわります。今は現地法に詳しいメンバーが各拠点に在籍しているものの、数年前まで日本から法務機能を見ていた国・地域もありました。展開国・地域が増え、グローバル統一の商品制作が強化されるにつれ、全展開国・地域の関連法の情報を収集・分析する業務が増加。自ずと人員拡大となりました」
例えば、海外拠点とどのようなやりとりが発生しているのか、法務チーム・リーダーの村澤恵子氏が説明してくれた。
「一つの商品の製造段階から、その国でクリアするべき規制を調べ、販促物に記載するための表示規制などを調べ……さらに直接海外のメンバーと連絡を取り合い、現地法に照らして教えてもらい、取りまとめるといった業務が頻繁にあります。あるいはローカルからのインプットを参考にしながら、GHQとしてのポリシーをつくるといった仕事もしています」
海外展開に絡め、同社ならではのダイナミックな仕事について、渡部氏が教えてくれた。
「新規国に進出する計画が持ち上がった場合、各部署から担当者が数名ずつ集まり、プロジェクトチームを編成します。法務が管理系部署の中核的存在になるケースが非常に多く、法務の重要性は高いと捉えられています。進出の仕方にもよりますが、どの国でも共通するのは、外資規制の問題です。特に繊維産業を地場産業として保護しているような国では進出自体の難易度が上がりますから、それをどうやって解決するかで法務の手腕が試されます。また、国によっては他社パートナーとの合弁で進出するというケースもあり、その合弁契約書の締結なども重要な仕事です。それらをクリアしなければそもそもビジネスが始められませんから、我々法務は海外進出スタートのカギを握る重要な役割を担っていると思っています」